第13話 彼女が家に来ました②
悠は、リビングから澪桜が料理をしている姿を嬉しそうに眺めていた。
澪桜は、楽しそうに鼻歌を歌いながらキッチンを動き回っていた。
ポニーテールに結んだ髪がゆらゆら揺れている。
「もっと近くで見ていたい…。」
悠はキッチンを仕切るカウンター前に立って、カウンターに肘をつき手に顎を乗せる格好で澪桜が料理している姿を見ていた。
「あら?悠さん。お腹が空いて待ちきれませんか?」
「いえいえ!大丈夫ですよ。ただ澪桜さんが料理している姿を近くで見たかっただけです。」
「ふふっ。もぉ、悠さんたら♪」
こんなに可愛い彼女が自分の為にご飯作ってくれていたら誰でも見たいよな?
澪桜は照れながらも手際は良い。
どうやらグラタンはホワイトソースから作っているようだ。
「ホワイトソースから作ってくれるなんて、澪桜凄すぎますよ!」
「悠さんは私を褒めすぎですよぉ。悠さんのどんなリクエストでも作りますから、おっしゃって下さいね?」
俺の彼女は優しくて、可愛くて、料理も出来る。
もう惚気るしかないだろう。
こうして待つこと1時間くらいで澪桜は料理を完成させる。
ダイニングテーブルには、海老が入ったマカロニグラタンとサラダ、ポトフが並べられている。
「めちゃくちゃ美味しそう…。」
「本当ですか?良かったです。」
「俺、実家出てからこんな手料理を作ってもらうの本当に初めてで。しかもそれが俺のリクエストで澪桜さんと一緒に食べれて…。こんなに幸せでいいんでしょうかね?」
悠はもう感動で泣きそうであった。
「これからも、毎日悠さんに美味しいご飯作りますからね?今日はお仕事お疲れ様でした。それでは食べましょうか。」
「はい。いただきます!」
「召し上がれ♪」
悠は澪桜がホワイトソースから作ったグラタンを食べる。
「んっ!美味しいですよっ!凄く美味しい。こんな美味しいグラタンは初めてです!」
出来立てのグラタンはチーズが香ばしく、絶妙な茹で加減のマカロニが入っており、クリーミーなホワイトソースが味をまとめている。
「お店、出来るんじゃないかな…」
「ふふっ。悠さんは大袈裟ですよ?それに…私は悠さんにだけ作れればいいんです。作る時に愛情をたっぷり入れてますからね?他の人にはこの隠し味は入れられないのでっ。」
悠、澪桜の可愛さに爆死寸前。
「ま、まぁ確かに、澪桜の料理は食べれるのは俺だけでいいかな…。」
「あら、悠さんに独占されちゃいました♡」
2人はイチャイチャしながら食事を楽しむ。
澪桜は、フォークでグラタンを取り口元まで持ってくるとふぅふぅと冷ましている。
「はい。悠さん、あ〜ん♡」
「えっ!?あ、ありがとうございます。あーん」
「えへへ♡美味しいですか?」
「……。最高です。」
……。グラタンよりも熱々な2人であった。
この後もお互いに「あーん」し合って仲良く夕食を食べ終わり、悠はお皿を片付けて皿洗いをしようとキッチンで腕まくりをする。
「悠さん?何をしようとしてるのですか?」
「えっ?ご飯作って貰ったし皿洗いを…。」
「ダメです。悠さんは今日お仕事頑張ったのですからご飯を食べたらゆっくりしていて下さい。」
「い、いえ。悪いで…。」
「悠さん?」
とってもにっこりな笑顔で食い気味に名前を呼ばれ、覗き込まれる悠。
「は、はい。よろしくお願いします。」
「はい♪お料理は洗い物までがお料理なんですよ?」
と澪桜はまた鼻歌を歌いながら洗い物を始めた。
澪桜さんには敵わないな…。
それを思い知らされた今日この夜であった。
それにしても、こんなに甘やかされていいのだろうか…?
洗い物が終わり、時刻は夜の9時過ぎ。
「あ、あのぉ、悠さん?」
澪桜が上目遣いで悠に問いかける。
そんな可愛い顔でこっちを見るなんて反則じゃないですか?
「はい?どうしました?」
「その…、明日も朝ご飯とお弁当を作らないと行けませんし…夜も遅いので今日…その、お泊まりしてもいいですかっ?」
「お、お、お泊まりですか?俺は全然良いですけど、ご両親とかは大丈夫なんですか?」
悠は、澪桜の提案に驚いていたが、澪桜が泊まっていくことは全然構わない…もとい、めちゃくちゃ嬉しい。
ただ、いくら成人でも娘がいきなり朝帰りしたら親は心配するだろう。
「両親にはその…彼氏の家に泊まるかもと言ってあるので…悠さんがよろしければ特に問題ないというか…。」
「それなら、全然大丈夫ですよ!むしろ泊まっていってくれたら嬉しいです。」
「あ、ありがとうございます。悠さんと朝まで過ごせるなんてっ。えへへ…。幸せ♡」
澪桜の表情は蕩けきっている。
「一緒のベッドで寝ましょうね?悠さん♡」
澪桜はいつもに増して甘々メロメロモードになっていた。
「と、とりあえず風呂沸かしますから、少しゆっくりしましょう。」
悠はテレビをつけながら澪桜にソファーで座っているように言い、ホットコーヒーと暖かい紅茶を用意してリビングに持っていく。
「悠さん、紅茶ありがとうございます。」
「食後のお茶です。お風呂が沸くまでゆっくりお話しでもしましょう。」
2人は、風呂が沸くまでの間、暖かいものを飲みながらまったり話をする。
「澪桜さんはいつも何時くらいに寝て何時に起きますか?」
「ん〜寝る時間はバラバラですが、大体11時くらいでしょうか。朝は予定がない時でも7時には起きますよ?」
「結構早起きなんですね!明日の帰りはどうします?通勤の時に送るか、俺が仕事出た後にゆっくり帰りますか?そうすると歩きになってしまいますが…」
「明日は歩いて帰りますので大丈夫です。お家のこと少しだけやってから帰りますので。」
どうやら家事をやってくれるらしい。
ここで悪いと断っても澪桜さんの可愛い攻撃に陥落することは目に見えているので甘えさせてもらう。
「ありがとうございます。ではお願いしてもいいですか?家の事までやらせてしまってすみません。」
「私が好きでやるので悠さんは気にしないで下さい。」
「あっ、家の鍵今のうちに渡しておきますね。」
悠はスペアの鍵をカバンから取り出して澪桜に渡す。
「は、はい!ありがとうございます。責任を持ってお預かりしますねっ。」
澪桜は嬉しそうに鍵を眺めていた。
すると、風呂が沸いたことを伝える音声が鳴る。
「澪桜さん、先にお風呂入ってください。俺は仕事の件で少しやることがあるので。」
「いいのですか?一番風呂は悠さんと思っていたのですが…」
「どうぞどうそ。澪桜さんが上がる頃にはやること終わらせときますので。」
「では、申し訳ありませんが、お先に頂きますね?」
澪桜は部屋着などを用意して風呂に向かう。
俺の家の風呂に澪桜が浸かるというのはなんだか変な気分だ。
想像しただけで、胸熱だ…。
悠は澪桜が風呂に入ると、仕事のスケジュールを確認して、あらかじめ準備出来ることの調整をしておく。
しばらくして、澪桜がリビングに戻ってくる。
「お待たせしました。悠さんもお風呂どうぞ?」
悠は澪桜を見ると…
濡れた髪にほてって赤くなった頬。
普段と違う澪桜の部屋着姿に悠はドキドキが止まらなかった。
部屋着は薄ピンク色のもこもこ生地。
メイクを落とした澪桜はすっぴんにも関わらず透明感があり、大きな目に長いまつ毛、真っ白な肌。
相変わらず、麗しい。
今すぐ抱きつきたい。
「は、はい。行ってきます!」
悠はこれ以上、澪桜を見ているとどうなるか分からないと急ぐように風呂に向かう。
悠は身体をいつもより念入りに洗い、湯船に浸かる。
「この後、何かあるかも…しれないし…。」
悠は悶々としながら湯船に浸かり、ピンク色な妄想を垂れ流していた。
「このお湯にも澪桜さんが…。か、考えるなっ。変態みたいだろ…。」
悠は澪桜のことになると毎回壊れるのであった。
「のぼせそうだ。そろそろ出るか…。」
悠は風呂から出ると、着替えを持っていくのを忘れていることに気づく。
「やってしまった…。いつもの癖で手ぶらで来ちゃったよ…。」
仕方なく、タオルを巻いただけの姿でリビングに出る。
ソファーでまったりスマホを見ていた澪桜は悠が戻ったことに気づき、顔を向ける。
「あっ、悠さんおかえ…りなさい…。」
「ごめんなさい。こんな格好で。いつもの癖で着替え持ってくの忘れちゃって…。」
澪桜の顔は火を吹くのではないかというくらい真っ赤になっていた。
「い、いえ…。その…お気になさらず…。」
澪桜は顔を逸らしながら小さな声で呟く。
「悠さん…なんて逞しいお身体…。」
澪桜はハァハァしているのだろう。
悠は聞こえなかったふりをして急いで風呂場に戻る。
着替え終わった悠は再度リビングに戻り澪桜に謝る。
「先ほどは申し訳ありませんでした。配慮が足りずに…。」
「いえいえ!そ、そんな。むしろ…ありがとうございますというか…」
澪桜さん心の声が言葉に出てます…
時刻は12時に近づいていた。
お互いに髪を乾かしてから歯を磨き寝室のベッドへ向かう。
「明日も早いですし、もうそろそろ寝ましょうか?」
「はい。一緒に寝るの初めてですね?良く眠れそうです。私、悠さんの匂い大好きなんです。」
俺の匂い…?俺、匂いするのだろうか?
大丈夫か?臭かったりしないよな?
セミダブルのベッドに2人は寝転ぶ。
いつもは少し広いくらいなのに、澪桜と一緒に寝ると次は少し狭くも感じる。
「悠さん…。もっとこっちに来て下さい…。」
耳元に近いところで澪桜が甘い声で囁いてくる。
悠はドキドキしながらも澪桜の方へ身体をずらす。
恥ずかしくて澪桜とは反対の方を向いて横になる悠に澪桜は頬を膨らませながら抱きついてくる。
「悠さんは…私と寝るの嫌ですか…?」
澪桜はそう言い、悠を抱きしめる力を強める。
悠の背中には澪桜の大きな胸が押しつけられてその感触が脳をショートさせていく。
「こっち向いて…?」
悠は恐る恐る澪桜の方に向き直る。
「あ、あの…。ごめんなさい。恥ずかしくて反対を向いてただけで…というか、嫌なわけがないじゃないですか…。」
悠は今まで誰にも見せたことのない焦りと羞恥の表情で澪桜に答える。
いつもある余裕は全く感じない。
澪桜はそんな初めて見る悠の表情にゾクゾクするのを感じる。
ああ…悠さん可愛い〜〜♡
こんな可愛い悠さんをもっともっと甘やかしてあげたい…
「あ〜ん…悠さん〜♡」
悠は澪桜の胸に顔を埋めるように抱きしめられる。
もう揉みくちゃにされて、悠はもはや戦闘不能。
「可愛いすぎます〜。いっぱい甘えて下さいね♡」
悠の顔は澪桜の胸に埋められ、右、左から圧倒的な質量と柔らかさが襲いかかってくる。
というか…この感触…ノーブラだよね?
「む〜。ぷはぁっ。み、澪桜さん。もしかして今、ノーブラじゃ…」
「はい。私、寝る時はつけない派なのでいつもこうですが?」
澪桜はそれが普通だと言わんばかりの態度で答え、引き続き悠を甘やかしている。
悠は澪桜の甘々スキンシップにとうとう陥落した…。
澪桜の背中に腕を回して抱きつく。
そして、自分から澪桜の圧倒的な双璧に顔を埋めてみる。
「ひゃっ♡もう…悠さん…私、これ以上はイケナイ気分になってしまいます…」
「俺は…もうなってますよ…。澪桜…」
「こんな時に呼び捨てなんてずるいですぅ…」
2人は初めて共にする夜で身体を絡み合わせる。
部屋に聞こえるのは、艶のある澪桜の声と2人の吐息のみ。
「あ、あの…私こういうこと初めてなので…その…優しくして下さいね?」
「じ、実は俺もその…最後までは初めてで。この歳でそんな男引きますよね…」
「えっ…悠さんも初めてなのですか?それじゃあ私達初めて同士…。私とても嬉しい…。」
「悠くん愛してます。」
「俺も愛してるよ。澪桜…。」
悠は澪桜の細い腰を撫でるように堪能していく。
「はぁ…ん。悠くん…」
「澪桜…。そろそろ…」
「はい…来て下さい、悠くん♡」
2人は時間を忘れてお互いを求め合う。
そしてこの夜、2人は大人になったのであった。
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