第12話 『道テイム』が感謝されたのは、ケンタウロス族が石畳をすぐ壊してしまうかららしい。
俺は今、レギンに運ばれ魔王城の中央広場に行き『道テイム』。そして移動してまた『道テイム』。
レギンは不可解だと言わんばかりの視線、ジト目で俺を見る。
「ロードロード、何でエナジー回復したんだ?」
「分からない。時間と共に回復したんじゃないか?」
「むー」
体育座りで俺を見るサキュバス美少女。彼女のパンツ、俺には丸見えでこの瞬間も俺のエナジーは回復していく。それはさておき。
道テイム、道テイム、道テイム――。
壊れた石畳が光輝き、どんどん修復していく。俺は【レベルアップとスキル練度向上】の声が心に響き続けた。
俺が道テイムした石畳の上を歩いた女子達、彼女達が履く美少女パンツを堪能。結果、エナジーは満タンになる。
「大丈夫か、ロードロード。昨日より沢山インフラ整備してるけど、疲れてないか?」
美少女パンツを見たからむしろ元気になってるが、勿論余計なことなど俺は言わない。
「大丈夫だ、レギン。俺の道テイムは昨日より燃費がよくなってる」
「凄いな。……そうか、転生者だからあたし達より能力の成長が早いんだな」
レギンの言葉に俺は驚く。転生者ってバレても距離感に変化がない。
元人間とバレたら関係が変わると思ったのは俺の思い過ごしのようだ。
「転生者って普通の魔物より能力の成長が早いのか?」
レギンは頷く。
「うん。転生者というか、異世界転移者? って言うのかな。けっこう来てるんだよ。この世界に」
レギンの話は驚くものだった。俺のような奴が、この世界に沢山来てるだと?
「隣国の王は、異世界から人間を召喚して戦わせてるんだ。死んで異世界からこっちに来た奴は転生者になるらしい。はっきりしてるのは、皆あたし達と違って魔法や魔術じゃなくて『スキル』を使う。訓練したり才能があれば魔法や魔術を異世界転移者も使えるようになるらしいけど、魔術や魔法を使う転移者は殆どいないらしい」
「死んで異世界からこっちに……」
やっぱ俺、死んじゃったのか。じゃあ帰る場所、無いのかな、元の世界に。
「隣の国は強力な戦士を異世界召喚してきてな、ジャンヌってんだけどそいつが強くて苦戦してる」
「隣の国……人間の国か」
「うん。私達エヴォルの隣国。エルティア王国って国だよ。今戦争中なんだ」
隣の国に俺と同じ異世界人がいるらしい。会ってみたいな。ジャンヌ、か。フランス人かな?
道テイム、道テイム――、俺は道テイムを可能な限り繰り返し、日が暮れてもレギンに運ばれながら『道テイム』をやり続けた。
結果、魔王城の近くの石畳は全て『道テイム』してピッカピカの新品のようになったのだ。
街を行き交う人々はその光景に絶句していて、俺はどこか気持ち良くなる。
次の日の朝。
レギンがやって来て、再び俺は倉庫から運ばれる。
「ロードロード、見ろよ」
「?」
レギンが指差した場所を担がれた状態で見る。すると、そこにはブーケがいて全力疾走していた。
ドドドドドド、と足音を立てて石畳を渡っていく。
凄まじい速さである。
「凄いな。だけど、石畳がもう痛んでいる」
エヴォルの石畳があちこち痛んでいる理由が解った。ヒビが入ってたり、石片が落ちている。あのケンタウロス族達の強力な脚力に石畳がすぐダメになってしまうのだ。しかしあれだけ急いで何を運んでいるんだろうか? 袋を持っている子が多い気がするが。
レギンが笑顔で俺に語りかける。
「ケンタウロス族はさ、脚力が強力で頭も良い。だから物流とか兵站で大活躍してくれているんだ」
「へー」
適材適所、という言葉があるがまさにケンタウロス族が配達してくれるのは合っていると言わざるを得ない。
……ん、待てよ、『兵站』? そうか、ケンタウロス族が兵站を担ってるというのはあの速度で納得した。ブーケの父、ヒポハスも兵站トップだったしな。
ってことは石畳を整備すると、兵站が良くなる……この国は戦争中、だから石畳を整備するだけであんなに魔王達から感謝されたのか。
漸く、納得した。
が、レギンの言葉は俺が驚くことだった。
「でも脚力が強いからこそ足にかかる負担は凄まじい。道が石畳を整備してくれたら安定した足場で強力な力と速さが発揮できる。皆、感謝しているよ」
俺の石畳整備は、ケンタウロス族の労働寿命さえ延ばしているのか!
「俺ってそんな良いことしてたんだ」
「そうだぞ。ロードロードは凄いんだ」
レギンは俺を見る。はにかむ笑顔が可愛い。っく、好きになったらどうする!
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