第4話 護衛役
冬美香は、五人組の男らに駅の奥へ連れてこられると、話しかけてきた男に再び問いかけられる。
このうち一人は見張りのためか、出入口の方へと戻っていった。
「昨日の出来事だろ?本当に覚えてねぇのか?」
そう言いながら、男は冬美香に顔を近づける。
「……覚えてません」
冬美香は今にも泣き出しそうだが、必死に涙をこらえ、恐る恐るそう答えた。
次の瞬間。
「とぼけんなやゴルァ!」
恐ろしい形相で、男は冬美香を怒鳴りつけた。
突然のことに、冬美香は震えながら涙をこぼす。
「俺にクソみたいな接待した挙句、お前の仕事終わりを待ってやった俺を無視してすげぇ速さで消えていきやがって。何のために大金払ったと思ってんだ?」
(ほんとに誰?……)
刺青集団の恐喝で、冬美香はパニックに陥っている。
「俺が誰だか分かってんのかな?わざわざ君の働いてるとこの店長から学校聞いてここまで来たんだけどさぁ……俺らはそんなに暇じゃねぇのよ、貴重な時間割いてんのわかる?客が損害被ってんだからさぁ、こういう時どうすんの?補填だろ?穴埋めでしょ?具体的な解決策とか教えて欲しいんだけど?君の口から」
男は、冬美香の腕を強く掴んだ。
涙を流しながら震える冬美香を見て悪巧みを思いつく。
(昨日、俺はこの女をバー誘ってやろうと律儀に入口の外で待ってたんだ。そして優しく話かけたにも関わらず、あろうことかコイツは逃げやがった……!それにイラついて来てみたものの、本当に記憶が無ねぇなら都合が良いッ!有ること無いこと認めさせりゃあコイツを好き勝手にできる!コイツの収入を俺の借金返済に充てれば……)
「本当に覚えてません……離してください……」
冬美香は、あまりの恐怖の中で、微かな声と力で抵抗する。
「泣いて許してもらえる社会じゃ無いでしょぉー!?」
女性一人を四それでも冬美香は、出せる限りの微かな声で懇願する。
「どうしてこんなとこするの……家に帰らせて……ただ帰りたいだけなんです……」
(もういやぁ……恐いよぉ……)
この状況下に、
涙で滲んだ冬美香の瞳の色が、徐々に変色していく。
すると突然、「ドスッ」と鈍い音が聞こえると同時に、先程まで冬美香を恐喝していた男が地面にうずくまった。
「どした?」
仲間たちは困惑する。
「うぉぉ……金的がぁ……」
そう言うと、男は意識を失った。
「テメェ何しやがるッ!?金的潰れたらどうするつもりだぁ!?」
「喝上げして帰るって聞いてたんだけど?なんか長引いてね?俺帰っていい?」
「じゃあ早く締め上げようや」
いきなり倒れた仲間に、三人共々は若干困惑しつつも、引き下がる姿勢は見せない。
(あいつの金的蹴っちゃった…けど、抵抗しなくたってきっと酷い目に遭う……大丈夫、今日もきっと大丈夫、私の身は何としても守る!私が……私の中で一番強いんだから!)
冬美香は、初心者ボクサーのような構えで臨戦態勢に入る。
「すげぇ変貌っぷりだな……まるで人格ごと変わったみてぇだ……にしても可愛らしい構えだなぁ」
「まぁとりあえず、分からせんといけんよね」
「お前いけよ?俺素人殴って捕まりたくねぇし」
「何それ?ビビんなや。」
そんな会話をしながら、男らは冬美香に拳を振り下ろした。
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