第18話 飲み会の後

 飲み会を終えた悠は、迎えに来た澪桜と二人で帰り道を歩いていた。

 澪桜は相変わらず、悠の腕にくっ付きながら歩く。


「悠くん。今日は楽しかったですか?」

「うん。まあ行ったら行ったでそこそこだったよ。」

「それは良かったです。それと…美人な女性が多かったですね?モデルさんみたいに綺麗な人も居ましたし…。」


 澪桜はちょっと拗ねたように悠の顔を見る。

 おそらく美月のことを言っているのだろう。


「そうかな?澪桜よりも可愛い人なんて一人も居なかったし、それこそ探しても何処にもいないんじゃないかな?」


 悠は真面目な顔をしてそんなことを言う。


「も、もぉ〜。悠さんそんな真面目な顔で言わないで下さい…。恥ずかしいです…。」


 澪桜は顔を赤くして悠の腕に顔をうずめる。

 側から見たらバカップルがイチャついているように見えるだろう。

 まぁその通りなのだが。


 悠は、何だかんだ澪桜が心配していたのだと気づいた。

 それに酔っていることもあり、いつもよりも大胆になっていた。


「俺は飲み会の席でも澪桜のことしか考えてなかったよ。やっぱり好きなんだよなぁ…。こんなに可愛くて優しくてスタイル良くて家事も出来て〜。」


「も、もうそれくらいで良いです…」


 悠は恥ずかしそうに言葉を遮る澪桜の腰に腕を回して抱き寄せながら歩く。

 誰にも渡さないと言わんばかりにぴったりとくっついて。


「悠くん。ありがとうございます。私、改めて悠くんに愛されていることが分かりましたので」

「俺が愛しているのは澪桜だけだからな。」


 悠は澪桜の目を見ながらハッキリという。


「私…。綺麗な女性が何人も居たので悠くん取られちゃうんじゃないかと思って…。特にあのモデルさんみたいな人…私とは正反対の人だし悠くんを狙っているような気がしたので…。」


 澪桜はあの一瞬で美月のことを見抜いていた。

 悠に関することは尋常でない鋭さを見せる澪桜である。


「東雲さんのことかな?あの人、俺に彼女がいること知ってるしそんなことは無いと思うけどな〜」

「いえ。私には分かります。女の勘ですが…」

「それに、東雲さんは俺の好みではないというか…。俺、澪桜みたいな女性がタイプなんだよね。」


 悠は照れながら澪桜に言う。


「私みたいなって、その…どんなところですか?」

「顔は綺麗系よりは可愛い系で、色白で背がそんな高くなくて、尽くしてくれて、家事料理完璧で、そ、その…。おっぱい大きいところとかも…」

「へ、へぇ〜。悠くんはおっぱい大きい子が好きなんですね〜?」


 澪桜は美月の姿を思い出して、絶対に負けることのない悠の好みを見つけて安心した。


「い、いや!誰のでも良いと言う訳じゃなくて!澪桜のだからいいというか…」


 悠は誤解がないように澪桜に説明する。

 澪桜は心の中で自分の身体が悠の好みだと言われたことに喜びと嬉しさを感じていた。

 

 澪桜は悠の耳元に顔を寄せる。


「ふふっ…。良いですよ悠くん?帰ったらいっぱい可愛がって下さいね♡」


 艶のある声で悠を誘惑する。

 悠は心臓をドキドキさせながら澪桜を見る。


「え…。そ、その…。可愛いがるって…」

「もぉ…。私に言わせないで下さい…。悠くんのエッチ♡」


 悠はもう辛抱たまらなくなっていた。

 澪桜は先程の不安気な表情から自信に満ち溢れた女の顔になっている。


「ま、まあ。それは帰ったらな。それより、帰る前に何か甘いものでも買って行こうか。澪桜が迎えに来てくれたお礼にね。」

「えっ。本当ですか?嬉しいです♪何にしようかなぁ〜」


 澪桜はさらにご機嫌になり、ニコニコしながら悠を引っ張る。

 悠はそんな可愛い笑顔の澪桜を見て幸せを噛み締めていた。


「やっぱり澪桜しかいないよな…」


 悠は聞こえないくらいの声で呟いた。


「はい?何か言いましたか?」


 澪桜は、くりっとした目を向けて覗き込んでくる。


「いや、何でもないよ。ほら何買うか決めたのか?」

「あっ、そうでした。ん〜まだ悩んでるんですよね。」


 結局、澪桜は帰りの途中でコンビニスイーツを買って帰路につく。


「そういえば、悠くん私に気を使ってお家では煙草吸わないのですか?」

「え?あぁ、俺が煙草吸ってること気づいてたの?」

「も〜私が悠くんのことで気づかない訳ないじゃないですか?」

「まぁ別に隠してた訳ではないんだけどさ、澪桜は嫌いかもしれないし元々家ではほとんど吸わないから…。嫌、違うな。澪桜に嫌われるのが嫌で言ってなかったんだろうな。ごめんな今まで言わなくて。」


 悠は澪桜に謝る。

 後ろめたさが全く無かったかと言われればそれは嘘で、心のどこかで知られたくないという思いがあったことも事実。


「い、いえ!別に煙草を吸うから悠くんが嫌いとかじゃないんですよ?煙草を吸うことを責めている訳でもないですから。」


 澪桜は慌てるように悠に言う。

 

「ただ、身体に良くないのでほどほどにして下さいね?もし悠くんに何かあったら私泣いてしまいますよ?」

「うっ…。澪桜にそんなこと言われたらなぁ。分かりました。ほどほどにしときます…」


 悠は澪桜を悲しませる訳にはいかないと思った。

 徐々に減らして行こう…。

 出来るかな…俺。

 早速弱気になっている悠であった。

 

「も〜悠くん最初から弱気になってますよ?まぁ結婚して子どもが出来たら嫌でもやめてもらいますけどね?」 

「こ、子どもっ!?」


 悠は澪桜がいきなりぶっ込んできたのでつい大きな声で聞き返してしまう。


「え?悠くんは将来、私との赤ちゃん…欲しくないですか…?」


 澪桜は恥ずかしそうに顔を赤くしながら上目遣いで悠を見る。

 何度も言うが、その表情は反則…。

 そしてそのセリフも。

 澪桜との赤ちゃん欲しいに決まってるだろ…。


「も、もちろん欲しいよ!後々は…もちろん。俺もちゃんと考えてるから…。」

「あ〜。悠くん…。なんかエッチなこと考えてますね?」

「えっ?い、いや…そんなこと考えてないって!」

「怪しいです…。もぉ〜悠くんったらぁ…。私…恥ずかしいです…♡」


 澪桜は照れながら身体をもじもじさせて自分の世界に入っていた。


「いやん♡悠くんそれはまだダメです〜。」

「澪桜…戻ってこい。」


 悠は澪桜の可愛いおでこにコツっと軽くデコピンを入れる。


「あうっ。し、失礼しました。私ったら…恥ずかしい…。」


 まっ、そんなところも可愛いからいいんだけどな。

 二人はそれからお互いの今日の出来事を話しながら帰った。

 こうして、悠と澪桜は帰り道を歩き、二人の楽しそうな笑い声が夜の街に響いていた。


*   *   *   *   *   *


 陸は飲み会が終わり、自宅まで歩いていた。

 飲み会のお店から陸の住む家までは徒歩10分くらい。

 割と賑やかな地区であるため駅を含め、大体の店や施設は歩いて行ける範囲にあった。


「は〜疲れたな〜。香奈はもう家にいるかな。」

 

 陸はRINEで香奈にメッセージを送る。 

 すると、すぐに返信が来る。


「もうとっくに来てるよ!おーそーいー」


 メッセージを見るだけで帰りが遅いことにご不満なのが分かる。


「しゃーないな〜」


 陸はコンビニでアイスやスイーツを買って持って帰る。

 コンビニを出て少し歩くと、もう家が見えてきた。


「ただいま〜。遅くなってごめんね〜」

「あ、おかえりー。私来るの分かってるのに遅すぎじゃない?」


 香奈は不満気な顔で陸を問い詰める。


「まだ夜の9時30分だよ?早い方だと思うけど。まぁ待たせたことは悪かったから、はいこれ」


 陸は先程のお土産を香奈に渡す。


「おお。ありがとう。これで許すわ。」

「ははは。現金なやつだな〜。」


 陸は甘い物で機嫌を良くする香奈を見て笑いながら見ていた。

 

 佐倉香奈さくらかなは、陸が2年間付き合っている彼女である。

 背は高めで165センチくらいのスレンダー体型。

 テニスをしていたこともあり、全身は健康的に日焼けしていて、黒髪ショートヘアーの綺麗系な整った顔。

 タイプ的には美月の様な感じだ。

 側から見ても、美人だと思う容姿だった。

 性格は明るくて活発で人当たりも良く、誰とでも仲良くなれるまさに陽キャであった。


「陸〜。明日の土曜日だけど何する?」

「そうだな〜。特にやることないし、ちょっと足伸ばしてショッピングモールでも行こうか」

「あっ!いいね。デートしよっ。デート!どこ回る?」


 陸と香奈は週末デートの計画を立てるのだった。


*   *   *   *   *   *


 所は変わって悠の自宅。

 悠と澪桜は風呂を終えて、リビングのソファーに座りながら土、日の予定を確認していた。


「日曜日は澪桜の家に行くんだよな。何時頃に行けば良いかな?」

「お父さんとお母さんには10時くらいに行けると連絡をしましたので、それ位の時間に向かいましょうか。」


 平然としている悠であったが、彼女の両親に挨拶するなど人生初の体験なこともあって実はかなり緊張していた。

 澪桜はそんな悠の緊張を感じ取っていた。


「悠くん?大丈夫です。私の家族はみんな悠くんを歓迎してくれます。だから心配しないで下さいね?」

「ありがとう澪桜。彼女の家に挨拶行くのなんて人生初だからさ。でも澪桜が言うなら大丈夫だと思ってる。」


 澪桜はそんな悠の表情を見て、胸がキュンキュンしていた。

 か…。かわいい〜♡

 普段はあんなに男らしくて頼りになるのに、たまにみせる可愛い表情…もぉ、たまりません。

 

 澪桜は辛抱たまらなくなり悠に抱きついた。

 悠の右腕は、部屋着1枚を隔てただけの大きな胸に埋まっていた。

 その感触に悠は頭がショートしそうだった。


「あ、あの…。そんなくっつかれたら…」

「そんなくっつかれたら…どうしちゃうんですか…?」


 澪桜は分かっていてわざとその凶器を悠に押し当てていた。

 悠はそんな情欲を掻き立てる澪桜の表情にどうに今すぐにでも押し倒しそうになっていた。


「ふふっ。悠くん?それは寝る時ですよ…♡」

「は、はい…。」


 仕事ではあれだけやり手な悠でも澪桜を前にすると手籠にされるのであった。

 このままの雰囲気ではどうにかなりそうな悠は無理矢理話題を変える。


「そ、そういえば手ぶらで澪桜の家にお邪魔する訳にはいかないし、明日はデートも兼ねてショッピングモールで手土産でも買いに行こうか。」

「あっ、いいですね。この前行った所ですよね?私まだ見れてないお店もあったので行きたかったんです。」

「じゃあそうしようか。そういえば、付き合ってからちゃんとしたデートするのは初めてだな。なかなかデート連れてってやれなくて悪いな。」

「はいっ。とても楽しみです。まぁ、私は普段から悠くんと一緒ですし、悠くんの為に色々お世話出来るので充分満足なのですけど♪」


 澪桜は心からの笑顔で悠に笑いかける。

 なんて良い子なんだろうか…。

 今後はもっと楽しい思い出を沢山作ってあげようと心に決めた悠であった。


「じゃあ明日のデートに備えてそろそろ寝ましょうか?」

「そうだな。明日は一日楽しもう。」


 二人は就寝の準備を終えてベッドに入る。

 久々に酒を飲んで良い感じに酔っていた悠は横になった瞬間に睡魔に襲われていた。


「………」

「悠くん?」

「………」

「悠くん寝ちゃいましたか…?」

「すぅ…すぅ…」


 悠は澪桜の言葉に寝息で返す。

 今日の澪桜は普段よりも悠と過ごした時間が少ないこともあり、悠成分が足りていなかった。

 それにいつもよりも悠にくっついていたのは、夜に沢山可愛がって欲しいというアピールだった。


「もぉ…。先に寝ちゃうなんて…。私のこの高ぶりはどう鎮めればいいんですか…?」


 澪桜は悠に抱きついて首元に顔を埋める。

 そして、悠の匂いをこれでもかという程堪能する。


「はぅ〜。悠くん…。悠くんが悪いのですよ?私を置いて寝てしまうから…」


 悠は寝ながらも澪桜をきつく抱きしめていた。


「やっ…♡悠くん?起きてるのですか?」


 悠からの返事はない。


「も、もう…私我慢出来ません…」


 澪桜は自分と悠の下の方に手を伸ばす。


「はぁ…はぁ…。悠くんったら、寝てるのに…元気なのですね♡」


 そして、自分と悠のズボンに手をかける。

 澪桜の欲求はもはや限界。

 いつの間にかそのままの悠を受け入れて一つになっていた。


「んっ…。私、いけない子です…。悠くんが寝ているうちにこんなこと…。でも、そのままの悠くん…とてもいい…♡」


 澪桜は無我夢中になっていた。

 そして、最後まで登り詰めた澪桜は心地よい疲労に包まれてそのまま眠りについたのであった。

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