第5話 『 LOVE YOU!』
5.
" 波紋 Ripple 5 "
翌日、泰之さんが午後から仕事に出掛けた後、母親から
電話があった。
私は枕元に置いてあるスマホを手に取った。
「香ちゃん、どうだった? 今はどう?」
私は昨日先生から説明を受けた通りのことを母に伝え、
調子がよくないことを伝えた。
母も週に2回ほど様子を見に来てくれるけれど、毎日はキツイので
ヘルパーさんの手配をしてくれると言う。
食事や洗濯物などしなくていい方向で、私の生活の基盤を調整してくれた。
「ヘルパーさんが来てくれるまで、私が毎日は無理だけど
行けるだけ行ってあげるから心配しなくていいわよ」
「ありがと、助かります」
「泰之さんのスケジュールが分かる時は教えて・・。
なるべく時間帯を外すから、ね?」
「うんっ、分かった」
「今日はちょっと遅くなるけど、今から行くわ。
何もしないで寝てていいからね」
「うん・・・」
有難かった。
トイレに行くくらいはできたけれど、やはり調理するほどには
身体がもたないくらい、気怠さが取れずにいたから。
早く自分のことだけでもできるようになりたいと、そぼ降る窓越しの雨をベッドから見ていた私は、強く願った。
私はどうなっていくのだろう。
病気のこともそうだけど、何故か夫の言動に一抹の不安を感じるのだ。
いやいやいや、嫌な顔ひとつせずに、食事の準備だって自分でやって
くれて、病気なのに甘えてんじゃない、家事をしろっ、なんてことも
言われてないのだから、きっと私の甘えなんだ、とそう思いもするのだが。
ただ、彼は自分でちゃんと作って食べて行ってくれはするけれど
私への食事はテーブルのどこにも置かれてなかった。
こんな風に不平不満を感じるのは、私の甘えなのだろうか。
降り続ける雨音は、何も答えてはくれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます