第3話 ジャンクフィールド

 

 ジャンクフィールド。


このレオニルア王国の町のひとつ。


まともな職に就けない者が集う貧しい町と言われるが実際には違った。


たしかに、町には家がなく宿にすら泊まれない者が地面に麻布を敷き寝転がっている姿がちらほらと見受けられる。


だが、家を持ちそこそこの生活を送る者もいる。


つまり、全員が貧しいわけではない。


貧しい者が多い中、ちゃんとそれなりに成功している者もいるのだ。


その成功者の最もたるのが商人で、だいたいが雑兵だ。


雑兵とは雑兵斡旋所で依頼を受け、その依頼を達成することで報酬として金を得る職業のこと。


依頼の内容は大半が魔物討伐で、討伐そのものが目的の依頼もあれば、魔物の素材が要求される場合もある。


つまり、なにかの技術がなくても魔物と戦えさえすれば稼ぐことが出来る職業だ。


ひとまずの俺の目標である悪の組織の立ち上げには、金が必要になることから俺は雑兵になって金を稼ぐことにした。


そして、あわよくば優秀そうなやつがいれば、部下にするつもりである。


俺好みに強化を施してな、フフフ。





 ジャンクフィールドに来て五年。


俺は十歳になっていた。


かつて来ていた貴族御用達の服は着ることができなくなり、今はその辺の雑兵と同じような地味な服装だ。


皮製の胸当てと小手を身に着け、ある程度は身を守れるような装備も身に着けている。


歳を取ったということで顔つきも少し変わっている。


前より少しイケメンになった。


本当か? あ、本当だ!


そんなこんなで今日も朝から依頼を受けに雑兵斡旋所へと足を運ぶ。


ちなみに、それなりに稼いでいるので宿住まいであり、宿からの出勤である。



「おい、黒鉤爪様のご登場だぜ」



斡旋所に入った途端、中にいた一人の雑兵の声が耳に入る。


他にも雑兵達がおり、そいつらも俺に目を向けてくる。


正直気持ちのいいものではない。


ここに来てから俺はちょっとした有名人になっていた。


俺の黒髪がこの辺では珍しいことと、俺の得物である鉤爪からどうやら黒鉤爪と呼ばれているらしい。


まあ、そんなことはどうでもいいか。


さっさと依頼を受けるとしよう。



「待てよ、サタトロン」



受付に向かう途中、俺よ呼び止める声が聞こえてきた。


振り返るとそこには、禿頭で屈強な男が立っていた。



「ヘッドスキン」



俺はその男の名を口にした。


この男は、ヘッドスキンという名で俺と同じ雑兵をやっている。


身長は2メートルを超える巨漢で、その身に違わず確かな実力を持つ。


ここの雑兵の中では上位の実力者だ。


こいつが俺に話しかけてきたわけだが、親密な仲というわけではない。



「そろそろ考え直してくれたか? 」



ニヤニヤと頬を吊り上げながるヘッドスキン。



「何を? 」


「はぐらかすなよ。オレの部下になる話さ」


「何度も言っているだろ。入らない」



事あるごとにヘッドスキンは俺を勧誘してくる。


俺は世界を征服しうる組織を立ちあげる男だ。


こんな男の下になるつもりは毛頭ない。


それとこいつには、悪い噂がつきまとう。


なんでも盗賊まがいのことをしているらしく、窃盗、強盗、あげくには新しい武器の試し切りとかでそのへんにいた人を切り殺したことがあるそうな。


あくまで噂の話だが、それが本当だとしても驚くことがないほど、こいつの印象は悪い。



「けっ! お高くとまりたがって。お前の実力を買ってやってんのによぉ。後悔したって知らねぇぞ」


「もういいだろ。どっかいけ」



そう言って邪見にしてやると、舌打ちをして斡旋所の出口に向かっていた。


今日はやけに素直である。


いつもはここからさらに長く付きまとわれるのだが。



「あ、部下になんねぇならよ。せいぜい目立たず生きろや。ここでの最強はオレだかんな」



ヘッドスキンはそんな捨て台詞を吐いて斡旋所を出て行った。


ったく、あのハゲがよぉ。


あんなやつに付きまとわれるとは、家を追放された次に最悪なことなのかもしれない。





 「よう、サタトロン。来て災難だったな。で、なんの依頼を受ける? 」



気を取り直して受付に向かうと斡旋所の男が対応してきた。


酒瓶を手にしており、時折グビグビと酒を口に流し込んでいる。


酒を飲みながら仕事をする様と口から漂う酒と口臭の交じり合った臭気は、ここがアングラな環境であることを嫌ほど思い知らされる。



「珍しい魔物の討伐依頼は来てないか? 強い魔物でもいい」


「へへっ、またそれか! 」



俺の返事に斡旋所の男は笑う。


男がまたと言う通り、俺は珍しい魔物か強い魔物の討伐依頼を率先して受けている。


その理由は報酬の高さもあるが、一番の理由は因子集めだ。


因子が多ければ多いほど、質の良ければ良いほど俺は強くなるし、これから作るつもりの組織も強くなる。


資金調達と並行して優先すべきことなのだ。


だから、日々まだ見ぬ魔物と強い魔物を求めてここに足を運んでいるというわけだ。



「相変わらず他の連中とはやる気が違うねぇ。そんなに名を挙げてぇのか? いやー若いねぇ」


「やめてくれ、有名になりたいわけではないんだ。で、あるのか? 」


「いや、あんたのお眼鏡にかなう依頼は来てねぇな。強い魔物といやぁ・・・せいぜいベアウルフくらか」



どうやら俺がまだ戦っていない魔物の討伐依頼は無いようだ。


仕方がないので、今日はベアウルフの討伐依頼でも受けることにしよう。


こいつはこの辺では最強各の魔物で、最初は苦戦したが今は余裕で勝てる相手なので楽な仕事だ。



「ま、ベアウルフの討伐でもいいんだが、あんたのような実力者を遊ばせるのも忍びねぇ。どうだ? 」


「どうだ? ってなんの話だ? 」



斡旋所の男には、何やら俺に持ち掛けたいことがあるらしい。



「他に羽振りのいい依頼があんだよ。ただ、強ぇやつしか認めねぇってんで条件が厳しくてな」


「なるほど。あんた達にも何か得することがある依頼ってわけか」



雑兵斡旋所はその施設だけで運営が成立するわけではない。


魔物の討伐や素材が欲しい者がいて成立する。


雑兵は依頼を達成することで、依頼者から支払われた金を受け取ることで儲ける。


だが、まるごと貰えるわけではない。


斡旋所の者がそこから仲裁量として何割か自分の収入として引いているのだ。


それが斡旋所の儲け。


つまりは、羽振りの良い仕事が多ければ多いほど、斡旋所も儲かるということだ。


今回は、依頼の達成したときに斡旋所側にも金以外の何か得するような報酬が約束されているといったところだろう。



「まあ、そんなところよ。な? 今回のあんたの報酬は弾むし、これからも多少は優遇してやるぜ? 」



そして、依頼を達成しなければ元も子もないので俺に対して下手に出てくる。


多少は優遇してやるとか言っているがかなり優遇してもらいたいところだ。


というかウソでもそう言っておけよ


さて、今ある依頼でマシな依頼のベアウルフ討伐だが、ベアウルフはすでに狩った魔物だし、金が多く貰えるにこしたことはない。



「依頼の内容を聞こう。悪いがそれ次第で受けない可能性もあるからな」



とりあえず、依頼の内容を聞くことにした。

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