第23話

「今日でこの街ともお別れだな」

「何年もいた訳ではないのに寂しいです」

「私は何年もいたけどね」

「でしょうね!まあとりあえず馬車を用意してくれたギルマスに感謝しないとな」

「ちゃんといいやつを選んでおいたんだから。じゃあ行くわよ」


ティアさんがそう言うと馬車が動き出した,

片山さんの訓練を再開した日から6日経ち出発日になった。6日間出会った出来事と言えば...

特にないな!まあ普通に朝からギルド行って依頼を受けて訓練したり買い物したりだったしな。

ちなみに馬車には少しだけ荷物が積んである。

ストレージがあったとしても手ぶらで旅してるなんて誰がどう見ても不自然すぎるからな。


「ティアさん。今日でどれくらい進むんだ?」

「うーんそうね...王都は越えられると思うけど?」


さすが馬車だな歩きで2日かかった距離を進めるとは。文明に感謝だな!


「でもティアさんが馬車を操れるなんて思ってなかったな」

「そうですね。私も知りませんでした」

「空上くん。あなた私の事鑑定してなかったの?」

「そういえばしてないな。物とかにはたくさん鑑定してるんだけど、人とかにはあまりしてない」

「空上くんの事だからてっきり色んな人にしてるのかと」

「俺の事どんな風に見てるんですか...」


ちょっと人に鑑定するのは抵抗あるんだよな。なんかプライベートを覗いてる感じがして...

敵対してきた奴には躊躇なくするけどな!


「言いたいのは私のスキルに馬術があるってことよ」

「馬術スキルはどこで習得するんですか?」

「香織ちゃん気になる?」

「はい!気になります」

「馬術スキルは練習すれば誰でも習得できるわ。まあ私はそういうのを習う学校に通ったことがあるからね」

「片山さん馬術スキルが欲しいのか?」

「誰でも習得できるのなら欲しいです。スキルがひとつもないので...」


スキルがひとつもないのも考えものだな。片山さん的にはできることをひとつでも増やしたいのだろうな。


「私が教えてあげるわ。馬車を動かせるのが1人だけだと心許ないしね」

「ありがとうございます!ティアさん!」

「だけど教えるのは明後日になりそうね」

「え?どうしてだ?別に明日からでもいいんじゃないか?」


俺がそう言うとティアさんはあきれた顔した。


「あんたバカじゃないの?だって今日王都を越えられるのよ。そしたら今日の夜王都に騒ぎを起こしに行くんでしょ?」

「あ、そういえばそうだったわ」

「何で忘れてるんですか空上さん...」

「そして明日の朝は早めに王都を離れた方がいいでしょ?そんなことしてたら教える時間なんてないのよ」

「あ〜確かに」


そしたら馬術なんて教えてる暇なんてないな。

っていうかギルマスに頼まれたことガチで忘れてた...


「空上さん」

「ん?どうした?」

「今日の夜クラスメイトの様子も見に行くんですよね?」

「一応そのつもりだが、まあ予期せぬ事が起こったら見に行かないけど」

「それはそうです安全第一です!ってそうじゃなくて、私が無事でいることを伝えて欲しい人がいるんです」




○○○○○○○○○○




「あれからもう3週間ぐらい経っちゃたのか...

香織ちゃんは今どこで何をしてるんだろう。無事でいて欲しいな...」


部屋の中でそんな一人言を言う。すると部屋の扉がノックされ、開いて人が一人入ってきた。


「静香?入るよ?」

「もう入ってる」

「たしかに入ってるね。ってまた香織のこと考えていたの?確かに心配だけどさ、今は私達何もできないんだから強くなって探しにいこ?だからそのためにも訓練しないと」


私を励ますために言ってくれたのだと思うけれど、やっぱり1番の友達を助けてやれなかった後悔がどうしても勝ってしまう。最近は食べる量も減ってきたし訓練にもあまり参加しなくなってしまった。時々佐藤亜弓さとうあゆみが来て訓練に誘ってくれる。


「わかった今日は行く」

「じゃあ早く準備して始まっちゃうから。私先に外の訓練所に行ってるね」


そう言って佐藤亜弓は行ってしまった。

まあでも準備するものと言えばこの2本の短剣ぐらいだ。さっき朝食を食べてきたばかりなので服は着替えてはある。

2本の短剣を腰に装備して私も外の訓練所に向かった。


鶴見静香つるみしずかさん今日は来たのね。本当は毎日来て欲しいのだけれど」


訓練所に来ていきなり河野玲子こうのれいこに話しかけられた。河野さんはこのクラスの委員長だ。だからまあ私みたいな人も気にかけてくれる。


「すみません」

「別に謝ることじゃないから大丈夫。まあ無理しない範囲でいいから」


と言って河野さんは魔法の練習を始める。


「私もせっかく来たならやろっかな」


そして始めようとした瞬間将軍が降りてきて集合をかけた。今日の練習メニューが将軍から配られみんなそれぞれ練習を始めた。


「今日は静香入るのか。じゃあ玲子と静香はちょっとこっちに来てくれ」


適当にやって過ごそうかなと思っていたら将軍から呼び出しがかかった。


「お前たちは希少なうえ強力な氷結魔法持ちということは知ってるか?」

「はい知ってます」

「しらないです...」


知らなかった...氷結魔法って貴重なんだ。


「玲子は氷結魔法の上級ぐらいなら発動できるな」

「できます」

「最終的に魔法共鳴レゾナンス状態を発現させるのが目標だ」


魔法共鳴レゾナンス状態?なにそれ?河野さんも首をかしげているし...


「2人とも知らないようだな。習得条件は魔法スキルが最大レベルである事だ」

「私はもう少しで条件達成できます」


河野さんはもうそんなにレベルが上がってるの!?私は氷結魔法がレベル5...

この世界ではスキルのレベルをあげるのが1番大変だから全然足らない。


「それでその魔法共鳴レゾナンス状態とはなんですか?」

魔法共鳴レゾナンス状態とは魔法を使う時の魔力消費を抑えられたり、魔法の威力が上がったりする単純な強化だ。それを氷結魔法持ちに先に発現してもらいたい」


とりあえず魔法共鳴レゾナンス状態を発現して欲しい事はわかった。けどわざわざ氷結魔法だけに絞る必要は無い気がする...


「明日からは玲子と静香は特別訓練になるから訓練が始まった俺の所に来ること。特に静香はスキルレベルが低いから絶対に来るように」




○○○○○○○○○○




久しぶりに訓練に参加したらめんどくさい事になった...将軍の話を聞いたあと玲子に氷結魔法について一日中色々教えて貰ったりしたがあまり成長出来てない気がする。そもそも私にあまり学ぶ気がないのも原因だと思う。


「今日はなんか色々あったし早く寝よう」


部屋のベットに入り目を閉じて眠ろうとするが

眠ることが出来ない。


「なんか今日は全然眠れない外の空気でも吸って寝よ。そしたら眠れるかも」


着替えて部屋を出ようとした時2本の短剣が目に留まった。


「一応ね。一応持っていかないとね」


短剣を装備して廊下に出て中庭に降りるために階段に向かう。そしてしばらく歩いてると、


「中庭への階段ってこっちだっけ?城の中大きすぎて分からなくなってきた...」


あまり部屋から出ないから迷ってしまった。

こんなことにるなら外の空気吸いに行くんじゃなかった...


「せっかくならこの城を探検でもしてなんとか自分の部屋に戻ろ。ってあれ?」


窓が沢山ある通路を歩いていたが一つだけ窓が開いていた。


「閉め忘れたのかな?一応閉めておいた方がいいよね」


開いてる窓を閉めようと近づく。


「っ!?」


いきなり全身黒い服の人が開いてる窓から入ってきたのだ。

顔はフードを深く被っていてよく見えない。


「だ、誰?」


侵入者にそう聞くが返事が無い。一応短剣を構える。すると侵入者はどこからか片手剣を取り出した。


岩石弾丸ロックバレット

氷球アイスボール!」


撃ってきた魔法に自分の魔法当てて相殺する。

あれ?なんか聞いたことあるような声がしたような...


「!?」


いきなり目の前に侵入者が現れて攻撃される。ガードするが慌ててしたためバランスを崩され後ろに吹き飛ばされる。


「速い...ギリギリ攻撃が見えたけど、接近してきのは全然見えなかった...」


あの人めちゃくちゃ強い私じゃ勝てない...どうする?逃げて助けを求める?いや逃げてる最中に殺される。なにか助けを呼ぶ方法があれば...


「あまり抵抗しないでくれ。手荒な真似はしたくない」


うん?やっぱりこの声聞いた事あるような...

確か多分...


「空上さん?」

「え…もしかして、鶴見静香さん?」



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