第二話 ドコ?

「マジでここどこなんすか?」


イケメンは、半ば呆れたような、信じられないような顔をしてため息を吐いた後、ポツポツと説明を始めた。


どうもここは“ダンジョン”なる謎の建物であり、21年前にアメリカのニューヨークで初めて確認されて以降、世界各地に発生したものらしい。


「何喋ってんの? ダンジョン??? ここが??」


「てか何でダンジョンっていうの? ここでラップバトルでもする訳?」


「材質は? いきなり現れて元の場所の住人はどうなったの? 」


「というか昔から有名なら俺も知ってるはずでしょう。 どこの世界の話してるんですか?」


まあ突っ込みどころしかない。


「……俺とは違う世界の住人、か」


「ちょっと待って下さいよ、何一人で結論出してんすか?」


ツッコミどころを加速させながらイケメンは一人喋り続ける。


「最初は“擬態型”かと思っていたが……まさか転生者か。」


「ちょっと! 何ですか藪から棒にギタイだの転生だの!」


「転生者なら生捕りにする必要があるな……。」


「聞けよ!! 何なんだよ転生転生って! 仏教の話してんのか!? えぇ!?」


「“上”にも知らせる必要もある、早急に対応しなければ…!」


「おい!!! 説明しろって全部!! 頭刈り上げるぞ!!!!」


————


「このダンジョンは、日本の首都に位置する。」


「やっと説明してくれた……。首都って?渋谷とかすか?」


「詳しい場所は言えない。また来られたら困る。」


「そんなに来ちゃダメな場所?」


「ああ、そもそも公には事になってるからな。」


「は?」


イケメンは今度も、よくわからない説明を続けた。


「世界初のダンジョンは21年前に現れた。ここまではわかるな?」


「まあ、はい。」


「このダンジョンが現れたのは27年前だ」


「???????」


は? 明らかに矛盾してるな? 


「ざっくり言えばここは東京の地下。変な場所に変なモンできたからパニックを避けるために隠蔽したんだよ。」


「ここが? すぐバレるでしょ、ありえない」


「それがあり得るのがこの国なんだよな。アニメと技術と隠蔽なら世界一。27年経った今でも都市伝説にすらなりゃしない。」


「嘘ォ……」


「だからこそお前がいることがおかしいんだよ。国家機密レベルの隠しダンジョンに、一般人が紛れ込んでることがな。」


「……で、俺はどうすりゃいいんですか?」


「まずはここを出る。ダンジョンにも程度の差がある。ここは危険とか、あそこはそうでも無いとか。」


「ここは?」


「砕けた言い方をするなら、“超危険”だ。」


「じゃあ今すぐ出なきゃ死ぬってことすか! その出口はどこにあるんすか?」


「出口は無い。緊急用脱出ゲートを用いる。」


「すげ〜そんな便利な道具あるんだ。早速使っちゃいましょう——


俺が『よ』といい終わる瞬間、イケメンはそのゲートとやらを使った。

何やら神々しい、白く眩く光る完璧な円が、これまた神々しい、轟音というには品があり過ぎる大きな音を立てながら俺たちを包み込む。


円は360度回転し、次第に球体へと変貌する。


ああ、これで俺たちを地上に転送するんだ。

そう思った刹那、




円はイケメンだけを転送した。




俺を、置いて。



「………」


何かの不調だ、きっと緊急用だからろくに整備もされてないんだ、だから直ぐにイケメンは帰ってくる……!


「……………」


期待と不安を込めじっと待ったが……待っても来ない。いくら待っても。


置いてかれたのか、俺は。



「……………………ふざけんな若白髪ァァァァァァアアアアアァァァァア!!!!!!!!!!」



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