第11話 魔王「『道テイム』でインフラ整備してくれ。やってくれたら美少女パンツ見ていいから」。道「マジで!?」

 魔王は一分ほど顔を真っ赤にして俺を『変態』だとか『恥ずかしくないのか』だとか言った後、無言を貫くことまた一分。俺は自分の名誉を守る為に、魔王にお願いする。


「そ、その……他の方には言わない方針でお願いしたいのですが」


 特にレギンには知られたくない。


「言えるか、こんなこと!」


 魔王は頭を抱えている。でも、昨日は皆の前で美少女パンツが好きとか言いふらされたのにどういうことだ?


「言わないでくれるんですか?」


「言えないだけだ! 勘違いするな。お前は雑魚魔物かと思ったが、石畳の整備能力は高い。活躍させなければいけない以上、美少女パンツ好きの変態を雇用するとおいそれと言えないだけだ!」


「事情はあるにせよ、兎に角、ありがとうございます!」


 俺が感謝を伝えたら、魔王は無言で天井を仰ぎ見る。何考えてるんだろう? ま、別にいっか!


「魔王様、ありがとう」


「こんなので尊敬されても、嬉しくない!」


 魔王はキリっと俺を睨む。


「だが変態だとしてもお前は有能だ。『道テイム』をして街のインフラを整備して欲しい」


「こ、こんな変態でも良いのか?」


「……今はお前の力が必要だ。非常時でな。お前の道テイムは非常に有用だ」


 石畳を整備するのがそんなに重要だとはな。なんでだろ?

 まぁ本当は俺は道テイムをする時にエナジー源として美少女パンツ鑑賞が必要なのだが、れは今言わないで良いだろう。言ったら何言われるか解らないし、取りあえず仕事すれば文句言ってこなそう。


 魔王は俺を見て、掠れ声で要求を告げた。


「ロードロードよ。王都の道を、道テイムしてくれ。全て石畳なのだが、それを整備して欲しい。いいか?」


「分かった」


 俺の返事に魔王は少し笑顔になったが、はっと何かに気付いたように俺に険しい顔で警告する。

 俺も笑顔で返す。雰囲気作りで笑顔になるのは大切だからな。


「待て、お前が道テイムをしてるとばれたら……妨害工作を受けてもおかしくない。結果、インフラの整備が遅れる。道テイムをお前がしていることは、極力隠すんだ」


「分かりました」


「関係者以外に話すべきじゃ無い。どうせすぐバレるだろうが、可能な限り隠してくれ。レギンや昨日魔王城近くにいた者はお前のことを知っているだろうが、これから他の街にも行ってもらう。そこでは隠すんだ」


「はい」


 願ったり叶ったりだ。俺が美少女パンツを見てるとバレない方が、美少女はパンツを隠したりしないだろう。しかも王命で『道テイム』を出来るのだ。となれば、俺は合法かつ後ろ盾がありながら美少女パンツを見ることが出来ることになる。


 勿論、俺は紳士。美少女パンツを見て喜ぶ変態と自分のことを本当は思ってない(キリッ)。

 だけど俺の能力『道テイム』をする為に美少女パンツを見る必要がある以上、それは仕方が無いことだろう。


 この国、エヴォルのインフラを整えて人々の為になるし俺の能力向上にもなる。

 何もしないで無能でいるより努力してスキル上げた方が記憶も取り戻せるし、きっと出来ることが増えるはず。


「話は決まりだな。では、部下達を呼び戻す」


 魔王は手に『何か』を込めた。それは茶色の光となり、魔王が手を地に当てると魔王城の中を駆け巡ったようだった。

 そうか、あれが『魔力』か。


 すぐに大臣やヒポハス、レギン達が入って来た。先ほど出て行った面子が全員勢揃いだ。


「話はまとまった。ロードロードにエヴォルのインフラを整備して貰えることになった」


 わっと皆が歓喜した。なんだろう、この空気、何か思い出しそうだ。

 あ、思い出した……イッキコールに近いな。そう、俺を死に追いやったリア充達のイッキコールに。


「ロードロードよ。ケンタウロス族に踏んでもらうのは仕事だ。やれ」


「ま、魔王様。そんな話は」


「それがダメなら、お前の『道テイム』を放置はできない」


「そんなぁ!」


 それさえやれば放置してくれるっていうのかよ。良い方じゃねえか! イッキ飲みしても見返りがなかったリア充達より遙かに好待遇だ。


「それが絶体条件だ」


 険しい顔で俺を見る魔王。そんな条件でいいなら、俺の心も固まるものだ。


「仕方ないな。踏まれよう」


「よし」


 俺は同意した。するとそれと同時にガチムチのおっさん達が部屋に入って来る。三十名ほどいるだろうか。


「え、何だこの数は」


 ガチムチおっさん達、ニヤニヤと俺を見る。嫌な気持ちだ。


「お前が噂の道か……よろしくな!」


「……」


 俺の沈黙など意に介さず、魔王は笑顔でケンタウロス族に呼びかける。


【報告。美少女パンツでないと、エナジーは溜まりません。気をつけて下さい】


 相変わらず、凄い仕様だ。人間の欲望を具現化してるよな。


【ちゃんとした理由があります】


 どんな理由だよ、小賢者。


【今は言えません。いつか話すかもしれません】


 まぁ、美少女以外のパンツなんてそりゃ見たくないけど、他の奴みたいに寝て回復したりする魔力で道テイム発動すれば良かったんじゃ。


【美少女パンツは、絶対の仕様です】


 鉄の信念を感じる……。そう言えば、『道テイム』した時に見れる『視界』は自動的に美少女パンツに注目し、それ以外の邪魔な要素を排除するようだった。ただのパンツで無く、美少女でなければいけないようだ。


 俺は、ケンタウロス族のおっさんに踏まれていく。


【レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです】と声が聞こえる。


魔王がケンタウロス族に呼びかけていた。


「さあおまえら、踏め! 格別の踏み応えらしいぞ!」


 ケンタウロスに踏まれると、レベルアップが著しい。我がことながら、なんて仕様だよ。

 ボキィ、と俺の体が踏み壊されていく。


 ぐわあああああ。なんか、体砕けたぁ! 痛くはないけど。


【レベルアップにより、「鉄筋創造」を得ました。鉄を『収納』することで鉄筋を製作できます】


 何……鉄筋あると、良さそうだな。鉄筋コンクリートって確か鉄筋が柔らかさを、コンクリートが堅さを持ってる。両方のいいとこ取りが起こって丈夫になる……と。


 ……俺の強度を上げられそうだ。

 むかつくことに、人の体を踏みまくったケンタウロス族のおっさん達は良い笑顔だった。


「あー、良い踏み応えだった!」


 ケンタウロス族は俺を見て礼を言って去って行った。


「道さん、ありがとうございました! この礼は、いつか必ず返します!」


 兵站トップのヒポハスは俺に礼をすると、次に魔王に話かけた。


「では魔王様、道と一緒にインフラ整備に行って来ます」


「あぁ、レギン、ロードロード、頼んだぞ……ってロードロード!」


 魔王は俺を見て、驚愕していた。なんだというのだ?


「……お前、もしかして、いや、余の目に狂いはない。エナジーが減少しているな?」


 魔王はめざといようだ。だが一々説明するのも面倒だ。


「そうですね。あれだけ強く踏まれると体が壊れます。あと一分踏まれていたら、バラバラになっていたでしょうね。エナジーはヒビ割れた体の回復の為に使いました」


 回復にもエナジーを使用したが、それだけでなくストレス分もエナジーが減少したようだ。


「な、なんということだ。お前に痛覚は存在しないと刻印情報から読み取ったのだが、エナジーが減少するだと……これは、余の失策だ」


 魔王は頭を抱えている。嫌がる相手を踏ませるってのもいけないと思うけどな。

 魔王軍への参加はしない方がいいかもな、どんなパワハラをされるか分かったもんじゃない。


 すると、魔王と大臣とレギンはぎょっとして俺を見た。


「ロードロード……やばくなったらあたしに言え。皆に言ってやるから。頼りないかもしれないけど、魔王軍で序列6位なんだ。あたし、それなりの発言力あるから」


 綺麗なサファイア色の瞳が俺を見る。


 レギンが俺に優しい言葉を言ってくれる。序列6位だったよな? 凄いな、レギン。

 それだけの立場があるだろうに、俺を優先してくれるなんてなんて優しいんだ。


「み、道殿……私も大臣として貴方に助力します。貴方が破壊されることを我々は望まない。殺されそうになったなら、是非言ってください。私も止めますので」


 ドワーフ大臣は冷や汗かきながら俺に言う。そうか、痛みなかったけどエナジーが尽きた状態で破壊されたら俺死んでもおかしくないな。危なかった。


「ロードロードよ……余もお前に死んで欲しくはない。ケンタウロス族に気に入られたようだが、余からもそれとなく言っておく。だがお前が思ってることあれば言ってくれ。力になるから」


 魔王までもが俺に配慮して言ってくれる。根っこは魔王もドワーフ大臣も良い奴なのかもな。

 だけど、言うべきことは言うか。


「魔王、俺の魔王軍への参加だけど、こんな仕打ちをされてしまうなら……俺は、参加を前向きにはなれない」


「!」


 魔王は驚愕している。ドワーフ大臣やレギンもショックを受けているようだ。


「道テイムで整備するのは良い。だけど、ケンタウロス族のおっさん達に踏まれるのは話が別だ」


 魔王は立ち上がり、深々と謝罪した。その様に、俺は衝撃を受ける。


「すまなかった、ロードロード! 余を許してくれ! 実は刻印情報で、お前を踏めばケンタウロス族は元気になることが判明していたのだ……ケンタウロス族はこの国の中枢を担っていて、どうしても労いたかった。だが、本当に、お前には申し訳ないことをした。誠に、すまなかった」


 魔王は俺に頭を下げ、謝罪を口にした。その様子に、部下の奴らもびっくりしている。


「……そういう事情があったなら、なぜ言ってくれなかったんですか? せめて俺に説明してくれるなら、筋があって納得も出来たでしょう。でも都合を説明せずに命令だけされても納得できません」


 魔王は俺をまじまじと見つめた後、深々ともう一度謝罪する。


「返す言葉も無い。その通りだ。すまない」


「まぁ、他に行くところもないですから取りあえず道テイムはやります。以後、気をつけて頂ければ幸いです」


 魔王は涙目になって、俺に一礼する。


「ロードロード、恩に着る。お前が我が国に着てくれて本当に良かった」


 泣く程のことか? と思うとドワーフ大臣まで泣いている。


「道殿、ありがとうございます。貴方様のお陰で、我が国が救われます」


 ええええええ!? 石畳整備するだけで?

 俺は後ろ髪引かれるような思いで、「じゃ、行って来ます」とだけ行ってレギンに運んでもらう。


 レギンも少し涙ぐんでいて、「皆そんなに石畳好きなの?」と思うのだった。

 なんでこの国の魔族はブーケも魔王もドワーフ大臣も、石畳が好きなのだろうか?


 ドワーフの国だから……か? ものづくりに、ドワーフだから感動するのか? 走り屋だからケンタウロス族は石畳整備されて嬉しい、ってことだろうか?


 いや、ドワーフなら石畳くらい自分で直せそうだが……分からないな。

 その内、分かるんだろうけど。


 レギンの巨乳は相変わらずゆらゆらしている。その胸に、綺麗な涙が滴り落ちる。

 つやつやと光る水の跡、俺はそれに心から喜ぶのだった。


 と、そこへ――ガチャリ、と言う音が聞こえた。

 色とりどりの馬の尾を生やしたケンタウロス族の娘達だった。なんと、ミニスカである。数十名の美少女とフツメン的な数百名の女性が来た。


「あの、ここに素敵な魔物がいるって聞いたんですけど。あ、貴方……」


 俺を見て笑顔になるケンタウロス美少女に、俺は自信満々に応えた。黒髪ロングで簡素な麻のミニスカがよく似合う子だった。


「俺のことですね、多分」


「その、踏んでもいいですか?」


「えぇ、勿論……」


 俺は彼女達のパンツを見れば回復するのは間違いない。何より、嬉しい。そう思ったのだが。

 魔王ガンダールヴが血眼で否定した。


「えぇい、ダメだダメだ! このロードロードは、もう限界なのだ。エナジーが足りない。お前らに踏ませて、破壊されてしまったら」


 何言ってんだこの魔王! 俺から美少女パンツを奪う権利がお前にあるのかよ! と思ったらレギンが、


「あたしからも断らせてくれ。ロードロードはとても傷ついているんだ」


 レギン、お前まで……お前まで、邪魔するのかよ。庇ってくれるのは嬉しいけど、違うんだ!


「いや、少しくらいなら」


 俺が遠慮気味に提案する。しかしレギンは眉間に皺を入れて答える。


「ダメだ。だってロードロード、体にヒビ入っているじゃ無いか!」


「分かった。じゃあ、軽くなら」


「そういう問題じゃ無い! エナジーが回復するまで、お前を踏ませる訳にはいかない」


 レギンは俺のとこに近寄り――レギンのパンツが見える。うおっしゃあああ!


【エナジーが回復しました】


 俺は自分に道テイムをかける、するとヒビは修復した。魔王やレギン、ケンタウロス族の美少女達が絶句する。


「魔王様。俺のエナジーを確認してくれ。多分、少し回復してるはずだ」


 魔王は半信半疑で刻印情報を調べ、驚愕の顔を浮かべた。


「か、回復している……」


「そ、そんな、何故!?」


 レギンも目を大きく見開いている。俺はこの流れのまま押し切ることに決めた。


「エナジーは回復した。だから少しくらいなら、踏んでくれても大丈夫だ」


 そんなこんなで、俺はケンタウロス族の美少女達と……フツメン少女達に踏んで貰った。

 パンツが見える。色とりどりの、パンツ。縞々。ヒョウ柄。くまさんもある。レース。黒、白、赤、青、緑。発達した健康的な輝きを放つ足と股関節が艶めかしいにも程がある。まるで陸上部の女子のパンツを見たような、そんな気持ちに俺はなる。


【レベルアップです。レベルアップです。エナジーが回復しました×100】


 えへへへ。こうして俺はエナジーを回復した。そして魔王の依頼を達成するべく、魔王城の外へとレギンに担がれて退室するのだった。

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