第23話:ロクデナシほど闇がある.....



「しぃません〜いつものをぉくだぁさい〜」


「はい!いつものですね!」


 私はいつもの物を取り出し、目の前の限りなくダメそうなエルフの常連さんに渡す。


「はぃがとうごじぃます。コレでぇ大丈夫ですかね〜」


「はい!大丈夫ですよ!」


 差し出された銀貨5枚を受け取り、引き出しに入れる。


「ありがとうございました!」


 常連さんにお礼を言い、いつもなら、商品の陳列作業に戻る。


(でも、今日は思い切って聞いてみよう!)

「すいません!少し時間良いですか!?」


「はいぃ?」


 酔っ払った声と共に、キレイな真っ赤な顔がこっちに向く。


(この人ホントに大丈夫なのかな.....)

「少し聞きたい事があるので、少し時間良いですか?」


「はいぃ〜良いでぇすよぉ〜」


「えっとですね。まず、なんでそんなにダメダメな物ばっかり手を出してるんですか?」


「辛いことはぁ感じたぁくは無いんですよ〜事情〜は色々ですぅよ〜」


「なるほど!確かに嫌な事は有りますよね!私もこの島でずっと暮らすの嫌ですし!」


「大丈夫。将来ぃ的には出られるかぁもしれないですならぁ。」


「期待して待ってますよ!」


 そのあと、少し近況報告を兼ねて雑談をしていたら、少し汚れた人が入ってきた。


「お邪魔。ダラーさん居ます....ね。ちょっと来てください。」


 だいぶ急いでいる様子だ。


「んにぇ?なひなひ?」


「あー、ダメだこりゃ。すいません水下さい冷まさせるんで。」


「はいどーぞ!」


「どーも。」


 水の入った瓶を投げ渡して、緑の人がそれを受け取って、水を強引にダラーさんの口に流し込む。


「アバババババ」


(正直始めは、その辺の川の水飲めば良いのに、何で置いてあったのかわからなかったけど、この人お金持ってるし原価ほぼタダだし、凄い儲けでるんだよね.....ありがとう!)


「ごぇっぐぉぇっ.....うぉえ.....ぐぅ.....」


「大丈夫ですか.....?」サスサス


 座り込んで苦しんでいるダラーさんの前に桶を出して、背中をさすって気分を楽にさせようとする。


「あっ......大丈夫です.....なんとか.....」


 いつもと真反対の顔色を上げると、しっかりと呂律の回った言葉をかけられる。


(珍しい.....)


「それで.....セナツさんは何の用ですか?かなり汚れてますけど.....」


 私が少し驚いていると、急に真面目な口調で緑の人に話しかけた。


(なんか真面目な話だし、私は自分の仕事に戻ろうかな。)


 そう思い、店の倉庫で商品と救急キットの整理に向かう。


[視点チェンジ]



「簡単に言うと、私がさっき例の奴と戦った。それで何となくの技術が分かって、暗黒残して城に戻った。それを変人に報告したら、連れて来いと言われた。それで都合が良いのがダラーさんだった。以上。」


「......要するに.....眠らせて何とかしようって事ですよね.....今私が出来る範囲だと.....」


「その通りです。酔い直しの為の酒はいつもの所にあります。それでは。」


 そう言い、地図を残して、セナツは店を後にした。


「ギリギリ.....頭が回る位は....戻ったかな...でも.....アレだ....ダメだ.....早く終わらせるしか無い.....」


 頭の中だけじゃ覚えられないから


 声に出して覚える


 後悔の記憶を クスリで壊す


 それでも勝手に治される記憶を


 今度は酒でまた壊す


 どんどん抜け出せなくなっていく


 それがあの人らしい。

 

 私にはわからないな。

 ↑

 やっぱりサボって見てた人




〜時間が経って〜




「へ〜、やっぱり人間の探究心は凄いな」


 俺は目の前に眠っている、変わった奴の手帳に目を通す。


 手帳はところどころ黄ばんでおり、かなり年季が入っている事が分かる。


 魔法・人物・出来事・魂、これがが簡潔にまとめられていて、無駄が少ない。


 けれども、所々変な感じがする。


 目のクマもかなりあるし、何らかの精神障害でも持っているのか?


 まぁでも、聞けば分かるか。


 俺は目の前の奴が起きるまで、手帳を読み続ける事にした。

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