第31話 年末年始の帰省③
悠と澪桜は実家に着くと悠の家族はみんな家にいた。
父はリビングでニュースを見ながら早めの晩酌を始めている。
母は夕飯の準備に取り掛かり、凛は自分の部屋にいるようだ。
「ただいま。高校まで歩いてきたよ」
「随分遠くまで行ったな。澪桜ちゃんどうだった?本当に何もない町だろ?」
彰は笑いながら澪桜を一瞥した。
「いえいえ。とても素敵な場所でした。綺麗な自然があって町の人も優しくて。私はとても気に入りました」
澪桜は笑いながら彰に言う。
「そうか。それは良かった。悠、本当に素直な子だな?大切にしなさい」
「もちろんだ。そういえば母さん、澪桜が料理を手伝いたいと言っていたぞ?」
キッチンにいる志保に悠が声をかける。
「え?本当に?そしたら早速、澪桜ちゃん手伝って貰ってもいい?」
「はい!もちろんです。なんでも仰って下さい」
そういうと澪桜は嬉しそうにキッチンに向かう。
澪桜は志保からお袋の味というものを学びたかった。
悠の好みなどを研究するつもりなのだ。
「悠、澪桜ちゃんは料理好きなのか?」
「好きなんてもんじゃない。あの実力は普通にプロ級だな」
「ほう、それは凄いな。そういえば悠達は同棲しているんだったな?澪桜ちゃんは普段仕事してるのか?」
「いや、本人の希望で家のことをして貰っているよ。料理に掃除に家事は完璧だからな。本当に出来た彼女だよ」
悠は手放しで澪桜を褒める。
「お前がそこまでベタ惚れか。分からんものだな」
彰は嬉しそうに笑う。
「あまり女性を待たせるなよ?同棲までするならしっかり責任とるんだぞ?」
「もちろんそのつもりだよ。澪桜の両親にもそのように挨拶して許可を貰っているからな」
「まあお前ならその辺は大丈夫だろう。話が進展することがあればその時は連絡してくれ。とまあ堅苦しい話はこれくらいにしてお前も飲むといい」
悠は彰からビールを注がれる。
「悪いね。父さんと飲むのは去年振りか」
二人は楽しそうに酒を酌み交わす。
キッチンではそんな二人の様子を見た澪桜が志保に話しかける。
「悠くんとお父様は仲が良いんですね?」
「そうね。あの子は昔からあまり反抗期とかがなくてね?私とも彰さんともずっと仲が良いわね」
志保はそう言って笑う。
久々に息子が帰ってきて嬉しいのだろう。
「澪桜ちゃんはいつもお料理してくれているの?」
「はい。悠くんは頑張ってお仕事してくれているのですが、私はお家で家事やお料理をさせて貰ってます。お仕事してないので悠くんには少し申し訳ないですが」
「そんなことないわよ?あの子は仕事馬鹿だから、澪桜ちゃんがお家のことやってくれて安心だわ。悠は一人だとちゃんとしたご飯も食べてないだろうし」
「そうなんです。悠くんコンビニとかのご飯ばかりなのが心配で…そういうのもあって。もちろん大好きですし、同棲をお願いしたんです。これからも悠くんを支えていけたらと思ってますのでお母様も末永くよろしくお願いします」
澪桜は志保にぺこりと頭を下げる。
「本当に良い子ね〜。もちろんよ。こちらこそ悠をお願いね?喧嘩した時は私に連絡しなさい?私から言ってあげるから」
そう言って二人は連絡先を交換していた。
「それにしても澪桜ちゃん本当にお料理上手ね?」
「とんでもないです!私、お母様から悠くんの好みの味を伝授して頂きたいのですが…」
「まかせてちょうだい!と言っても、もう悠の胃袋は澪桜ちゃんにしっかり掴まれちゃってるんじゃないのかしら?」
とは言うものの、昔から悠が喜んで食べるメニューや味付けをしっかりと澪桜に伝授していた。
「こんなに可愛くてスタイル良くて料理も出来て優しいなんてあの子…よく澪桜ちゃんと付き合えたわね。悠、結構無愛想でしょ?」
「そ、そんな…お母様褒めすぎです…。でも悠くんは意外と感情豊かで笑ったりしますよ?」
「あら!それは彼女特権かもしれないわね」
志保はそれは珍しいと感心していた。
「向こうはもう晩酌始めちゃってるわね。澪桜ちゃんはお酒飲まないのかしら?」
「はい。普段からほとんど飲まないです。あまり強くないみたいで…」
「それなら無理することはないわ。私も飲まないから。さあじゃあそろそろ並べましょうか」
志保と澪桜は食卓に料理を並べていく。
「おお。さすが悠が帰ると母さん張り切るなー。悠も母さんの料理久々だろ?」
「そうだな。ちょうど去年が最後だからな。でも澪桜が料理上手いから本当に毎日が楽しみなんだ」
悠は何食わぬ顔で惚気ていた。
「悠はもう私の料理よりも澪桜ちゃんの料理に夢中みたいね?」
「ゆ、悠くん。ハードル上げないで下さい!」
澪桜は慌てて悠を制止する。
「今日はこの煮物は澪桜ちゃんが作ったのよ?凄く美味しく出来てたわ。これは悠は幸せ者ね」
悠は澪桜が自分の母に認められて満足そうに頷いている。
食卓には全員が揃い食事を始める。
「ええ!この煮物澪桜さんが作ったの?凄…」
凛は澪桜の女子力の高さに驚いている。
「ほう。美味いな!澪桜ちゃん凄いね。これは悠がベタ褒めする理由が分かるな」
「本当だ…美味しい。澪桜さん超人なの…?」
凛もお世辞抜きで褒めていた。
「皆さんありがとうございます…でもお母様のお料理は本当に凄いですよ?悠くんの舌が肥えている理由がよく分かります」
「あら。澪桜ちゃんありがと♪本当に可愛い子だわ」
いつの間にか志保と澪桜は仲良くなっているようで悠は安心した。
自分の彼女が家族と仲良くなるというのは感じたことのない嬉しさがあった。
一緒に来て良かったと心から思う悠であった。
夕食中は会話が弾み、悠と澪桜の普段の生活のことやお互いの昔話で盛り上がっていた。
「悠くん、この前も表彰されて、もう係長になるんですよ?」
澪桜は自慢気に言う。
「まだ試験受かってないから分からないけどな」
悠は恥ずかしそうに頬をかく。
「そうか。それはおめでとう。彼女が出来て仕事にも精が出るだろう。この調子で頑張るんだぞ?」
「本当に、あなたは仕事好きね?澪桜ちゃんのことも大事にするのよ?うちの男達は仕事馬鹿なんだからね」
志保は嬉しそうにしながらも悠に釘を刺す。
「それは当然だ。澪桜が居てくれるから俺は仕事に集中して打ち込めるんだ。澪桜が一番さ」
澪桜は照れながら悠の手を握る。
「あらあら見せつけてくれるわね?彰さん私達も手繋ぐ?」
「い、今か?勘弁してくれ…悠と凛がいるんだぞ…」
「いなければいいのね♪まぁ彰さん恥ずかしがり屋さんだものね?」
相変わらず二人の仲は良かった。
「私も悠くんとこんな風にずっと仲良くいたいです」
澪桜はそんな二人を見て悠に言う。
「そうだな。俺はそうなると思うぞ?」
「もぉ…悠くんたらっ♡」
「もう…砂糖吐きそう…」
凛は実の親と兄カップル二組の甘い空気に頭を抱えていた。
「凛は彼氏とかいないのか?」
悠は頭を抱えている凛に質問した。
「わ、私はそんな人いないわよ…こんな田舎に良い男なんていないし…」
「澪桜ちゃんに料理でも教えて貰って女子力上げてみたら?」
志保は凛を横目に笑いながら言う。
「私も大学生になったら料理勉強するからいいの。今は受験勉強でいっぱいいっぱいだし」
凛も悠と同じく大学進学を目指しているようで、高校も悠と同じ学校なだけに勉強には自信があるようだ。
「凛も悠と同じ大学を目指してるそうだぞ?勉強のアドバイスでもしてやってくれ」
「ということは受かれば家出るのか。うちの学校受けるならアドバイスくらいはするよ。国立は科目多いからな」
「じゃあ、今日の夜私の部屋に来てね?勉強教えてもらうから!」
凛は嬉しそうにはにかんでいた。
「もう、凛たら。勉強教えて貰うのもいいけど、澪桜ちゃんと悠の時間をあまり邪魔しちゃだめよ?それと澪桜ちゃんは悠の部屋に泊まって貰うからね。彰さんも問題ないわよね?」
「二人は成人だ。それに同棲までしてるのだから俺から言うことはないよ」
彰はそう言うと凛は少しだけ不満そうだ。
「兄さん…部屋隣なんだからいやらしいことしないでよね…?」
凛はジト目で悠を睨みつける。
「お前…食卓でそんなこというな。一条家が変な家族だと思われるだろ」
隣に座る澪桜を見ると顔を赤くして俯いている。
今にも頭から湯気が出そうである。
そんなこんなで一日目の楽しい夕食は終わると夕食後は各々の時間を楽しむ。
「悠。お風呂準備出来てるから、澪桜ちゃん一番に入って貰いなさい?あなたの部屋で準備してちょうだい」
「そうだな。澪桜、俺の部屋案内するから荷物持って行こうか」
悠は澪桜の荷物を持つと、二階にある自分の部屋に澪桜を案内する。
「悠くんのお部屋、ドキドキしますっ」
「ごく普通の部屋だぞ?何も変わったところはないから期待しないでくれ」
二人は部屋に入ると澪桜はきょろきょろしながら悠の部屋を見回していた。
「ここが悠くんのお部屋…なんだか悠くんの匂いがします。それに片付いてて綺麗ですね?」
もともと置くものが少ないからか、悠の部屋は本棚と机にベッドと最低限の物があるだけだった。
「物が少ないから殺風景だろ?それじゃあ着替えとか準備出来たら風呂まで案内するから。風呂出たら次俺行くからここで待っててくれるか?」
「もちろんです♪」
悠は準備が出来た澪桜を風呂まで連れていく。
澪桜が出ると次は悠が風呂に入ると言い部屋を出ていった。
澪桜は悠の部屋で一人になると、とある興味が湧いてくる。
「男性は自分の部屋にエッチな本を隠すと言う話を聞きましたが本当でしょうか…」
澪桜はダメだとは思いながらも部屋を見て回る。
「ベッドの下は…そんなベタなところに悠くんは隠さないですよね」
そこで澪桜は本棚に目をつけた。
満遍なく本棚を調べていると、一部手前に飛び出て並ぶ辞典が数冊。
澪桜はこれを見逃さなかった。
その辞典を1冊引き抜くと、奥から何か見える。
数冊の辞典を取り出すと本棚の奥に澪桜の探している物があった。
発見してしまった…
「っ!?マンションの方には無かったけど、やっぱり悠くんも持っているのですね…」
澪桜は隠してあった成人雑誌を手に取る。
「ひ、表紙がもうエッチなんですけど…」
しかし、澪桜は初めて見るものに興味津々で夢中になってページを捲っていた。
「お、おっぱいは私の方が勝ってるもん…で、でも細くて脚も長いし…もしかして悠くんはスレンダー体型の方が好みなのでは!?」
澪桜は成人雑誌を見ながら一喜一憂している。
「全体的におっぱいが大きい子が多いですね…全部丸見えですし…えっ!外国人!?悠くん国際交流派!?」
澪桜は悠がこの本を読みながら自らを慰めていたのかと考えるとだんだん嫉妬してきた。
「こ、こんなおっぱいを使ってなんて…もしかして悠くん今までのエッチじゃ満足出来てないのでは…」
そんなネガティブなことを考えていると、ふと我に帰る。
「つ、つい夢中に…はやく戻さないと悠くん戻って来ちゃいます」
澪桜は焦りながら成人雑誌を元の場所に戻してから平静を装って髪を乾かし始める。
「う〜。せっかくお風呂入ったのに…変な気分になっちゃったせいで…」
少しだけ下着に違和感を感じながらもじもじしている澪桜であった。
その後、間も無く悠が部屋に戻る。
「ん?どうした澪桜?顔赤くないか?」
「な、なんでも無いですよ?少しお風呂でのぼせたのでしょうか」
なんとか誤魔化す澪桜は悠の髪も乾かしてあげる。
悠の髪からはいつもと違うシャンプーの匂いがして澪桜はなんだか余計ドキドキしていた。
一条家のみんなの就寝は早めだ。
二人はお茶を飲みにリビングに戻ると、彰と志保はすでに寝室に行っているようだ。
部屋に居たのは凛だけ。
「くんくん。ん?ラブコメの匂いが…」
凛が変なことを言いながら二人を見る。
「兄さん…なんか変なことしてなかった?」
「は?何も変な事はしてないぞ?なぁ澪桜?」
悠は心当たりがないので何のことかと澪桜の方を見る。
「は、はいっ!もちろんそんなことしてないですっ」
澪桜は少しドキっとしたが、上手く取り繕う。
「それなら良いけど…」
凛も気づいてはいないようだった。
「それで、兄さん。約束通り勉強見てもらえる?」
「おう。いいぞ?ただ少しだけな」
「じゃあ1時間だけ…」
悠は約束通り、凛の勉強を見ることになった。
その間、澪桜は悠の部屋で待つことにした。
* * * * * *
「凛に勉強を教えるのは何年振りだろうな」
今、悠は凛の部屋で勉強を教えていた。
「うん久々かも。兄さんは向こうで元気そうだね?」
「そうだな。最近まで正直言って仕事ばかりでつまらなかったんだけどな。澪桜と出会って変わったよ」
凛はその言葉を聞いて少し寂しそうにしている。
「やっぱり良い人が出来ると変わるんだね…私ね、澪桜さんなら兄さんとお似合いだなって思ったよ。あんなに可愛いくて優しくてスタイル良くて女子力高い子そうはいないし」
「凛…ありがとな。俺は幸せになれたよ。これからもそうだと思う。だから次は凛の番だな?受験も受かって良い人作って幸せになれ。その為に俺はいくらでも協力してやる」
悠は凛の頭を撫でる。
「ありがと…兄さん大好きよ。そういえば雪乃ちゃんと会った?」
「雪乃か。高校前のパン屋で会ったな」
「澪桜さん見て何か言ってなかった?」
「いや?昔から女気なかったのにって少し驚いてたけどな」
「そう。兄さんは罪な人だね。」
凛はため息をついた。
今度、雪乃ちゃんのフォローしないとね…
そう心の中で考える。
その後、二人は1時間ほど雑談と勉強をして凛からお開きの声が掛かる。
「そろそろ終わろうか。澪桜待ってるだろうし。それと…兄さん分かってるよね?ここ防音とかじゃないからね?」
凛はにやにやしながら悠を見る。
「馬鹿なこと言うなって!じ、じゃあな。おやすみ」
悠は凛の部屋を出て、隣の自分の部屋に戻る。
「お待たせ澪桜。暇してたよな?」
「いえいえ。久しぶりに兄妹で積もる話もあるでしょうし。今日はそろそろ寝ましょうか」
悠のベッドはシングルで狭いため、澪桜にベッドを空けて、悠は床に布団を敷いた。
しかし澪桜から物言いが入る。
「ゆ、悠くん…私、一緒に寝たいです…」
甘えるような声で悠におねだりしてくる。
「でもベッド狭いだろ?流石に一緒に寝れないんじゃ…」
悠がそう言うと、澪桜はベッドから出て悠の布団に入り込んでくる。
「ここで一緒に寝たら暖かいですよ♡」
澪桜は悠に抱きつくと足まで絡めてくる。
柔らかい身体が悠に押し付けられて変な気分になってくる。
澪桜は少し前に悠が隠していた本を読んだこともありイケナイ気分になっていた。
「悠くん…今日はダメですか…?」
悠の耳元で吐息混じりに囁く。
「い、いや…隣に凛が居るし…」
「でもぉ悠くんの…もう元気ですよぉ♡」
澪桜は悠の耳を甘噛みする。
暖かい吐息が耳にあたり、悠の頭はショートしていく。
「大丈夫です。声我慢しますから…でもその前に今日は私がご奉仕しますね?」
そう言うと澪桜は上着を脱ぐと悠の足の間に入る。
そして、悠を脱がすと先程の本をお手本に自分の胸で悠のものを挟む。
「み、澪桜っ!?どこでそんなことっ?」
「悠くんこういうの好きですよね?私、頑張りますね♡」
悠は初めての体験と快感に脳が蕩けていた。
澪桜の大きな胸が動くと悠はその度に快感が寄せてくる。
「悠くんっ。いいですよ?来て下さい♡」
悠は初めての経験に溺れすぐに果てた。
「悠くん…凄いです…やっぱりこれ好きなんですね?私、嬉しいです♪」
「澪桜…今日は凄いな。でも最高だよ」
「やんっ♡悠くんまた元気に…」
その後、二人は繋がり一緒に果てた。
「声を我慢しながらというのもたまには良いかもです…♡」
「俺も良いが、バレたらと思うと気が気で無い…」
心地よい疲労に包まれた二人はそのまま一緒に布団で眠りに落ちる。
冬ではあるが、お互いの体温を感じながら朝を迎えたのであった。
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