第4話 『 LOVE YOU!』
4.
" 波紋 Ripple 4 "
不安を抱えながら1週間後に検査結果を受け取りに
再度病院へ向かった。
慣れるっていうのも変なんだけれども、怠さの伴う身体ながらも
少しは上手く付き合えるようになっていて、今回の病院行きは何とか
自分で運転して行くことができた。
でもホントのことを言えば、やはり夫に付き添ってもらいたかった。
けれど、意外にも? 夫は私の病院行きのことには一切触れて
こなかった。
だから、言い出せなかったのだ。
世の夫たちってこんなもんなの?
もし立場が逆だったなら私は心配で、きっと夫を車に乗せて
病院へ付き添ったろうにと思う。
そう思うと少し、悲しかった。
帰りは車の中でシートを倒し、30分ほど休んでから帰った。
やはり外出は疲れたみたいで、私はすぐに布団に入り横になった
のだった。
22時頃に帰宅した夫は私の気分とは裏腹に、今宵もご機嫌さんだった。
泰之さんは、あれから病院行きのことを何も聞いてこないけれど、
今日が病院の日だってこと知ってたンだろうか。
そんなこと考えていたら、部屋のドアが開いた。
4-2.
「ただいま・・」
「お帰りなさい」
「検査の結果どうだった?」
泰之さんはちゃんと覚えてたんだ、そっか。
「難病だって」
私の説明を聞いた泰之さんの顔。
今まで一度も見たことのないような微妙な表情をしている。
そんな彼は、微笑んだ表情を無理やり作るかのように口角を
上げ・・・たような表情を貼り付けて、囁くような声音で
私に言った。
「そっか、そのぉ・・無理しない生活をして養生するしかないな。
俺のことは気にしないでこれからゆっくりと自分のペースで
生活するといいよ」
「ありがと、ごめんね」
「あぁ、それと今日から俺、隣の部屋に移るわ。
香りのストレスになるといけないし。おやすみ」
「おやすみな・・さい」
言えなかった、自分の思いを。
病気の時ほど、何でも手伝ってくれる人が必要なのよって。
隣の部屋に行っちゃったら、大声でも出さないと用事も頼めや
しないじゃない。
その日から夫は自分のことは何でもしてくれて、私の手を煩わすことは
なかったのよ、確かに。
だけど、一方で私のことを手助けすることもなかった。
困ったことがないかを、聞いてくれることも。
私は寝室に置き去られた眠り姫のような存在になってしまった。
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