第4話 護衛依頼

 

 雑兵斡旋所の男が勧めてきたのは護衛依頼だった。


とある王都の貴族の引っ越しをらしく、護衛の欲しいとのことだ。


依頼主が貴族の関係者というのもあって、提示された報酬は雑兵にしては破格の値段であった。


特に断る理由もなかったので、俺はこの依頼を受けることにした。


だが、少し気がかりなことがある。


それは貴族のようなお高い存在の護衛の話がこのジャンクフィールドにまで来たことである。


お抱えの騎士の騎士はいるだろうし、王都には傭兵と呼ばれる俺達のような雑兵よりは実力のある雇われの戦士がいるはずなのだ。


わざわざジャンクフィールドの小汚い雑兵を護衛する理由はないはずだ。


何か裏がありそうな気がする。


いや、考えすぎなのかもしれない。


案外単純な話で騎士が足りず、傭兵を雇う金が無かったのかもしれない。


王都から別の地域に引っ越すのだから、恐らくは左遷だろうしあり得る話である。


結局は依頼主の事情なんて知ったことではない。


さっさと、終わらせて大量の金をいただくだけだ。





 依頼を受けた三日後、護衛依頼は開始された。


始まりは王都の門前。


そこからジャンクフィールド周辺地域を抜けた先にあるシガフという町まで護衛をする。


シガフは王国の最東部の領地にある町で、ジャンクフィールドよりかは栄えたところにあるだろう。


到達には三日を予定しており、途中途中で休憩しがてら向かうとのこと。


長期の依頼は初めてで、三日という時間がやけに長く感じる。


因子集めのために魔物と戦いたいと日頃思っているが、この依頼中は出ないこと祈る。



「・・・にしても、馬車の数スゲー」



護衛依頼一日目の昼前頃。


俺はぼんやりと歩きながら、そんなことを呟いていた。


前方にはズラッと縦に並んだ幌馬車の列が見えていた。


俺がいるのは最後尾なので、先頭の馬車はけっこう先にある。


馬車の横を歩く護衛の数も思っていたよりも多く、一台の馬車につき四人はいるので大所帯と言える。



「はは、貧民が貧民みてーなことを言ってやがるぜ」



嫌味な声が耳に入ってきた。


まさか俺のことじゃないだろうな。


と思ったがやはり俺のことのようであった。


そいつは俺とあまり変わらない装備を身に着けた男性であった。


だが、俺はと違って雑兵ではなく傭兵で俺と同じく雇われたのだろう。


傭兵という連中は、ジャンクフィールド以外の場所を活動拠点とする雇われの戦士のことだ。


雑兵とやることは変わらないなしいが、傭兵達を管理する傭兵ギルドなる組織がしっかりしているらしい。


傭兵ギルドの保証もあってか、傭兵達は俺達ジャンクフィールドの雑兵連中より質のいい仕事にありつけるそうだ。


言ってしまえば、格上の存在である。


だが、俺もこの連中には引けを取らない。


素の俺の状態で戦った場合の勝敗は五分五分だろうか。



「ひひひ、バカ丸出しだぜ」


「雑兵風情がよぉ」



周囲を見渡せばやつの仲間だろうか。他の似たような見た目の連中も俺を見て笑っている。


正直に言えば地龍に[怪物化]して全員分からせてやりたいところだがやめておこう。



「へへっ! 」



あと二日とちょっと共にするのだ。


余計ないざこざが起きないよう適当に愛想笑いをするのが一番である。


ちなみに護衛は数人が貴族お抱えの騎士で、大半が傭兵。


そして、傭兵より少ない数で俺達雑兵がいた。


俺以外にも雑兵が雇われていたことに驚いた。


見知った顔もちらほらと見えるが交友があるわけではないので、依頼中に声をかけることもかけられることもないだろう


あーあ、早く終わんねぇかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る