11話 最強の殺し屋のデート
香純の組織の男たちが周りを見張ってくれるということで、俺と零はデートをすることになり、俺たちはついさっき家を出た。
香純が護衛を周囲につけてくれているというのは本当のことのようで、さっきから周囲から気配がしている。少しだけ安心しつつ、俺と零は繁華街をぶらぶらとしていた。
零は17歳らしく、所謂女子高生という年齢だ。ゆえにどのようなことをすればデートになるのか分からず、適当に歩いているのだが
「一縷とデート♪一縷とデート♪」
心配も杞憂だったようだ。鼻歌を歌いならあからさまにご機嫌な様子でスキップをしていた。その様子に思わず苦笑する。
「一縷!ここ行こ!」
零が突如として指を刺して提案してきた場所はここら辺では有名なデパートだった。俺も何度か行ったことがあるのだが、品揃えが完璧で、ここに来て揃わなかった経験なんてないくらいだ。
零はあまり外に出たこともなく、興味のあるものも少ないと思っていたのだが、実際は17歳。家以外の世界を知らないゆえか、精神的にも幼く、実際は様々なことに興味を持っているようだった。
デパートに入ると、嬉々とした様子で周りの店を見始める。そして、どこに見るのか決めたのか、零はある場所に一直線に進み始めた。
「なるほど。」
やはり予想通りというべきか、連れてこられた場所は服が売っている場所だった。性別が女性ということもあり、服には興味があるようだった。俺は服なんかに興味はないため退屈なのだが、零は違うようだった。気に入った服があれば試着し、似合ってるかどうかを聞いてくる。
「ねぇ、これ似合ってる?」
「似合ってるね〜。」
「これは?」
「似合ってるね〜。」
「じゃあこれは?」
「似合ってるぞ〜。」
刹那、背筋が凍った。この感覚は零がこの間暴走した時以来か。経験をしたことがあるがゆえに、今なぜ背筋が凍ったのかを瞬時に理解してしまう。やっちまった。
「零。すまん。腹が痛くてな。」
瞬間腹の真ん中に何かがそっと押し当てられた。慌ててそれを確認すると
「な、なんでそんなもん持ち歩いてんだよ…」
零が持っていたもの、それはアイスピックだった。それ以上力入れたら俺は地獄行きだ。
「一縷が浮気したりしないようにするためだよ?あぁでも浮気以外にもダメなことをしたら刺すつもりだったよ?」
ニヤリと狂気的な笑みを浮かべる零。
「今日みたいにね?」
俺は直感的に命の危機を感じ、零の手を掴んだ。
「離してよ。刺せないでしょ?」
「いや、刺されたくないんだが…」
俺は男だ。だから女の零の力なんて簡単に抑え込めてしまう。それが不服だったのか、頬を膨らませる零。顔は可愛いが、考えていることは悍ましい。
「じゃあなんでちゃんと返事してくれなかったの?」
「いやだから腹が痛くて…」
掴んでいる零の腕の力が強くなるのを感じた。こいつの力は無限なのか?
「前にも聞いたよね?嘘をつかれた人の気持ちがわかるの?って。それで一縷はわかるって言ったよね?だったらなんで嘘をつくの?私のことなんてどうでも良いの?」
いつもの如くヤンデレ全開にしてくる零。こんなことを言っているからか、周囲からの視線をいつも以上に感じる。視線だとかは気にしないようにしてたし、なんなら気になんなかったのだが、今は恥ずかしかった。
「悪い。謝るから説教は後にしてくれ。周囲の視線が痛くてたまらん。」
「それも罰の一環だよ?」
「マジかよ…」
ここは地獄か?この地獄でアイスピックで刺されたら俺はどこに行くんだ?一周回って天国にでも行くのだろか。
流石にいづらくなった俺は、ここを立ち去るべく強引に零を引っ張って少し遠くまで歩き始めた。
「どこに連れてくの?結構式の会場?」
「アホか。結婚なんてしないと言ったはずだ。」
何回したかもわからないやりとりを交わし、俺たちが辿り着いたのは食堂だった。腹も減っていたのでちょうど良い。
二つ空いていた席を見つけ、腰をどっぷりと下ろす。何を食べようかと少しだけワクワクしながらメニューを見ていると、ジトっとした視線を零が送っていることに気がついた。
「な、なんだよ…」
「私のご飯食べる時よりも嬉しそう……この料理作ってる人
殺」
「さないでね?やめてね?罪ない人を殺しちゃダメなんだよ?」
罪のある人を殺しても良いかと聞かれたら否なんだが。
「どうすれば私のご飯で喜んでくれるのかな……髪の毛とか入れようかな…」
「頼むからやめてくれ。そんなことされたら俺はお前の飯を食えなくなる。今のままで十分美味しいし嬉しいから大丈夫だ。」
物騒な言葉が聞こえたので慌ててその思考をやめさせようとする。髪の毛入れるとか正気の沙汰じゃない。さすが零。
そんなこんなで、俺は牛丼を頼んで零はサンドウィッチを頼んで昼食は終わり、ブラブラしていたら気がつけば日が暮れ、俺たちは帰路を辿るのだった。
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