第22話:懐かしい記憶といつもの睡眠


「あ〜どうしよう〜」


 多分今は昼ぐらいだ。

 微妙に暗い、日が上がったばっかりの時。

 それが真上でギラギラ光るぐらいになっている。


 というかこの範囲の暗闇を回収せずに、どっか行ったんだ。多分相当な魔力を持ってるよな.....相手が身体強化を好んで使うタイプじゃなくてよかった。


 しかも、戦って体感それなりに経っているがちっっっとも晴れる気配が無い。


 一応乗り物みたいなのと、ゴーレムは回収出来たし、帰ろうと思えば.....ギリギリ帰れるのか?持ち上げて土の道を作りながらやればわんちゃん.....

 でもさっき上から見渡してみたけど、辺り一面何の変わり映えもしない木の景色だし、多分足りずに崩れておしまいだ。


 かといって、この暗闇が晴れるまで待つのも、いるであろう魔王軍のなんちゃらに攻められる事もありそうだし......


(..........正直進んでる途中で力尽きて、暗闇の中で待つ方が、多分精神ぶっ壊れる.....だったら普通にここで待ったほうが良いか。)


 俺は早速、乗り物に込められていた魔力を使い、丸い建物を作り、結界魔法で窓的なのを作って結界魔法を全体に張る。


(後は、暗闇が晴れるまで待つだけか.....暇だしなんか見るか。)


 ローブの内側から手帳を取り出し、テキトウなページを開く。


(おっ、魔力うんぬんのページだ。何書いたっけな〜)


〈魔力に関して〉


 魔力は、簡単に言えば体内の魔臓って所で作られて、血の中のマジカアポテキスっていうのに運ばれている。

 そのおかげ全身から魔法やらなんやらを飛ばすことができるし、魔力量を調節できる。

(ただし、布やら何やらが邪魔してあんまり上手くいかない)


 魔法使いが、どいつもこいつも杖を使ってるのは、杖の持ち手と内部にマジカアポテキスを含む変な物質が入っている。

 だから魔力を一箇所に留めたり、魔力を火やら水に変える時に、無駄に出ていく魔力が少なくなるらしい。


 ちなみに杖やら剣やらを作ってる職人に原材料を聞くと、本当に“あっ、コレヤバいなトラップを踏んだ”ってなるから絶対にしてはいけない。


(.....改めて見ると結構書いてるな.....でもこんだけ書いたりしてるけど、魔力の始まりは未だにわ)


「SLEEP」


 魔法を唱える声が聞こえた瞬間.......瞬間.....




《ゴクへの道①》




『村』



「ねぇ!アルロ!」ドタバタ


「ん?」

「あっ、アインだ」


 走りながら近寄ってくるのは、結晶模様の眼の男の子.....泥だらけになっているアインに呆れながら手を振る。


 なんか隠してる?


「はぁ....はぁ....ねぇねぇ!一緒に冒険者にならない!?」


「何を血迷った?」

「良いねぇ!まずはどんな奴から殺す?」

「うん。マトモなのは俺だけかよクソが。」


「そんなこと言わずにさぁ〜良いじゃん良いじゃん!世界救おうよ!魔王のせいで世界がめちゃめちゃになってるらしいし!」


「犠牲を自己中な理由で使うな!というかお前何歳だよ。」


「12歳!」


「バカがよぉ!成長期だぞ!力も金も無いのにどうやって冒険者になるんだよ!?武器すら買えねぇよ!」


「そーだそーだ!」


「おい」


「ふっふっふっ!それなら安心してよ!」


 さっきから隠してた物をアインが目の前に出した。


「.......おい.......」


「あはは.....」


 絶句した様な声と、乾いた笑いが俺たちから出る。


「いや違うんだよ!?」


「まだ言ってねぇよ。」


「魔力のある意味正しい使い方だけどね?でもさぁ.....」


「違うんだよ!これは、近くの洞窟で落ちてたから拾っただけで!」


「おぉおぉおぉ!じゃあお前、その赤いやつは何だよ。」


「魔物の血だよ!」


「持つところにあるのは?」


「しーらね!」


「うわっ.....」


「やってること山賊とかと同じじゃん....」


「でもコレで冒険者にはなれるよね!」


「......まぁ良いや.....」


「良くはなく無い?」


「でも、冒険者の登録をするのには、ギルドって所で冒険者としての登録も必要だし、この村からじゃぁさ、かなり時間も掛かるぞ?そりゃ馬車とか使えればマシだけど。」


 俺がそう言うと、アインが懐から小袋を出して、俺たちに見せてきた。


「......もう.....本当に......コイツは......!」


「わぁ〜こんな頭のおかしいやつが周りにいたなんて.....怖」


「細かいことは良いじゃん!さっ、さっさと行こ!」


「あっ、もう?」

「えっ、大丈夫?頭?」


「うん!君たちだって魔法使えるでしょ?」


「違うそうじゃない!


「あと、あの赤髪の子も連れて行こうよ!」


「アイツは昨日から行方不明だぞ。なんならアイツの親すら昨日消えたらしいし。」


「ふ〜ん.....じゃあ大丈夫....かな?それじゃあ行こう!」




 こうして俺達は、馬車と人を借り、村を去った。


 そして.....二度と村に戻る事は無かった

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