見てみぬふり
リビングで家族4人の一家団欒。テーブルの上に広がったお菓子を囲み、
和気藹々と、週末に予定しているお出かけの話をする。
しかし、1人多い。
私の左前に座る父、の右隣に、見覚えのないお婆さんが立っている。しか
も、父も、母も、私の左隣の兄も、その存在に気づいている。ただ、皆、見
て見ぬふりをする。皆がそうするから、私もそうする。
お婆さんが自分の指をしゃぶり始める。チュパチュパ、ジュパチュパと音を
立てて、まん丸い目を見開きながら、父のことを凝視している。皆、見て見ぬ
ふりをする。皆がそうするから、私もそうする。
やがてお婆さんが指を食い始め、血が流れだす。骨が噛み砕けないのか、い
つまでもガチガチと音を立てて噛んでいる。
皆、見て見ぬふりをする。
皆がそうするから、私もそうする。
きっとこの空間は、小さな世の中だ。そんなことを、私は思った。
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