清掃員の石上さんと田中さんは気が合う
@sankusu3232
第1話 清掃員の石上さんと田中さんは強い
今日はこのビルか。
「腕がなるな」
「そうですね」
石上と田中はそう言って少し古びた5階建てのビルへ入っていった。
今日の戦場および清掃場所は3階のトイレだ。
トイレへの扉は閉まっているのに、入る前から異臭が漂ってくる。
普通なら、この匂いで用を済ませることは高難易度だが、我々にとってはそんなものは関係ないも同然だ。
二人とも、左手にブラシ、右手に洗剤を持ち準備は整っている。
石上が扉を開け、戦場へと入っていった。
まずは、トイレの配置を確認し、目で自分の相手を伝える。
石上は5つ並んでいるトイレの一番端へ、反対に田中は一番手前のトイレへと入った。
さっと目で敵の位置を確認した石上は洗剤を手際良くかけた。すると、すぐにブラシで敵を叩く。田中も同様に作業を済ませた。
問題はここからだ。蓋の下に一体何が潜んでいるかでこの戦場の本当の難易度が決まる。敵次第では共同で倒さなければならないかもしれない。
熟練清掃員の石上と田中でさえ、この時だけは固唾を飲む。
石上と田中が同時に蓋を開けるとそこには、こちらに牙をむける大きな茶色の龍がいた。
「おいおい。ビッグな野郎だ」
「あらま」
思わず二人は声を出した。敵は思いの外大きい。
だが、今までを思い返すとこれほどの敵とは何度も渡り合ってきた。気を取り直した石上と田中は、小手調に勢いよくレバーを引いた。しかし、びくともしなかった。
「なかなかの大物じゃないか」
「やりますね」
この敵にはそれ相応の力で対抗しなければいけないと認識した二人は、洗剤を大量にかけ、敵の目を塞いだ。
「「ここからが本当の勝負」」
二人は目にも留まらぬブラシ捌きで、敵の体を削り取っていった。それと同時に、敵から発せられる異臭の原因に対処するために、ポーチに入れていた消臭剤をトイレの個室全体にかけた。
すると、みるみる敵の姿は小さくなった。
「終わりだな」
「チェックメイト」
その後、敵の姿は闇に消され、二人は次の戦場へと入っていった。
「なかなか骨のある奴らだったな」
「そうですね。まぁ、Top50には入る敵でしたかもね」
「相変わらず厳しいな笑」
二人の清掃物語は続く。完。
清掃員の石上さんと田中さんは気が合う @sankusu3232
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