2話 最凶の追跡者

〜 一ヶ月前 〜


「監視カメラは?」


 私こと柊小百合(ひいらぎさゆり)が忌々しげにそう聞くと、部下の一人である男は慌てて私に報告してきた。


「も、申し訳ありません!!全て破壊されてしまっていて、足取りが掴めない状況です!」


 その報告に、私はイライラして


「チッ。」


 と短く舌打ちをする。


「も、申し訳あり」


「うるさいわね!仕事に戻りなさい!」


「は、はい!」


 私が叫ぶや否や、その男は慌てたように仕事に戻る。


 何故私がここまで苛ついているのか、答えは簡単だ。私はある組織のトップの人物である。その組織とは、殺し屋。組織というよりも機関といった方が良いレベルの規模である。


 そして、私はある男と共に仕事を良くしていた。その男は強すぎた。ゆえに世界最強の殺し屋とまで言われるようになった。だが、私もそれに近い実力はあった。というよりも、私は普段戦わないので実力を見られる機会がなかったが、実際は私の方が実力は高いかもしれない。


 だが、ある日彼が任務に出かけた。いつものように淡々と仕事をこなして帰ってくるかと思ったが、彼は帰ってこなかった。最強の殺し屋は帰ってこなかったのだ。


 ターゲットとなった屋敷には、3人の人物がいた。二人は親。父親と母親。そして後一人は娘。父親と母親の死体が見つかった報告があり、任務を完遂させたのだと思った。だが、すぐに違和感に気づいた。何故娘についての情報が全く出回っていないのかだ。


 違和感を感じた私はすぐに捜査を開始した。情報によれば、娘は家で教育を受けており、全く外に出ていないとのことだったので、家にいるはずだ。つまり、その娘は任務の目撃者になる可能性が高いのだ。だからこそ、その娘が死体として発見されていないことに疑問を覚えた。


 次に不審に思ったのは、彼からの連絡が途絶えたこと。どれだけ電話やメールを送っても、返信は返ってこなかった。だから取り付けてあったGPSを使って所在地を割り出そうとしたが、それも破壊されてしまっていた。


 ここから導き出される仮定は一つ。


 最強の殺し屋と呼ばれた彼は、その娘と一緒に逃走をしている。


 何故逃走しなければならないのか分からないが、そう考えるのが妥当である。しかも、それが本当だとするのなら、彼は組織のルールに反いたことになる。よって消さなければならない存在になったのだ。


 だからこそ、私たちの組織は死ぬ気で彼を追跡していた。だが、足取りが全くといって良いほど掴めなかった。


 私は彼の家を知っていたので、以前にそこ向かったのだが、当たり前のようにもぬけの殻だった。


 私は映し出されているモニターに文字を打ち込みながら


「どこにいんのよ!!あいつは!」


 と怒りをあらわにしながらも仕事と捜索を続けるのだった。

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