第2話 口の中

 第二話 口の中


「ねぇ、なんで勃たないの!?」



 強い口調で責められる。



 パンっ。




 そのたびに頬をはられる。




 痛いのか熱いのか、感覚が鈍くなっていた。



「ヒナちゃん、やめて………うぐっ」



 何度目かのお願いも、口答えするなと言わんばかりに手で口をふさがれ、反対の唇の端が切れた。





 これって、立派な暴行だよな。



 濃くなった血の味を確認して、もうブチ切れそうだった。



 だいたい商売道具の一つでもある顔をこんなに叩かれちゃ、しばらく仕事できなくなる。




 ただしもびっくりさせてしまうな。



 家出した俺を、訳を聞かずに泊めてくれている心優しい友人の、心配げな顔が浮かんだ。





 だめだ。殺されるかもしれない。



「ヒナちゃん。俺、ヒナちゃん好きだよ。でも、いま勃たなくて………」




「え? なんで? 好きなら勃つでしょっ」




「えっと………」




 SEXしたら解放されるのか? 




 でもしたくない。





 できない。




「ねぇ、冷たくなる?」




「え!?」




 それどういう意味。




「超気持ちいいよ、キ・メ・セ・ク」



 キメセク?





 ドラッグか?





「俺に飲ませた?」




 身体が熱いのに、冷や汗が浮かんだ。



「え? まだだよ。でもヒナが電話したら、すぐここに持ってきてくれるんだから」




 冗談じゃない。



 薬なんか打たれてたまるか。




 でもどうやって切り抜けられる?




 ヒナはスマホを出して、いまにも連絡しようとしてる。





「お、俺なに飲んだの? そろそろ効いてくるかも」



「ほんとぉ? 遅いやつなのかなぁ。ヒナはもうムラムラとまんなぁい」





 それはわかってる。




 その欲にまみれた顔。




「ちょっと自分でいじってみるから………」




「えー。ヒナやってあげるよ。ヒナ上手いんだから」





「ちょっとっ」




 乱暴にズボンのチャックを開けられ、ぜんぜん萎えてるのを取り出される。



「痛い………」




「あー、ごめんね。お詫び、おふぁび」




 何ためらいもなく、彼女はそれを咥えた。


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