第3話

 勇介達が城で戦っている頃、城の外では戦闘が繰り広げられていた。遠藤は二門の大砲と共に橋を渡り村を馬で走り抜けた。魔犬や魔鳥が襲い掛かって来たが兵達が次々と退治した。しかし魔物の数はますます増えて城のある山へ入れずにいた。

 突然、空から火球が降ってきた──

 火球は次々と魔犬や魔鳥に当たり村の家屋を焼いた。

 「何だ!」

 遠藤は空を見上げた。

 空から炎をまとった竜が降りてきた。全身が燃える竜の頭には人が立っていた。竜は兵達の頭上を通り過ぎて城に向かって火球を吐き出した。火球が城壁に着弾したが全く効かなかった。

 竜が村に戻って来た。男が竜の頭から飛び降りた。異国の服を着た長髪の若い男は遠藤の前に立った。

 「そなた、何者だ!」

 遠藤が男を睨みつけて訊いた。

 「私は冥希。あの炎龍を使う者でございます」

 冥希は空で魔鳥と戦う炎龍を指差して答えた。遠藤は炎龍を見て目を閉じた。

 「炎の竜か。この地に来てから驚く事ばかりだ。そなたの目的は何だ」

 「驚いていると言いながら肝が据わった方ですね。この状況なら確かに驚いている暇などないでしょうがね。私の目的はあの城の破壊です。詳しく申し上げられませんが私の役割はこの世に非ざる者を退治する事です。ある方から命を受けてこの地に参りました」

 冥希は丁寧に答え冷たい眼差しで遠藤を見た。

 「そうか。それなら目的は同じ。あの城には既に兵が入って戦っておる。我々もここで雑魚ばかり相手にしてはいられない。手を貸してもらえないか」

 「構いませんが、私の役割は城の破壊。城に入ってからも好きにさせてもらいます」

 「わかった。好きにしろ」

 遠藤は答えると馬の手綱を引いた。

 「このまま城まで突っ切る!皆の者続け!」

 遠藤は叫んだ。

 「わかりました。お供します」

 冥希は炎龍を呼んで頭に飛び乗った。

 炎龍が火球を吐き魔犬や魔鳥を退治しながら道を作り兵達が進んだ。

 一行が山を登ると城から砲撃が始まり城門の前には魔犬が待ち構えていた。

 「これ以上進めんな」

 馬を降りて後ずさりする遠藤の前に炎龍が降りて来た。

 「犬は任せます。私は砲台を壊します」

 「わかった」

 遠藤が冥希に答えた。

 冥希の乗った炎龍が上昇して城に近づいた。城の砲台が上に向き一斉に炎龍へ向けて攻撃した。炎龍は被弾しながらもひるまずに火球を吐いた。火球が城壁から突出した砲台に命中し爆発した。

 「砲台には効くようだ。やれ!」

 炎龍の頭にしがみついた冥希が叫んだ。

 炎龍が火球を連射して砲台を次々と破壊した。正面の城壁に備えられた砲台が全て破壊され砲撃が止んだ。

 「よし、今だ!皆の者かかれ!」

 遠藤が兵を率いて進んだ。遠藤達と魔犬の戦闘になった。村での戦闘に慣れたのか兵達は手際よく魔犬を倒した。

 炎龍が門扉に火球を吐いた。扉はびくともしなかった。

 「この扉は鉄でも石でもない。何で出来ているのだ」

 冥希は炎龍に乗ったまま上昇した。城の内側は薄い光の壁で覆われていた。炎龍が光の壁に火球を吐いたが吸収された。

 「正面から突入するしかないか」

 炎龍は降下し門扉に体当たりした。扉が軋む音がした。何度かぶつかっていると扉が少しだけ開いた。

 「今です!」冥希が叫んだ。

 「おう、続け!」遠藤は全力で走った。

 冥希が炎龍から飛び降りて隙間から入った。扉が閉まり始めた。遠藤は扉が閉まる寸前で駆け込んだ。

 「入れたのはそなたと俺だけか」

 遠藤は息を荒くしながら言った。

 「ええ。どうやらここには扉を開く仕掛けはないようです」

 冥希は扉の周りの城壁を調べて答えた。

 「皆は予定通り真ん中の天守に入ったのだろう。行くぞ」

 「はい」

 冥希は遠藤に答えて空を見上げた。薄い光の壁の向こうで炎龍がこちらを覗いていた。

 「よく見ると愛嬌のある顔ではないか」

 遠藤は炎龍を見上げて微笑んだ。

 「頼もしい友です。さあ行きましょう」

 二人は庭を走り城の中へ入った。

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