第29話
今この部屋にはあるはずの無い2つ目のベットがあり、俺の左隣には片山さんが眠っている。
「なんでこうなるんだ...」
いやまあこうなった経緯は分かるけど、なんでこれでみんなが納得するんだよ!俺と女子の組み合わせは危ないから全員この部屋で寝ればいいとティアさんが提案してそれにみんな納得してもう1つの部屋からベットを持ってくることになった。寝る位置はくじで決めていた。てか俺の事どういう風に思ってるんだよ。
ちなみにもうひとつの部屋は荷物置き場になっている。使い方が贅沢すぎるんだが...。
「もういいや俺も寝よ」
そう言って布団に入って目をつむる。
しばらくして眠りに落ちるか落ちないかぐらいの時に左腕に何か柔らかいものの感触がしたので左に顔を向けると、
「──!?」
片山さんの顔がほぼ目の前にあり俺の左腕に抱きついていた。
「あっぶねぇ大声出してみんな起こすところだったぜ」
どうしよう...このままだと何かとは言わないが左腕に押し付けられているもののせいで寝れる気がまったくしない!ありがとうございます!
とりあえず片山さんを起こさないように左腕を離脱させるか。
そう思いそっと手を抜こうとすると片山さんが逃げようとしている俺の左腕をガッチリとホールドしてきた。
「え?嘘だろ?」
その後も揺さぶったりして抜こうとするが何故か手を抜くことが出来なかった。さらに片山さんがガッチリとホールドしたことにより左腕に押し付けられているものがさらに押し付けられてさっきよりも感触が分かりやすくなってしまっていた。
「さっきよりも状況が
さっきからすごく感謝の気持ちが出てくるのはなんでだろう?まあとりあえず今の状況を堪n...じゃなくて解決しないと寝ることが出来ない。
言っておくけど断じてこのままの方がいいとは思ってないからな!
○○○○○○○○○○
「おはようございます空上さん」
「おはよう...」
「あまり寝れてないのですか?」
「えーとまあそうだけどベットが合わなかっただけだから」
「じゃあ今日良い睡眠のためにベットを買いに行きましょう!」
「いや宿にマイベット持ち込むのはおかしいだろあと今日はエミリアのギルドカードを作るのと初依頼を受けるらしいからな。買う時間なんて無いと思うぞ」
「確かにそうですね。じゃあ私着替えてきます」
と言って片山さんは荷物置き場にしている部屋に行った。
「とりあえずティアさんは先に起きて居ないみたいなのでこのお寝坊王女様を起こさないとな。どうせなら片山さんに連れて行って貰えばよかった」
おーい起きろと言いながらエミリアの体を揺するが起きる気配が全くしない。それから数分間色々試したが起きることは無かった。
「なんで起きないんだよ!っていうか光魔法で起こすのを妨害して来る時点で起きてるだろ」
なんと光魔法で目くらまし的なことをして起こすのを妨害してくるのだ。目はちゃんと守ったからどこぞの大佐みたいにはならなかったぜ!
「あれ?空上さんまだ着替えてない?」
「こいつがなかなか起きないんでね!」
「私が起こしておくので空上さんは着替えてきてください」
「分かった。けど気をつけろよこいつ光魔法で目くらまししてくるからな」
「はい大丈夫です」
少し心配しつつも隣の部屋に向かう。
「まあエミリアも失明させる威力は出さないだろうし大丈夫か」
着替えて片山さん達がいる部屋に戻るとエミリアがちゃんと起きていた。
「ど、どうやって起こしたんだ?」
「こちょこちょです」
「はい?」
「だからこちょこちょです」
「まじか」
「私はまだ眠っていたかったのにー」
「王女様やってた時は早起きしないといけないんじゃないのか?」
「あそこに閉じ込められてから早起きしなくて良くなったから早起きできなくなっちゃった」
「まあいいやこれから早起きできるようにしてもらえばいいし」
「そうですね。とりあえず着替えて来てください」
気の抜けた返事をしながら隣の部屋に行った。
「エミリアが着替え終わったら適当に朝ご飯食ってギルドに行くか。多分ティアさんもそこにいると思うし」
「──そうですね」
○○○○○○○○○○
「やっぱりここに居たか」
「私の職場なんだから当たり前でしょ。それにどこのギルドも大体仕事内容同じだから初日から普通に働けるわよ」
「そういうもんなのか」
「そういうもなの。そんなことよりこれよ」
「エミリアのギルドカードか」
「私のギルドカードですか!」
「そうよ。このためにわざわざ早くここに来て作ったのよ」
「ありがとうございますティア様」
もしかしてティアさんってめちゃくちゃ有能なのか?馬車動かせたり宿を取ってくれたり他にも色々できそうだし。
「あとは依頼を受けてランクをあげるだけ。早速依頼受けてみたら?空上くんもエミリアがどれくらい戦えるか見た方がいいわよ」
「確かにそうだな。そういえばエミリアって武器は何を使うんだ?」
「私は魔法で攻撃するので特に必要ないかと」
「わかった。じゃあティアさんと一緒に依頼を決めてきて」
「わっかりましたー」
なんともふざけた返事だな...。
そう思いながら片山さんと邪魔にならないところに移動する。
「まあこれでエミリアがパーティーに入ってくれれば色々な依頼が受けられるようになるな」
「空上さん」
「ん?なんだ?」
「王女様のことは名前で呼んでいるんですね」
「まあ名前で呼んでほしいって言われたからな」
「私の事さん付けで呼んでいますよね」
「そうだけど」
「もう結構一緒に居るのにおかしいと思います!」
確かにさん付けだとちょっと堅苦しいし変えた方がいいな。
「な、名前で...呼んでください!」
な、名前!?名前か。エミリアの時はなんか普通に呼べるようになったけど、片山さんとなるとなんか恥ずかしいな。
「か、香織...」
「──っ///」
呼ばれた方も恥ずかしくなってどうするんだよ...俺の恥ずかしさも増えちゃうだろ。
「は、恥ずかしがられるとこっちも恥ずかしくなる...」
「ご、ごめん!いきなり呼び捨てだとは思わなかったから...」
「え、えーと...ちょっと恥ずかしので慣れるまで香織さんにさせてください」
「──慣れたらちゃんと名前で呼んでくださいね!翔くん!」
そう言って逃げるように依頼を選んでいるエミリアの方へ行ってしまった。
「あれ?最後俺の名前言っていたな」
なんかまた恥ずかしくなってきた...。まさか名前だけでこんな羞恥心を味わうとは...
── 一方その頃ティアとエミリアは...
「ここの依頼で魔物の討伐系のやつはエミリーのひとつ上のランクしかないわね。まあ空上くんも居るしふたつ上のランクの依頼でも問題ないと思うからそれでいい?」
「大丈夫ですよ〜Dランクなんてボコボコにしてやりますよ」
「あまり油断しないようにね」
「じゃあ依頼が決まったので2人に報告してきます!」
「あ、ちょっと待ってエミリー」
そう言って2人の元へ向かおうとするエミリアを止める。
「?」
「あの二人の雰囲気をよく見て見なさい」
そう言われ2人をよく見て見るエミリア。
「え?──なんかすごくいい雰囲気」
「あそこに突撃なんかできる?」
「えーと、まあ無理ですね...。っていうかあの二人って付き合ってるんですか?」
「あれで付き合って無いそうよ」
「え!?ホントニ?」
「本当よ...。これから一緒に冒険するのだからあれを見せられる覚悟をした方がいいわ」
「焦れったくなったら私が奪ってやります」
「やめなさいよね...って香織ちゃんがこっちに来たわよ」
「え!?」
「2人とも依頼は決まりましたか?」
「ちょうど決まったところよ」
「ソ、ソウ。イマキマッタトコロ...」
「どうして片言なのですか?」
「い、いや別に...それより決まったから早く行こう」
「そうですね。ではティアさん行ってきます」
「気を付けなさいよ」
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