第11話
「涙があと1つ。期限も20日になった。私の身体、どうなるんだろう?」
1人で呟いていると367が現れた。
「たしかに本物の涙が2つ。ミッションって意外と大変でしょう?」
「ええ。生き返る為にこんなに苦労をしないといけないっていうのを体感している。こうして浮遊しながら、色んな人の思いを見ることなんて簡単にできることじゃない。」
「私達スケジューラーも様々な魂と直面してきたけど、貴方みたいな人は特例ね。」
「私みたいにミッションを受けて生き返った人もいるの?」
「私はあまり聞いた事がない。…ああ、似たようなケースでミッションを受けた魂はあった。ただ、期限に間に合わなくて人間に戻れなかった事はあったわ」
「その魂はどこへ?」
「知らされていない。貴方は自分の任務をクリアしてほしい。容態も衰弱してるから早いうちに手を打って」
翌日、お姉さんは高梨の家へ行き各所の掃除が終わると、彼から昨夜の話は考えてくれるかと話してきたが、彼女は何の話だか覚えていないと返答した。
改めて住み込みで仕事を続けて欲しいと伝えると、少し
「吉住さんの事、ずっと気になっていたんだ」
「何?」
「遠くの方を見る癖があっただろう?どうしてだろうと聞いてみたかったんだ」
「当時好きな人がいたの。父の会社に勤めていたの。けれど、突然失踪してしまって。未だに行方不明のまま。生きていて欲しいといつも考えていた」
「その人を、待っている?」
「いいえ。最近になって吹っ切れた。どこかで元気でいてくれたら、それで良い」
お姉さん、だからいつも寂しそうな顔をしていたんだ。失踪した男性…一体誰なんだろう。
彼女が高梨に挨拶をして家を出た。自宅に着いて彼女の身体に移った。
手紙を書きたくなった。コンビニへ行き便箋を買い再び家に戻り、ペンをしたためた。31に怒られる覚悟で彼女宛に手紙を書いてポストの中に入れた。
「吉住若菜さま。私は橘由愛と言います。貴方が働いていたコンビニに立ち寄る事がありましたが、最近になり見かけなくなったので聞いたところ、やめた事を知りました。私は今病院に入院しています。もし可能であれば一度お会いしませんか。できれば14日以内に来てください。待っています」
来てくれるのは彼女次第。明日、これに気付いてくれたらいい。
夜も更けて翌日の朝になり、お姉さんがポストのチラシを取り出した時、私が書いた手紙に気づいてくれた。
中を開封して読み上げていくと、支度をして病院へと向かった。病室へ入り、私の眠る姿を見て愕然とした。
「私に会いたかったって…こんな状態でいるのに、私の為に会いたいなんて…」
彼女が涙を流した。私は箱を取り出そうしたが、突然誰かに手首を掴まれた。
「こんな無謀な事をして、涙を集める気だったのか?」
「31さん。もう時間がなくなってきているから、お姉さんに協力してもらいたかった」
「要さん?」
お姉さんが31の姿に気づいた。なぜ彼が見えているのかはわからないが、31も驚いた表情をしていた。
「貴方は、あの時からいなくなったのに、どうしてここにいるの?」
そう告げた途端、彼女は失神した。
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