5-3


 宇宙空間にキリトリ線が現れた。


 ミシンで縫ったような点線だ。周りをぐるりと取り囲む。


 無重力の波を泳いで、ゴールテープのように切る。


 点線の向こう側へ落ちてゆく。


 頭のほうから、落下する。


 向こう側が広がって、宇宙の闇が裏返しになる。


 そうして体はゲートを抜けた。


 明るい光が上空から差す。


 失速した体は、足もとから地面に降りる。


 そのまま根が生えて花になる。


 パステルカラーの花々が、自分の周りから地平線の彼方まで、風に揺れながら生えてゆく。


 波紋のように地面が揺れる。


 どこかから、風に乗って歌が聞こえる。


 複雑な音程をハミングしながら、すぐ目の前を駆け抜ける――。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る