第35話 金獅子のデストロイヤー


 「う・・・あ・・・ククク、グウルもジャイアントシックルも倒されてしまいましたか」



夕焼けの赤色の空の下、見下ろしている召使いは、そう呟いた。


俺の右腕の銃口から放たれたサタトロンキャノンによって、こいつの左胸には大きな穴が開いている。


そこから大量の血が流れていたのか、召使いの周囲は血溜まりが出来ていた。


最早まだ生きていることが不思議なほどである。


そういえば、聞きなれない言葉を言っていたな。


たしかジャイアントシックルだったか。


恐らくは、バンディッドが倒した蟷螂の魔物の名前なのだろう。


そいつも倒したのだが、まだ因子は回収していなかったな。


あとで回収しに行くとしよう。


まずは、



「お前は何者だ? 」



召使いから情報を聞き出すことが優先だ。



「何者でもありません。カオスギルドの末端に過ぎない存在ゆえ」


「なに!? 」



召使いの返答に俺は驚いた。


カオスギルド。


この奴が口にした言葉を俺は知らない。


俺が驚いたのは、召使いがすんなりと自分の所属する組織の名を口にしたからだ。


こういう場合は、簡単には口を割らないもののはずだ。



「カオスギルドとは混沌の世界を渇望する闇の組織。魔王の召喚こそが我らが宿願」



驚く俺に構わず召使いは口を動かし続ける。


こいつの口にする言葉はハッキリと耳に入ってくる。


もうじき死ぬとは思えないほどの流暢りゅうちょうな喋りだ。


加えて、悲壮感ひそうかんも感じられない。


まるで、今が人生の中で一番幸せだと言わんばかりに満ち足りたような声のように聞こえた。



「魔物を使役する術と人を異形・・・人々をグウルに変える術を用いて、我らは陰から世界を変えていく」



ここで召使いは喋らなくなった。


恐らくは、自分の言いたいことは全て言い終わったのだろう。


カオスギルドという組織があり、その目的はグウル化を使って魔王を呼び出すこと。


魔物の使役とグウル化は、こいつらの組織が持つ技術。


大まかに内容をまとめれば、こんなところだろう。


魔王と呼ぶ存在とは、魔物の使役方法とは、グウルとは?


などなど分からないことは、まだ多くある。


だが、カオスギルドという組織の存在があることを知れただけでも大きな収穫だ。


なにせ、召使いが口を割らないと思っていたからな。



「なぜ、そこまでのことを言ったんだ? 」



どういう意図で情報を口にしたのかを聞いてみる。


死に際のくせに、わざわざ綺麗に教えてくれたあたり、何か意図があると感じたからだ。



「あなたはわたくしめに勝つという試練を乗り越えた。その報酬ですよ」


「報酬? 」


「ええ。試練を乗り越えたのだから、勝者を得なければならない。敗者は与えなければならないのです」



カオスギルドには、そのような変わった掟のようなものがあるらしい。


気高いとは少し思うが、これは立派な情報漏洩だ。


残された組織にしてみれば、敵に情報が渡って重大な被害を招きかねない迷惑な行為である。


いや、組織が掟としているのだから迷惑ではないのか。


組織というか代表はたぶんアホに違いない。



「うん? 掟のようなものか?見栄を張って面倒で損なものを作ったな。アホが作ったのか? 」


「ククク、面倒でも損でもありませんよ。わたくしめの試練はこれで全て終わりました。道半ばではありますが、まっとうしたのです。後は残された者達が引継ぎ、より大きな試練を乗り越えてゆくことでしょう」



召使いはそう言って、満足気な笑い声を出した。


小さな声であったのだが、確かに満足げに聞こえた。


なんかムカつく。


バカにされたのを気にする素振りなんか一切見られなかった。


軽くあしらわれた気分だ。


こっちがアホみたいじゃん。



「いや、その試練とやらは果たされない。俺がいるからな」



だから、言ってやった。


このままこいつを満足させたまま死なせるなんてのは気分が悪いし、カオスギルドという組織が気に入らないからだ。


世界の混沌? 魔王の復活?


俺を差し置いて悪の組織みたいなことをしているようで、大いに気に入らない。


世界を征服するのは俺なんだ。


絶対に潰してやる。


残党の一人も残さず潰してやるぞ。



「ククク・・・本気です・・・か? 」



召使いが俺に問いかけてくる。


奴の声が弱々しく掠れてきた。


急に来たな。


死ななそうな雰囲気を出していたが強がりだったのだろうか?


ならば、俺が本気でカオスギルドを潰すことを死ぬ前に教え込んでやらねばな。



「ああ、無論本気だとも。貴様等のカオスギルドが栄えることは万が一にでもあり得ない」



決まった。


これで、こいつは絶望しながら死んでいくことだろう。



「そう・・・ですか。何が何でも世界を救う・・・と」


「ああ・・・あ? 待て、世界を救うだと!? 」



聞き間違いでなければ、確かに召使いは世界を救うと言った。


誰が?


まさか俺のことを言っているのか?


冗談じゃない。


ここにきて召使いと俺とで認識の齟齬そごが生まれてしまった。


どうやら召使いは、俺を正義の味方か何かを勘違いしているらしい。


悪の組織を倒すと豪語するのは、正義の味方的な存在に見えるのも分からなくはない。


だが、違う。


全く違う存在なのだ。


俺は悪の組織として、別の悪の組織を潰したいだけだ。


目障りな競合他社を潰したいだけなのだ。


世界を救うつもりなんて、これっぽっちも思っちゃあいない。


そう思われるのは心外だ。


今、かなりのストレスを感じている。


なんとか訂正しなければ。



「クク・・・ク、世界を救う・・・か。まさか、このような場所にこの国の伝承にある勇者の如き志を持つ少年がいるとは」


「聞け! 違い! 俺は勇者なんかじゃない! 」


「ならば、少年! 我らがカオスギルドを倒し、世界を救ってみせよ! わたくしめは組織の中でも最弱の位。容易く世界を救えるとは思わないことだ! 」


「だから聞けって! 死ぬな、死ぬな。まだ死ぬんじゃないぞ。いいか? 俺はサタトロン。悪の・・・」


「おお、サタトロン! この世界に秩序をもたらさんとする新時代の勇者よ! さらば! 」



召使いは壮大な言葉を履いた後、糸の切れたマリオネットのように動かなくなった。


生きているような気配も感じられない。


死にやがった。


俺が世界を救う勇者だという最悪な誤解をしたままあの世へ逝きやがった。


もうこの死体に何を言っても伝わらない。


死に逝く人間の誤解を解いたとしても、これからの俺の人生には何の役にも立たない。


そんなことは分かっている。



「違う違う違う! 勇者なんかじゃない! 俺は悪の組織の・・・俺は悪の総帥なんだああああああ! 」



だが、俺は叫ばずにはいられなかった。


誤解を解けないまま召使いが死んでしまったことが死ぬほど悔しかったのだ。





 召使いの死を確認した後、俺は蟷螂の魔物の死体がある場所へ向かった。


蟷螂の魔物はバンディッドの[トルネードスマッシャー]によって粉々になってしまったので死体はない。


厳密に言えば、因子が落ちてしそうな場所へと向かった。


もすぐ夜になるということもあって暗くなっていたのだが、因子は光って見えるので逆に見つかりやすくかった。


回収した因子は蟷螂の因子。


虫の因子は持っているが、そのレア物の因子はこの蟷螂の因子が初めてだ。


蟷螂の魔物は瞬発力が飛びぬけて高い魔物であった。


その瞬発力を活かせるような人材に使いたいものだ。


それから俺はバンディッドの元へと向かった。


バンディッドは近くにいた。


地面にぐったりと大の字で寝転がっている状態で。


彼女はふざけているわけではない。


大技のスキルを使ったことで、大きく消耗して動けないのだ。


だれかが手を貸してやらねば帰ることが出来ないので、こうして拾いにきたわけだ。


拾う時、バンディッドは「やだ~お姫様抱っこがいい~」とか言っていたが却下である。


俺も疲れていて、そんな余裕はないからだ。


運んであげているだけでも感謝しろと思いつつ、最後にビショップの元へと向う。


すると、ビショップは地面に座っていた。


[怪人化]を解除した素の状態だ。



「お疲れ様です。総帥」



俺が近づくと、ビショップは優雅に跪いた。


チラッと顔を見たが彼女も疲れているはずだ。


それでも総帥である俺への礼を欠かさないとはな。



「ご苦労。リオへの[因子付与]は・・・結果は聞くまでもないか」



ビショップの横へと視線を移す。


そこには一人の少女が地面の上で仰向けになっていた


目を閉じて寝ているように見えるが、恐らくは意識を失っている状態に近いのだろう。


この少女は、かつてのリオである。


[因子付与]が成功したようで、グウルから人の形になっていた。


元の彼女から変わったとこといえば、背が俺より少し高かったのが同じくらいになったのと、髪の色が金色になったくらいか。


背の高さが変わったのはよく分からないが、髪の色が金色になったのは使用した金獅子の因子によるものだろう。


[因子合成]によって生み出したので、元となった魔物は知らないが金獅子というくらいだから元の魔物も金色の体毛を持っていたに違いない。



「・・・え? なにこの巨乳」



ビショップが急に口を開いたかと思えば、そんなことを言いだした。


視線の先からして、この寝ているかつてのリオを指してものだろう。



「たしかに・・・」



ビショップも口を開いた。


バンディッドの言うことに同意するような物言いだ。


あえて触れないようにしていたのだが、このリオは巨乳と言えるほど胸が大きくなっていた。


俺の年齢は十歳。


ビショップやバンディッド、そして今のリオは正確に年齢は分からないが背丈からして推定十歳。


つまり、全員十歳ほどの年齢として、ビショップもバンディッドもその歳の割には大きいほうだとは思う。


だが、リオは彼女達よりも明らかに大きかった。


部下をそんな目で見るのは良くないのだが、思わず目がそこへと向かってしまう。



「あ・・・総帥~? ひょっとしてだけど、胸の大きな娘が好きなの~? 」


「どうなのですか? 総帥」



ジトっとした目でバンディッドとビショップが俺を見てくる。


俺がリオの胸ばかりに目が行っていたことがバレたようだ。


なんかそんなことを言ってくると思ったから、バレないように気合を入れていたので常人には気づかれないはずだ。


二人はエスパーか何かか?


ひょっとして、まずい状況だろうか?


胸の大きさで女性の優劣を決める最低な奴だと思われていないか?


だとしたら、二人の俺を見る目が変わるちょっとした危機的状況である。


だが、見くびっては困るな。


確かに、リオは目を引くほど胸が大きい。


だからといって、とりこになる俺ではない。


胸が全てではないのだ。


そのことを伝えるともに、二人を納得させる回答はいかがなものか。



「おっぱいはおっぱいだ」



俺が導き出した答えがこれだ。


うーん・・・もうちょっと時間が欲しかったな。


なんだよ? 「おっぱいはおっぱいだ」って。


これじゃあ何も伝わんないよ。


あと胸って言いたかったのに、なんかおっぱいって言っちゃった。



「「・・・」」



二人からの視線が痛い。


これはダメっぽいな。


あーあ、今日から俺はおっぱい総帥です。


よろしくお願いします。



「大きいも小さいもない・・・ってこと? 良いこと言うじゃん! 流石アタシの総帥! 」


「フフ、体形ではなく心が重要であると。なんと高潔な・・・それでこそ私の総帥です」



あれ?


なんか二人が尊敬の眼差しを向けてくる。


上手く好感度が上がった方向にいったっぽい。


良く分からないが日頃の行いが良かったおかげだと思うことにしよう。



「ん・・・うん・・・」



おっぱい・・・じゃなかった。


リオが起きたようだ。



「これは、我が主・・・いえ、総帥様。この度はワタシを配下に加えさせていただき感謝を申し上げます。そして、かつてのワタシが行った数々の非礼を謝罪いたします」



かつてのリオは跪きつつ、深く頭を下げてくる。


ビショップ、バンディッドと同じく俺への忠誠心は高いようだ。



「いい。それより気分はどうだ」


「はっ! 総帥様より力を頂戴したことで、みるみると力が沸き上がってきます・・・」



元気っぽいようだ。


みんなへとへとだから頼もしい。


[因子付与]をした場合、バンディッドしかまだ例がないが性格は変わる。


いや、人格事態が変わるという方が正しいか。


今のリオは、元の人格のように嫌な感じではなく、ビショップのように丁寧な喋り方をする。


所作もかっちりしており、元が騎士だからか騎士のような厳粛な感じの人格になったのだろうか?


騎士かぁ、いいなぁ。


こう強キャラ感があって良いよね。



「・・・ですわ」



ん? ですわ?


聞き間違いか?


リオの口から「ですわ」というアニメでよく見るお嬢様キャラの口調が聞こえたような。



「湧き上がってきますわ! 力が沸き上がって仕方がありませんわ! オーッホッホッホ! 」



気のせいじゃなかった。


急にリオのテンションが高くなった。


目をカッと開いたかと思えば、急に立ち上がって高笑いした。


今になって、新しい人格がはっきりと表に出てきたようだ。


騎士のキャラかと思ったが、どうやらお嬢様キャラだったらしい。


あからさまにお嬢様というキャラを強調されたステレオタイプの。



「総帥様! 」


「は、はい! 」



急に俺に声をかけてきたのでビックリしてしまった。


な、なに?



「ワタシは総帥様の騎士となり、誠心誠意尽くす所存・・・でありましたが、それを辞退させていただきますわ! 」


「え? 」



それって、どういうこと?


まさか反乱?


俺が総帥だと認められないってことか?



「ワタシはキングとして総帥様に尽くすと、ここに宣言いたしますわ! 」


「え・・・うん。うん? なに? 」



騎士を辞退すると思ったら、キング?


王様?


クイーンじゃなくて?


待って、色々と意味が分からない。


だけど、尽くすと言ったから反乱するつもりではないようだ。


そこは良かった。



「なんでキングなの? 」


「総帥様という壮大なお方を支えるには、ただの騎士では勤まらないと思ったからですわ! ゆえにキング! キングこそが総帥様が統べるに相応しい存在なのですわ! 」



お、おう。


長いな。


一言じゃあ収まらなかった感じね。


要するに、俺に仕えるには騎士よりも強い存在を目指すべきという考えらしい。


たぶん。


良い心掛けだとは思う。


だが、総帥と差し置いて王様・・・いや、キングか。


ともかく、王を名乗るのはいかがなものかと思う。


というか俺が王であるべきだろうよ。



「お前がキングなのは分かった。しかし、お前がキングであるとすれば俺はなんだというのだ? 」


「神ですわ」



リオは迷いなく言い切った。


そうか、神かぁ。


また随分と大きく見られたものだ。


神になったつもりはないのだが、騎士では足りないと言ったことから、そう見えるってことなのだろうか。


なんかビショップとバンディッドがうんうんと頷いている。


リオだけではなく、二人も俺のことを神だと思っているのか。


まあ、尊敬してくれているようだしよしとするか。


それでリオが俺の部下であることを認識してくれているわけなので、ビショプとバンディッドと同じように新しく名前を付けるとするか。


もうこいつは、リオではないのだからな。



「まあいいや。お前の名前だが・・・そうだな。戦いぶりを見て決めさせてもらうとしよう」



俺は視線と遠くの方へ向ける。


今気づいたのだが、こちらに向かってくる集団がいるようだ。


その集団はグリーンモンキッキ。


どういうわけか、グリーンモンキッキの群れがこちらに向かってきているようであった。


完全に推測だが、この辺は奴らの縄張りで騎士達が全滅し、俺達だけになったところで縄張りを奪い返しにきたといったところか。


グリーンモンキッキは群れで行動することがあるが、多くて十体ほどであると聞く。


遠くに見えるグリーンモンキッキの群れはそれ以上の数はいる。



「バンディッド、何体いるか分かるか? 」


「うーん、四十八・・・まあ、だいたい五十体くらいかな」



[索敵]スキルを持つバンディッドいわく、五十体ほどの群れらしい。


万全の状態であれば余裕だが、今の状態だと少々手こずる相手になりそうだ。


言ったおいてなんだが、リオ一人ではきついかもしれない。



「御意。ワタシ一人で殲滅して参りますわ! 」



リオ本人は、そうは思っていないようで余裕の様子である。


意気揚々とグリーンモンキッキの元へと向かう。


しかし、五歩くらい歩いたところで止まった。


ちょうど鞘から剣を抜いていたが、何か問題があったのだろうか?


リオは手にした剣をジッと見ている。



「なんですの? この貧相な剣は? こんなのじゃあ物足りなくってよ」



リオは剣をポイッと無造作に投げ捨てた。


見た感じジャンクフィールドではお目にかかれないほどの良質な剣であった。


けっこう手入れされて大事にしていたであろう痕跡もみられた。


それをゴミのように無造作に投げ捨てたのである。


もう思い入れとか無いんだな。


[因子付与]による人格の変化がこんなところにも影響するとは。


それにしても、物足りないってなに?



「もっと良い武器は・・・」



リオはキョロキョロと周りも見回しだす。


え、大丈夫なのか?


どんどんグリーンモンキッキの群れが近づいてきて、もうけっこう近い距離にいるのだが・・・・



「あら、ここにちょうど良い大きさの剣が」



リオのお眼鏡にかなう武器が見つかったようだ。


手にしたのは、召使いが使っていた大剣。


大人である召使いの背丈と同じくらいの大きさであったので、リオからすれば自分の身長よりも大きな武器だ。


それを彼女は軽々と片手で持ち上げていた。


驚いた。


なんて腕力なんだろうか。


俺なんか地龍怪人になって、やっと持てるくらいの重量だというのに。


元のリオもそれほど力が無かったはずだ。


これは金獅子の因子によって、腕力がかなり底上げされているのだろう。


ということは、[怪人化]と[怪物化]の状態はは今以上になるということか。



「うおらああああああ!! 」



リオは大剣を両手で持ち直すと、雄叫びを上げながらグリーンモンキッキの群れ目掛けて走り出す。


群れと激突する際に、彼女は大剣を豪快に振り回した。


達が次々と真っ二つにされていく。


一振りで十体ほどのグリーンモンキッキの体を切り裂いていた。



「オーッホッホッホ! 気分が大変よろしいですわ! 」



リオの勢いは止まらず、大剣を振り回し、どんどんグリーンモンキッキの死体の山を築いてゆく。


グリーンモンキッキ達は成す術がないように見えた。


だが、一体のグリーンモンキッキがリオの大剣を躱して、彼女に目掛けて飛び掛かる。



「まあ、無遠慮! 離れてくださいましー! 」



かつてのリオは、大剣から右手だけを離す。


その右手の拳が握りしめられ、恐らくは殴り飛ばすつもりなのだろう。


だが、ただ殴り飛ばすだけではないようだ。


彼女の握った拳は金色のオーラを纏っていた。


どういう効果を持つというのか?


そう思っている間に、拳は打ち込まれる。



「ギキッ! 」



拳はグリーンモンキッキの腹に命中。


瞬間、そのグリーンモンキッキは爆発した。


爆発といえば、赤い炎と黒い煙が発生するのが普通と言えるだろうか。


今の爆発は、その普通に当てはまらなかった。


瞬間的に燃え上がる炎も舞い上がる煙も金色をしていた。


そして、威力も相当のものであった。


グリーンモンキッキはバラバラになり、肉片や骨の欠片が周囲に飛び散っていた。


何故、爆発した?


と思ったが、今はそれよりもリオの安否だ。


こんな高い威力の爆発では、リオも無事では済まないはず。


と、彼女の無事を心配したが、



「見事にバラッバラッになりましたわね! 景気がよろしいことで! 」



平気のようだ。


ピンピンしており、爆発した右手も傷ひとつないようだ。


服にも爆発の焦げ跡は見られない。



「思ったよりしぶといですのね! 少々、火力を上げていきますわよー! 」



リオは両手で大剣を持ち直す。


先ほどは彼女の右の拳が金色のオーラを纏っていたが、今度は大剣の刀身に金色のオーラが発生した。



「どっせえええええええい! 」



上から下へと金色の一線が振り下ろされる。


リオは大剣を地面に叩きつけたのだ。


すると、金色の爆発が発生した。


今度の爆発は一際大きく、十体いや二十体以上のグリーンモンキッキが吹き飛んていった。


それだけではなく、大剣が叩きつけられた地面は大きく抉れ、隕石が落下したかのようなクレーターが出来上がっていた。


凄まじい威力である。


それはそうと、金色の爆発だがリオが自分の意思で発生させているものに違いない。



「ワタシの豪華絢爛な金色の爆破! ご照覧あれええええええ! 」



とか言ってるし間違いない。


そんな効果のスキルをリオが持っているということだろうか?


ということで、あいつのスキルウィンドウオープン!



――――――――――――――――――――――――

金獅子怪人


アクティブスキル

●[怪物化] 

●[怪人化]

●[スラッシュ]

●[飛剣]

●[乱撃]

●[雷鳴斬]

●[一刀両断撃]

●[エクスプロージョン]

★[黄金剣 超絶爆撃斬]


パッシブスキル

●[剣術 中級]

●[腕力増幅 初級]

●[防御増幅 初級]

●[鉄胃袋]

◆[金獅子のオーラ]

――――――――――――――――――――――――



うーん、どれだろう?


というか、名前のところが金獅子怪人になってる。


まだ新しい名前は付けていないのだが?


[因子付与]をすると、俺が名付けをする前は○○怪人となる法則があるというのか。


まあ、今はいいや。


金色の爆発を発生させるスキルは・・・これか?



――――――――――――――――――――――――

◆[金獅子のオーラ]

詳細:

体や所持している武器に金色のオーラを纏わせる。

金色のオーラを纏った状態で攻撃を行うと爆破を起こす。


――――――――――――――――――――――――



ああ、これか。


どうやら[金獅子のオーラ]というスキルによるものらしい。


その[金獅子のオーラ]による爆発もかなりの威力がある。


爆発に巻き込まれたグリーンモンキッキ達は例外なくバラバラに吹き飛んでいる。


並みの素材では、この爆破の威力には耐えらずに砕け散ることだろう。


さらに彼女の素の腕力も高いときた。


攻撃力というか破壊力は俺達の中で現状のトップは彼女になるだろう。


それはそうとリオの新しい名前だが、たった今相応しいものが思いついた。



「こいつの名前はデストロイヤーだ」



新しく部下となった金獅子怪人の名はデストロイヤー。



「オーホッホッホ! 皆殺しですわー!」



上機嫌に大剣を振り回し、ボコボコと周囲を爆破する彼女を見ながら、俺はそう呟いたのだった。


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