第7話
自宅へ戻りお姉さんの身体から離れた。
「あっ。あれ、さっきまで高梨さんの所にいたはず。まだこの時間なのに…どうなってるんだろう。身体が重たいな。横になろう」
彼女の身体を借りて何度も出入りしている分か、どこか辛そうな表情を浮かべていた。
31に聞くと体内に長時間宿っているので、彼女のエネルギーも消耗してしまっていると話していた。
横たわる彼女の身体の上に31が手をかざすと、光が出てきて包み込むように触れていった。
「何をしたの?」
「彼女のエネルギーを整えてあげた…ううっ…」
「大丈夫?」
「僕もあまり使わない力を使った。君が借りる前からネガティブな要素が強かったみたいだな。」
「まだ身体を借りていても平気なの?」
「君があと2つ涙を集めたら良いだけの事だ。あと、35日。日にちはあっという間に過ぎる。高梨の事も気になるかもしれないが、あまり危険を伴う事はしないでほしい」
「何か決まり事でもあるの?」
「詳しくは伝えられない。僕らスケジューラーにも掟はある。今日は上手く涙を採取できたが、もう少し慎重になれ」
そう告げると31は消えた。
その頃上界の岐路の部屋では、また新たな魂が運命を決める時が来ていたようだ。
「こちらに、おかけください。」
「ここは?」
「これから貴方が僕達に同意した上で今後の行き先を決まる判を下します。俗名を教えてください」
「古村真也だ」
「古村さん、人間界での49日間のお勤めはいかがでしたか?」
「正直、納得ができていない。俺は仲間に騙されたから正当だと思ってあいつらを殺したんだ。ムショも猶予期間も終わって出れたのに…」
「出た途端に心不全となった。しかし古村さんは、それがあらかじめ定められた人間としての一生でした。」
「成仏できなくても良い。頼むから俺を戻してくれ」
「ここに来たのは貴方が決めた事。一度決めた事は後戻りでき兼ねません」
「全て決めたのは、俺って事か?」
「はい。全て受け入れたからここから定めの道へと向かうのです」
「こちらにサインをしてください…ありがとうございます。では、悔いのないよう、その魂の報いをお納めください。158、扉を開けてください」
「この炎は?」
「最下層から立ち込んでいる炎です。これから貴方は餓鬼道、畜生道、地獄道へと向かいます。そこから二手に分かれる所で進むべく場所が貴方の永遠の試練となります」
「そこに、何があるんだ?」
「私達には知られていません。全て受け入れた貴方が逝く道です。お気をつけて向かってください」
その魂は一礼をして、下る階段を降り、扉が閉まった瞬間に悪の叫び声が響いた。
「158。これだけ魂を送っていって、君はまだ彷徨いながらスケジューラーとして役目を務めていくのか?」
「何の話だ?」
「言い訳か?本来なら天国へ行けた魂だったのに、自らスケジューラーを引き受けたいだなんて…前例がないから他のスケジューラーからも見下されている。」
「自分の選んだ道だ。誰にどう言われようと構わない。時間にして35年。貴方にはまだまだ敵いませんがね」
「今からでも遅くはないんだぞ。やり残した事でもあるのか?」
「関係ないね。今はあの可愛い魂が涙を集めるミッションについてあげねばならない。」
「そんなに気に入ったか?」
「スケジューラーに恋という同情なんて持ってしまったら、上から激怒されそうだしな」
「ふっ」
「笑ったな?そういえば31、貴方も元は誰かを探していたと言う噂話を耳にしたが?真相はどうなんだ?」
「僕には噂など1ミリもない。今の任務を真っ当するだけだ」
「…あぁ。逃げたな。次の魂が遅いようだ。367。連れてきてもいいぞ」
「とっくに来ているわよ」
「おっと、ご苦労。…こちらに、おかけください」
深夜2時。目を覚ますとお姉さんが熱でうなされていた。
私は機器で、31を呼ぼうとしていた。
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