第8話 グランドフィナーレ!!!!
「
「さすが我が恩人! 君の能力は本当に素晴らしいな!」
「エイリーン。いい加減その、我が恩人って呼び方やめないか? 俺がお前を助けたのって、もう1年も前のことだぞ」
「そうはいかないさ。エルフ族は受けた恩を決して忘れないんだ」
エイリーンがにこりと笑う。相変わらず義理堅い人……いや、エルフだった。
「え……エイタ様エイタ様っ! 見てください、これ! 私とエイリーンさんでこんなに耕しました! ど、どうでしょうかっ!」
「うん、えらいぞアイラ。よく出来てる」
「え……えへへっ! ありがとうございます!」
嬉しそうに笑う元奴隷少女……アイラの頭をエイタは撫でる。アイラは嬉しそうに頭を擦りつけてきた。
知り合った当初は感情表現が苦手だった彼女が、こんなにも楽しげにしている。その事実に嬉しくなったエイタは、少し強めにまたアイラを撫でた。アイラは気持ちよさそうに目を細める。
「エイタ、エイタ―っ! ちょっとこっち、こっち来て―ーっ!!」
「おっと。ごめんエイリーン、アイラ、行ってくるよ」
「構わないさ。鍬、ありがとう。助かったよ」
「はい! 引き続き、頑張って耕します!」
手を振るエイリーンとアイラに別れを告げて、エイタは声のした方に走った。
●
「なんだメアリ、どうかしたのか?」
「見れば分かるでしょ、もう! あそこのほら、でっかい蜘蛛! なんとかしてよ!」
「わわわわわたしは人造人間なので感情はああああありません。だだだだだから蜘蛛なんてこわわわわわわわ」
「……あのなぁ。山奥なんだからそりゃでっかい蜘蛛くらいいるだろ。2人とも、いい加減慣れろよ」
エイタはひょいと蜘蛛をつまみ上げ、茂みの方に放り投げて逃がしてやる。
「ちょっと、なに逃がしてるのよ! ぶちっとこう、殺しちゃいなさいよ!」
「やだよ、かわいそうだろ」
「そうですよメアリ。たとえちっぽけな虫であっても、その体には命が宿っているんですから」
「脅威が去ったとたんに落ち着くな。あと人造人間が命の大切さを説くな」
「ひどい……。人造人間差別だ……!」
わなわなと人造人間が体を震わせる。『感情がない』という主張を通すにはちょっと無理のある震え方だったが、エイタもメアリも特に指摘はしなかった。1年間一緒に暮らして、彼女に感情があることはすでに分かりきっていたからだ。。
「つーかエルザはどうしたんだよ。メアリお嬢様は自分が絶対に守る、っていつも言ってるのに」
「ああ、エルザなら蜘蛛を見た瞬間一目散に逃げていったわよ。あっちの方に」
「……まったく」
エイタはため息をついて、メアリが指さした方に向かった。
●
「うわああああん! ルチア様、聞いてください! 私はメアリ様を見捨てて逃げました! 騎士失格の最低な人間なんです!」
「大丈夫、そんなことはありません。あなたはとても立派に役目を果たしていますよ、エルザさん」
「ルチア、そいつ甘やかすのやめてくれ。蜘蛛にビビって逃げ出すのは、どう考えても本当に騎士失格だ」
エイタの言葉に、涙目の女騎士が顔を上げた。
「うぅ……ひどいですエイタさん。私はこんなに頑張っているのに……。くっ、殺さないで……」
「殺しはしないけどさ。……エルザさんも、初対面ではまともな人に見えたんだけどなぁ」
「うぅ~~……。そうなんです、私いっつも第一印象だけしっかりしてそうって言われるんです……。だからいっつも、へへ、できるだけ人と深く関わらないようにしてるんですよ」
「嫌な対人コミュニケーション事情だなぁ」
「だから、へへ。こんなにずっと一緒にいるのは、メアリ様以外だとエイタさんたちが初めてなんです。へへ、へへへ……」
「ああ……エルザさん。私はとても嬉しいです。あなたがこうして私たちに心を開いてくれた、そのことがとても嬉しいのです!」
「だから甘やかさないでくださいって」
へへ、へへ……。と笑うエルザと、その頭を優しく撫でる聖女ルチア。エイタは呆れたように首を振る。
そんなエイタの背後に、ふわりと音もなく人影が現われた。
「エイタ様」
「あれ、ベルベッド。どうしたんだ?」
「出発の時間です。そろそろ行きませんと」
「……ああ、もうそんな時間か。分かった、行くよ」
エイタはうなずいた。今日は山のふもとに、ちょっとした客人が来る予定になっているのだ。
6人に軽く声をかけたあと、エイタはベルベッドと連れだって山奥の家を出た。
●
「……それにしても。まさかこうもあっさりハーレムが完成するとは思いませんでした」
「あっさり……つっても1年間いろいろあったけどな」
本当にいろいろあったのだ。恩を返したいというエイリーン、行き場のないアイラと人造人間、国を追放されたというルチアの4人と連れだって、ベルベッドの用意した土地に向かったエイタ。しかしその土地は偶然起きた山火事で焼き尽くされていた。
そこで救いの手となったのがメアリだ。メアリの父親が偶然山奥に土地を持っていて、娘を助けてくれたお礼にとそれを差し出してきたのだ。エイタたちはありがたく好意を受け取り、その土地でスローライフを送ることにした。
食料なんてエイタの
「……しかし、やはり気になります。この1年間、『ざまぁ』らしきイベントは起きませんでした」
「だな。……まさかあのモデレーターってやつ、嘘ついてたのか?」
「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。作者は作中で嘘をつかない。あらゆる小説の基本です」
ぎょっとして振り返るエイタとベルベッド。そこに立っていたのは、1年前に見た人型生命体だった。
「……モデレーター。あんた、5億年ほど異空間で苦しむって言ってなかったか?」
「主観時間で5億年です。この世界の実時間に換算すると1年少々。本日ようやく懲役が終わりました」
「なんだそりゃ……」
「さて、エイタさん。あなたの疑問についてですが。ざまぁが発生しないのは当然です。読者の要望によって、ざまぁという概念自体がざまぁを受けたんですから」
「は? ……え? なんだそれ。アリかよそんなの」
「アリですよ。言ったでしょう、ざまぁには誰も逆らえないんです。ざまぁそれ自体ですら、ざまぁには逆らえない」
「……哲学じみた話ですが、つまるところ。もうこの世界に強制的なシステムによる『ざまぁ』は発生しないと考えていいんですね?」
「相変わらず物分かりがいいですね、ベルベッドさんは。その通りです。そしてざまぁが発生しない間に、エイタさんは見事ハーレムを作り上げた。タイトル回収完了です。つまりこれにて物語はジ・エンドというわけですね」
本来なら歓喜の声を上げるべきところだろうが、エイタとベルベッドはしばらく固まって動けなかった。
1年間求め続けたものが突然手に入ると、どうやら人は硬直してしまうものらしい。しかしそれでも、喜びはじわじわと2人の中にやってきた。
「そ……いいのかよそんなこと! あんた言ってただろ、この世界は小説だって。こんな唐突に物語が終わって、その小説とやらの読者は納得できんのかよ!」
「できないでしょうね。でもいいんですよ。『読者をざまぁしてほしい』という要望も来てましたから」
「……では! では本当に私たちは、これから唐突な『ざまぁ』に怯えることなく生きていいのですね!」
「そういうことです。おめでとう、グランドフィナーレだ!」
エイタとベルベッドは顔を見合わせ、
それぞれが喜びの歓声を上げ、
そして固く抱きしめ合って泣いた。
やれやれ、と首を振ったモデレーターはいつのまにかいなくなっていたが、それでも2人は抱き合ったままだった。
いつまでも、いつまでも。2人は泣きながら互いを固く抱きしめていた……。
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タイトルの回収を確認しました。
物語を終了します。今後、いただいたご要望は物語に反映されません。
エラーが発生しました。物語が終了できません。
原因を調査しています。
……………
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……………
……………
原因が確認できました。:未反映のご要望があります。
●今回反映したご要望
>その山が貴族の娘のパパの領地だったり…
>ざまぁと言う概念がざまぁされるとかって言うアホみたいな事起きる未来ってあります?
>読者をざまぁして欲しい
●未反映のご要望
・キーワード「マザァ」
ハーレム進捗率:[7/5名]
次回に続きます。
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