第25話 彼女のお迎え

 澪桜へのプレゼントを買って家に帰った悠は考えていた。


「さて。このプレゼントをどこに隠しておこうか…家の中だと確実にバレるよなぁ」


 澪桜は普段から家のことをやってくれているのだ。

 この家で彼女が知らない場所はないし、家事の最中に発見されてしまう恐れもある。


 ようやく思いついたのは車の中。

 後ろの床下スペースの部分に入れておくことにした。


 車から部屋に戻った悠は夜までに家の掃除をすることにする。

 普段から澪桜には色々やってもらっているのだ。

 たまには自分もやらないと罰当たりな気がするし。


「風呂からやるか。終わったらキッチンだな」


 元々掃除が苦ではない悠はテキパキと風呂掃除を進めていく。


「しかしそもそもほとんど汚れてないんだよな。これも普段から澪桜が綺麗にしてくれているからだよな」


 キッチンに関してはほぼ掃除する場所が無かったくらいだ。

 悠は家事を通して改めて澪桜のありがたみを感じていた。


 気づくと時刻は夕方の5時。

 一息つこうとベランダでタバコに火をつけた所でスマホにメッセージが入る。


『こんばんは悠くん。二日間ありがとうございました。お迎えの件なのですが、18時頃でも大丈夫でしょうか?』


 18時か。随分早いな。

 夕食は実家で取らないのだろうか。


『こんばんは。全然大丈夫だよ。結構早い時間だけど、夕ご飯は食べてかないのかな?』


 悠はそう返信をすると、すぐに既読が着き返信が来る。


『大丈夫です。今夜は悠くんと一緒にご飯食べたいので!私、早く悠くんに会いたいです♡』


 どうやら澪桜も早く悠と会いたいらしい。

 ずっと一緒で一日半だけしか離れてないのに二人ともこの様である。


『俺も早く会いたい』


 そんな一言だけを返信した。




 迎えの時間までまだ1時間ちょっとある。


「澪桜の実家に行く前に沙百合さんのお祝い買っていかないとな」

 

 悠は家を出てから澪桜の実家までの道のりの中間地点くらいにある酒屋に寄ったのであった。


 約束の時間である18時。

 悠は澪桜の実家に到着した。

 インターホンを押すと沙百合がやってきて中に通される。


「あら。悠くんこんばんは。澪桜がお待ちかねよ?」

「こんばんは。お誕生日おめでとうございます。当日にお祝いに行けず申し訳ありません。つまらない物ですが、これどうぞ」


 悠はここに来る前に購入したシャンパンを沙百合に渡す。


「あらあら!悠くんありがとうございます。良い物を貰っちゃたわね」


 沙百合はとても嬉しそうにシャンパンを受け取ると悠をリビングに連れて行く。

 中に入ると正徳と澪桜、美華の三人がリビングで談笑している。


「おお!悠くんいらっしゃい。昨日は来れなくて残念だったね」

「正徳さん。こんばんは。来年は是非お邪魔させて下さい」


 正徳こと澪桜パパは悠が来れなくて残念そうにしていた。

 男一人は肩身が狭いのもあるのだろう。


「悠くん。昨日はありがとうございました。とても楽しい時間を過ごせました♪」

「その言葉が聞けて良かったよ!こう言う時は必ず帰って家族をお祝いしてあげて」


 澪桜は二日ぶりに悠に会えたことがよほど嬉しいのかいつもよりも眩しい笑顔だ。

 家族がいなければ今すぐにでも抱きついてきそうな表情。


「ありがとうございます。私の家族のこともちゃんと考えてくれる悠くん本当に大好きです♡」

「お姉ちゃん…イチャつくのは帰ってからにしてよね?」


 美華は澪桜のピンク色の空気をいち早く読み取って釘を刺す。


「い、イチャついてなんかないからっ」


 綾瀬家のリビングでは楽しそうな笑い声が響いていた——。



 その後、入れてもらったお茶を頂いた悠は澪桜と車に向かう。


「悠くん。お母さんにお祝いまでもらっちゃって悪いね。今度はゆっくり来てくれ」

「本当に。こんないいお酒もらっちゃって。ありがとね悠くん。またいらっしゃい」


「お二人ともありがとうございます。また今度ゆっくりお邪魔させて頂きます」

「お父さん、お母さんありがとうございます。また帰りますので」


 澪桜も両親に挨拶をする。


「澪桜ちゃん?二日間悠くん一人だったのだから帰ったらしっかりお世話しないとダメよ?」

「お母さん大丈夫よ。お姉ちゃん、帰ったら悠さんにべったりに決まってるもん」


 美華は分かりきっているといわんばかりに沙百合に言った。


「み、美華。もぉ…そんなことないんだから」


 澪桜は照れながら美華を睨む。


「それじゃあ帰ります。またお邪魔させて下さい」


 二人は車に乗って自宅に戻る。


「悠くん。私がいない間はどうでしたか?ゆっくり出来ましたか?」

「たった一日半だけだったけど、寂しかったよ。俺はもう澪桜がいないとダメみたいだ…」


 悠は恥ずかしそうにはにかんで澪桜の顔を見る。

 たった一日半ぶりの澪桜の顔。

 白い肌に長いまつ毛、大きな二重の目に整った小さな鼻と口。

 運転中なので、チラッと見ただけだが、改めてこんなに可愛い子がいるのだろうかと思う。


「私も…悠くんがいない夜がとても寂しくて。悠くんのお世話が出来ないことがとても辛かったです…」


 隣に悠がいることが嬉しいのだろう、澪桜は自宅につくまでの間、ずっと運転している悠の顔を見つめていた——。


 

 エレベーターを乗り、部屋の前まで来た悠が玄関の鍵を開けて中に入る。

 澪桜も悠に続いて中に入り扉を閉めて鍵を掛けた。


 悠は靴を脱ぎ家に入ろうとすると、後ろからいきなり抱きつかれた。

 澪桜の良い匂いに包まれて、背中にはあの柔らかいものが押し付けられている。


「み、澪桜!?」


 いきなり抱きつかれた悠は驚きながら後ろに振り返ると蕩けるような表情の澪桜が目に入った。


「悠くん…やっと、ぎゅう出来ました…悠くんの匂い…好きぃ♡本当に寂しかったです」

「なんか澪桜に抱きしめられるの久々な気がするな。一日半しか経ってないのにな?」

「私の中で悠くんが一番大きいということですよ?あなたがいない世界なんて信じられないですから。悠くん…キスして♡」


 澪桜は目を瞑り、悠のキスを待っている。

 悠は澪桜の正面に向き直り、その可愛い唇にキスをする。


「ちゅっ…んむぅ…はぁ」


 二人は情熱的なキスに夢中になる。


「はぁはぁ…悠きゅん〜もっとぉ…」

「んむ…ちゅっ…んあ♡」


 澪桜は切なさそうな、そして艶のある吐息を漏らす。

 悠も澪桜の唇を啄み、舌を絡め、己の欲するままに澪桜を求める。


「悠くんとのキス…幸せです…♡」


 二人は数分間お互いを求め合ってからリビングに戻る。



 その後仲良く夕食を食べてから風呂を済ませて——


 悠と澪桜はベッドで横になりながらお互いが不在だった時の話をしていた。


「悠くん。私がいない時は何をして過ごしましたか?」

「仕事から帰った日は澪桜が作ってくれてたご飯食べてすぐ寝ちゃったな。今日の昼は買い物に行ったくらいか」


 悠はうっかり買い物の話題を出してしまった。


「買い物ですか?何か買ったのですか?」

「あ、あぁ。仕事に使う物とか冬服の買い物にな。結局服は良いのが無くて買わなかったけどさ」


 口が裂けても澪桜の誕生日プレゼントを買いに行ったなんて言えないからな。


「そうでしたか。それではお洋服はまた今度一緒に買いに行きましょうか。私が選んであげたいので」

「ありがとう。澪桜に選んで貰ったら間違いないだろうし」


 悠は何とかプレゼントの件がバレずにすんだことにほっとしていた。


「買い物は一人で行ったのですか?」

「うん。一人で行ったんだけどお店で偶然、東雲さんと会ったんだよ」


 東雲さんという言葉に澪桜の可愛い形の耳がピクっと反応した。


「東雲さん…あの飲み会の時にいたモデルさんみたいな方でしたよね…」

「い、いや。会っただけで別に何もないからな?」


 本当はプレゼント選びを手伝って貰ったお礼に喫茶店に入ったと正直に話したい気持ちはあったが言うことが出来ない。


「ふ〜ん…そうですか。悠くんあの人と会えて嬉しかったですか?」


 澪桜は完全に嫉妬モードに入っていた。


「澪桜?そんな訳ないだろ?俺が好きなのは澪澪桜だけなんだから…」

「本当ですか…?それなら言葉だけじゃなくて行動で証明してくださ——」


 悠は澪桜を抱きしめて唇を塞いだ。


「ふぁ…♡」


 いつもより少し強めに抱きしめた悠は、何分か分からないくらいのキス。


「んっ…。ちゅっ…ゆ、悠くん…分かりましたっ♡悠くんが私だけって分かりましたぁ」


 澪桜は蕩けた表情で息を荒げながら悠を見つめる。


「こんなことされたら私…何も言えなくなっちゃいます…♡」

「俺は澪桜だけを愛しているよ。でも不安にさせてごめん…」


 悠は申し訳なさそうに澪桜を見つめる。


「もぉ…悠くんずるいです…そんな可愛いお顔をされたら私…♡」


 澪桜は我慢の限界と言わんばかりに悠を抱きしめてキスをする。


 そして気分が高ぶってきた澪桜は悠の手を自分の胸に持っていく。

 悠の手は澪桜の圧倒的質量と柔らかさに飲み込まれる。


「ん…♡悠くんの大好きな私のおっぱいどうですか?悠くんだけの…悠くん専用のおっぱいですよ?」

「最高だよ…俺だけの…俺以外の人には絶対渡さない」

「もちろんです…私のおっぱいを好きにして良いのは悠くんだけですから…あっ♡」


 悠の手はいつのまにか己の意思で動かしていた。

 お互いに感情のボルテージが上がっていく。


「んぁ♡悠くん…私、今日は大丈夫な日ですから…だからそのまま…ね?」


 悠は澪桜の誘惑に抗える訳もなくあっさりと陥落した。

 そして、二人は同時に達したのであった。

 

 事を終えた二人は次第に恥ずかしさが込み上げてくる。


「あぅぅ…。またやってしまいました…悠くんこんなにえっちでイケナイ子な私を嫌いにならないでください…」

「俺が澪桜を嫌いになんてなるはずないだろ?どんな澪桜だって愛してるって。それに…えっちな澪桜も大好きだし…」


 そう言って澪桜を今度は優しく抱きしめる。


「俺はこれから先もずっと澪桜と一緒に居たいから。嫌いになんてならないから安心してよ」

「はい…悠くん…愛してます。私もあなたとずっと一緒にいたい…」


 悠は本日何度目か分からないキスをした。


 こうして二人はさらに深い絆を築いたのであった。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


 次回は澪桜と陸の彼女である香奈とのガールズトークのお話しとなります。

 その後は澪桜の誕生日とまだまだ物語は続けていく予定です。


 お時間がある方はどうぞお付き合いくださいませ。

 いつもこんな稚拙な文を読んで頂き、本当にありがとうございます。

 いつもコメントを下さる方もありがとうございます。

 とても嬉しいです。


 ではまた次回にお会いしましょう。

 

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