第4話 チンピラ

「クマちゃん、一緒に帰ろうぜー」

「待ってたのか」


 普段の拓真は、帰りの会が終わった後いつの間にか帰っている。しかし、今日は日直だったためすぐには帰れず、待っていた達也と一緒に帰ることになった。


「クマちゃんっていつも一瞬で帰ってるよな」

「まぁな」

「なんでいつもそんな早く帰ってんの?」

「ゲームやりたいから」

「そこは子どもなんだな(笑)」

「子どもだからな」


 何気なにげない会話が続き、学校が見えなくなった頃、前から派手な見た目の男が歩いてきた。


「なんかイカついなあの人」と達也が小声で言った。

「目だけは見るなよ」

「なんで?」

「面倒なことになるから」


 達也は気になってしまったのか、近くを通る男の目を見続けてしまった。


「なに見てんだテメェ」


(あー、やっぱこうなるか)拓真は頭をいた。


「み、見てないですっ」

「パチこいてんじゃねーよ、ぶっ飛ばすぞ」

「すみません! 本当に見てないですっ」

「すみませんで済んだら警察はいらねんだよ!」


 黙っていた拓真が突然口を開いた。


「じゃあ警察呼びますね」

「あ? なんだテメェ。ナメてんのか?」

「すみませんで済まなかったんだから警察がいるってことですよね?」

「うっせぇな。まずテメェからぶっ飛ばしてやろうか?」

「いいんですか? この辺は学校が近いから防犯カメラが多く設置されてるんですよ?」

「そ、それがどうした」

「たとえ俺たちがボコボコにされても、アンタは必ず捕まる。そして最低でも傷害罪しょうがいざい。つまり15年以下の懲役ちょうえき、または50万円以下の罰金ばっきんだよ」

「チッ、クソが! 覚えてろよ!」


 男はそそくさと走り去った。


「す、すげーなクマちゃん! 俺なんて怖くて声出すのがやっとだったのに」

「いや俺だって怖かったわ」

「本当か? そうは見えなかったぞ?」

「そう見えたら本当にボコされてたかもしれないだろ?」

「でも防犯カメラあるんだろ?」

「さぁ?」

「はぁ? 嘘だったのか!?」

「いやどっかにはあると思うけど、ここら辺にあるかは知らない」

「やばすぎだろ! しかもさっきのなんだよ、傷害罪だっけ? なんで知ってんだよ」

「前にテレビでやってたから。まぁ合ってるかは分からないけど」

「おい! さっきのもだけど、もしバレたらどうするつもりだったんだよ」

「馬鹿デカい声で助けてーってさけぶつもりだった」

「いやそこは子どもかい!」

「だから言ってんだろ、子どもだって」


 チンピラに絡まれたが、拓真の機転によって2人とも無事だった。しばらくその場で話した後、2人は再び歩き始めた。


「でもクマちゃんって本当にすごいよな」

「いやたまたま上手くいっただけだから」

「だとしてもすげーよ。でもこれからどうすんの?」

「これからって?」

「もしまたアイツに会ったらってことだよ」

「変装して学校行くから大丈夫」

「いやダメだろ」


 次の日、拓真はメガネを掛けてきた。

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