第5話 ざまぁの二度漬けは許可されています
「ビビビビビ プマナピドドト レピチパパルパ(『この星は我々のものだ、原住民め』と言っている)」
巨大な宇宙船の中で、パピポラ・ペペモビッチは不敵に笑った。
「えー……と、いろいろ聞きたいことがあるんだけど。まずあんた、宇宙人だったんだ」
「ビビビビビ ペブチドコイエボォズ ヌルハマキ(『当たり前だ。7つの目と139の鼻と3つの口と1つの耳。こんな美しい生物がお前の星にいるか?』と言っている)」
「ああ……。美しいかどうかはともかく、まあ確かにその通りだな。なぜか今まで一切違和感なかったけど」
「ビビビビビ ムルルルーガイヲ ジョグジマズ(『我が文明はお前たちよりはるかに進んでいる。洗脳光線によって、『ザ・レイダーズ』のメンバーは我の姿に違和感を覚えることが出来ないようにしていたのだ』と言っている)」
「な、え、すごすぎない? それ」
「ビビビビビ パサマハーテイハ タロジーバ(『洗脳光線だけではない。お前を宇宙船内にさらった強制転送装置、この船内でのみ使える絶対無敵バリア、四方八方から降り注ぐ殺人光線。この宇宙船にいる我が星の民は我だけだが、それでもお前に勝ち目はないぞ』と言っている)」
「く……っ」
歯噛みするエイタを前に、パピポラ・ペペモビッチは高らかに笑い声を響かせ
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ちょっと待て。
いや申し訳ない。こんな冒頭で止めて本当に悪いと思ってますが、聞いてほしい。
こいつのメイン回は無理があるだろ。
えーっと、事情を説明します。まず前回いただいた応援コメントを確認してみましょう。
>性悪勇者のざまぁ今回もスッキリでした。
>こうなると、その後のレイダースのざまぁを、もっと徹底的にやって欲しいかな?
>あの人外なんて婚約して、良い目見過ぎな気がします。
……いや確かにいま思うと、1話のざまぁはちょっと薄味でしたね。実に的確なご指摘です。
なにより概要欄にはっきり書いてありますからね。『応援コメントでいただいた要望は可能な限り作品に反映させていただきます』って。くそ、こんなこと書かなきゃよかった。
そんなわけで今回の主役はパピポラ・ペペモビッチさんです。実はけっこうな強キャラだったみたいですよ。
まあこいつの戦闘シーンなんて誰も興味ないだろうから、次の場面転換でもう負けてるんですけどね。では本編に戻りまーす。
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「ビビビビビ ソブラバララ マリエマリ(『馬鹿な、下等な原住民に我が敗れるとは……』と言っている)」
「1度見た物は
「ビビビビビ スルマランガ ピボプピップ(『くそ、この星を制圧するという我の野望が……』と言っている)」
決着は付いた。パピポラ・ペペモビッチは悪臭でほとんど身動きが取れない。あとはエイタがとどめを刺せば終わりだ。
しかしエイタはパピポラ・ペペモビッチに歩み寄り、屈み込んで声をかける。
「なあ、パピポラ・ペペモビッチ。教えてくれ。なんで急に星の制圧なんて言い出したんだ? 『ザ・レイダーズ』で活動していた数年間、そんな素振りは一切見せなかったじゃないか」
「……ビビビビビ ポルメチアヌ ペートゥルス(『……我が婚約者に認めてもらいたかったのだ』と言っている)」
「え?」
「ビビビビビ ソルマテラヌア ミニニヂミ(『我はこの容姿だからな。婚約者は我のことが嫌いらしい。『ザ・レイダーズ』が没落した今、我が婚約者に認められるためにはもう、この星をまるごと差し出すしかないと思ったのだ』と言っている)」
「……パピポラ・ペペモビッチ」
「ビビビビビ ブルルマチクラ タヴィルォーケ(『なあエイタ、お願いだ。我を許してはくれぬか? もうこの星を奪おうなどとは考えない。今後は誠心誠意、真心を持って我が婚約者に愛を伝えることだけを考えよう』と言っている)」
「……はぁ、分かったよ」
エイタはため息をつくと、139個の防臭マスクを
「このマスクをすれば動けるくらいにはなるはずだ」
「ビビビビビ ジュルニピナハ ミギギチィ(『ああ、感謝するよエイタ。……騙されてくれてありがとう!!』)」
「…………」
「ビビビビビ ハマナルゥゴン ルググルスト!(『あんな婚約者なんて、出会ってすぐに洗脳してやったよ! 『ザ・レイダーズ』時代にこの星を征服しようとしなかったのは、原住民どもにちやほやされるのがわりと気持ちよかったからだ! 見てろエイタ、このマスクがあれば悪臭なんて……あれ、あれ』と言っている)」
「だと思ったよ。ところでパピポラ・ペペモビッチ、耳が1つしかないお前が、どうやってそのマスクを付けるんだ?」
「ビビビビビ ビビビッビビビッビ ビビビビビビィーーー!!!!(『しまった――ー!!!!』と言っている)」
シュールストレミング、くさや、納豆……。エイタは臭いものを大量に
すぐにパピポラ・ペペモビッチは、その体を包むバリアごと食べ物に覆い尽くされた。複数の臭いが混じり合い、強烈な悪臭が船内を満たす。
「ビビビビビ ビビッビッビッビッビ ビビビッビビビビィ!!(『ふざけるな、やめろエイタァ!!』と言っている)」
「と言われても、絶対無敵バリアのせいで臭い以外の攻撃が通らないんだからこうするしかないだろ」
「ビビッビ ビ ッビビ――(『意識、が、とおのいていく――』と言っている)
「これでよし。一生悪臭の中で苦しみながら生きていけ。もう無理だと思ったらバリアを解除しろよ。上に乗ってる大量の臭い食べ物に押し潰されて死ねると思うぞ」
「ビ ビ ビ(『ク、ソ、が……』と言っている)」
パピポラ・ペペモビッチはしばらく抵抗しようともがいていたが、次第にその動きは鈍くなり、やがて完全に動けなくなった。それを見届けたエイタはパピポラ・ペペモビッチの強制転送装置を
そうしてその宇宙船には、悪臭を放つ食べ物の山とパピポラ・ペペモビッチだけが残されたのだった。
●
いや。厳密には、残されたものは他にもあった。
「……なあ。俺たち、いつになればここから出られると思う?」
「知らないわよ! くそ、パピポラ・ペペモビッチのやつ! 急にあたしたちをこんなところに閉じ込めて、どういうつもりかしら!」
「完全拘束されたこの状況、拙僧らに出来ることはありません。いずれきっと、パピポラ・ペペモビッチ殿が姿を現わすはず。今はただそれを待ちましょうぞ」
ブレイブ、ヒルダ、
しかしパピポラ・ペペモビッチはエイタによって倒され、2度と彼らのもとを訪れることはないだろう。しかしこの3人にとって、そんなことは知る由もない。
「あ~……。腹減った~……」
「もう、言わないでよ! あたしだって我慢してるのに!」
「心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却……」
ゆらゆらと目的地なく漂う宇宙船の中。3人の囚人は、ただひたすらにパピポラ・ペペモビッチを待ち続けるのだった……。
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よーし終わりだ! 2度と出さねえぞこんなキャラ! 話すたびにいちいちテンポ悪いんだよ!!
……えーと、はい。今回のざまぁもお楽しみいただけたでしょうか!
それでは、また次回もお楽しみに!! シーユーネクストざまぁ!!
……あ、ちなみに。今回のように見たい展開を応援コメントに書いてもらえるのは非常にありがたいです。『応援コメントでいただいた要望は可能な限り作品に反映』っていうのはつまり、事実上コメント欄でお題募集してますよってことっていうか……。こうしてお題を提供していただかないと、すぐにネタ切れになるのは目に見えてるっていうか……。
とにかくそういうことです。この作品は俺たちみんなで作り上げていくんだぜ! よろしくな!
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