第8話

「どうしたのかな、急に苦しみ出して…。31が来ない。おかしいな、ボタンが効かない」


「大変そうね」


「貴方は誰?」

「スケジューラー367。31の代わりに来たよ。彼女、38度以上の熱があるわね。」

「物をつかみたいのにすり抜けて何もできない。このままだと、涙を集められない。どうしたらいいの?」

「私を使う?」

「スケジューラーがそんな事できるの?」

「一時的に姿を現す事はできるよ。由愛さん、手を貸してくれる?」


スケジューラー367。黒髪をなびかせて私の前に現れた。

言われた通り彼女に手を伸ばすと体内に入る事ができたて、鏡を見ると367の姿になっていた。


「まだ熱が引かないようね。…とりあえずこのタオルでいいわ。」


367が冷水でハンドタオルを浸し、絞ってお姉さんの額に乗せた。31がエネルギーを整えた分その力が強く加わったので、高熱が出たと話していた。


「このまま朝まで安静にしてあげて。」

「解熱剤が必要よ。病院に連れて行けないの?」

「誰かが彼女を訪ねてくる。その時に連れて行ってくれるはずよ。もういいわ、身体から出て」


367の身体から抜けると、彼女はいなくなった。誰かが来るまで待っていよう。


翌日、お姉さんが高梨のところに電話をして休む事を伝えると、彼が家に来ると話していた。しばらく待っていると、玄関のドアを叩く音がした。お姉さんが出ると高梨がやって来た。


「辛そうだな…そんなにふらついているようじゃ治りづらくなる。病院へ行こう」

「私は、平気です」

「仕事ができなくなると、俺も困る。さぁ、行こう」


彼の肩に寄りかかりながら、車に乗って病院へ向かった。

2時間後、彼女が帰ってきた。今朝よりも少し顔色が良くなっている。


「何かあったらまた連絡をしてくれ。…これ、差し入れ。良かったら食べて」

「ありがとうございます」


高梨が帰るとお姉さんは安堵した様子だった。解熱剤を飲み布団に入って眠りについた。


その夜、158と367が高層ビルの屋上である過去に起こった事を話していた。


「貴方をき殺した男が出所した?それで何する気なの?」

「いくらムショで悔い改めたとしても僕にとっては微塵にもそうは感じない。奴が近くにいる。この目で確かめたい」

「人間のように周りを背いてまで痛めつける気?馬鹿な事はしない方がいい」

「どうなったって構わない。僕のやり方がある」


158は姿を消してその男の背後につくように後を追った。

あるガラス張りのテナントの前に着き男が横を見ると158の姿に気づいて振り向いた。

男は驚き声を発した。


「あんた…死んだはずだろ?なぜ生きているんだ?」

「ようやく会えたな。ずっと待ち侘びていたよ」

「何をしてる?俺に復讐するつもりか?」

「ああ。以前した事と同じ目に遭わせてあげるよ」


男は駆け足で逃げて行くが、158はバイクに跨がり、勢いよくアクセルを踏み走らせた。


***

「…じゃあ俺行くね。」

「気をつけなさいよ」


158は過去の記憶をさかのぼり、事故当時の出来事を思い返していた。

3車線から2車線の道路に差し掛かり左折しようとした時、対向車が誤って向かってきて、彼の乗るバイクを轢いた。


身体を飛ばされて意識を失い、しばらくするとある人物が目の前に立っていた。


「あれ、俺だよな。何で死んだんだ…あんた誰?」

「スケジューラーナンバー31。これから49日間かけて君に勤めを課せる。僕についてきて…」

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