第5話 宇宙人
この学校は給食が終わった後、自由時間が25分ある。校庭で遊ぶ、図書室で本を読む、教室で寝るなど、時間の使い方は様々だ。
しかし、今日は朝から続く大雨によって校庭で遊ぶことができない。拓真を含む男子4人はいつも外で遊んでいたが、今日は教室で適当に話すことにした。
拓真を除く3人とは、達也、
大輝はサッカー選手になることが夢で、暇さえあればボールを蹴り続けている。特徴は父親譲りの色黒と細目だ。
海誠は走ることが大好きで、毎朝5キロ走ってから登校している。サラサラヘアーと丸い目が特徴的だ。
2人とも運動は得意だが、勉強は苦手でいつも拓真に教わっている。
4人は最近の出来事について話していたが、海誠の話が特に盛り上がることとなる。
「馬鹿にされると思って言えなかったんだけどさ、実は昨日の朝……UFO見たんだよ……」
「「UFO!?」」
達也と大輝は揃って大声を上げた。
「大きな声出すな! 馬鹿にされるだろ!」
「わりー」
「ごめん。けどただの飛行機じゃないの?」
「俺も最初はそう思ったよ。でも違った。動きが違うんだよ。こうなんていうか、シュン! みたいな感じ」
「寝ぼけてたんじゃないの?」
「起きてから2時間後に走るようにしてるからそれは絶対ない!」
必死に伝える海誠だったが、2人は全く信じようとしなかった。しかし、拓真だけは違った。
「まぁそれが本当にUFOかどうかは分からないけど、少なくとも宇宙人は絶対にいるよ」
拓真の発言に驚く3人だったが、大輝、達也、海誠の順に口を開いた。
「宇宙人って……いるわけないだろそんなの(笑)」
「クマちゃん、さすがに俺もいないと思うわ」
「俺はこの目でUFO見たし……いるとは思うけど……」
拓真は人からどう思われようが気にしないため、話を続けた。
「今ここにいる全員が宇宙人だろ」
またも3人は驚くが、大輝が反発してきた。
「俺たちは普通の人間だろ! てか地球にいるから地球人だよ!」
「じゃあ火星にいたら火星人?」
「まぁ、そうなるな」
「金星にいたら?」
「金星人」
「なら名前の知らない星にいたら?」
「うーん、それは分からないから……まぁ宇宙人だな」
「それが答えだよ」
「どういうことだよ」
「星の名前を知ってるからその名前が付けられる。それが分からないから宇宙人になるってことだよ」
「意味が分からん。もっと簡単に言ってくれ」
達也と海誠も同意見だったらしく、頭を縦に振っている。
「じゃあ地球で考えよう」
拓真は少し間を空けてから再び話し始めた。
「俺たちは日本人だろ? なら海外の人のことはなんて言う?」
「「「外国人」」」
「そう。そして国によってまた名前が変わってくる」
「何が言いたいんだよ」と大輝の声が荒くなる。
「区別してるってことだよ」
「区別?」
「日本っていう国の外にいるから外国人。で、国には名前があるからそれぞれナンタラ人って呼ぶ」
「あぁ、確かに」
「これを宇宙で考えると、地球という星の外にいたら宇宙人。名前がある星にいたらまたナンタラ人ってなる」
「「「なるほど……」」」
「どの国にいても地球人であることに変わりはないだろ? ならどの星にいても宇宙人であることに変わりはないってことだよ」
「深い……クマちゃんやっぱすげーわ」
「ここでさっきの区別が出てくる」
「どういうこと?」
「人間は自分たちと違うものを区別したがるんだよ。自分たちも宇宙人なのに地球にいるから地球人、地球外は宇宙人。みんな地球人なのに日本にいるから日本人、海外は外国人ってね」
「確かに区別してるな」
「それぞれの国が他とは別だって考えてるから争いが絶えないんだろうな」
自由時間が終わりに近づいた時、拓真の一言が3人の心に刺さった。
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