第11話:判断の誤り。


【9:25 a.m.】



(.....よし。コレで全部か。5分前だしそろそろ出るか。)


 肉類をバッグに詰め終わり、見回りに行こうと立ち上がると、


「お、ロウラだ!どうしたそんなデッカいバッグ持って?」


 話しかけられた方をみると、がお菓子のようにクルクルに巻かれた髪に、ニット帽を被った少しやかましいメガネが居た。


(はぁ....朝からは関わりたくない人と会ってしまった.....)

「どうしました.......?ノイズさん....」


「いや、そんな大した用でも無いんだけどね?」


「じゃあ自分はこれで。」


「ちょっと待った!そんなドライな反応されると辛いから!」


「いえ....もうそろそろ時間なので、陰隠密影忍曲異者カゲオンミツエイ シノブマガイモノ


 ノイズさんの目の前から姿を消し、そそくさと別の所に移動しようとする.....


「あれ?影も見えないし、消えた?」


(......さっさと行こう......)


「はぁ、先輩の話は聞くのが安牌だと思うんだけどな〜まぁしゃーない。さっさと仕事するか。」


 そう言いノイズさんが去っていった。


(ふぅ.....物陰に隠れればわからないか...... さっさと行こう.....)


 そう思い、亜空間移動をしようとすると、


「あっ、そうそう。」


(危ない......)


 身体を反り、片足でコチラを覗いてきた。


(亜空間接続円の発生が少し遅くて助かった.....あの人少し面倒くさいし......)


「セナツの技を真似るのは良いと思うが、不意打ちの技を真似てて勝てるか?あんなデッカい声出して?」


(ごもっとも.....)


「それじゃ、後でなアホ天才。」


 そう言い今度こそ去って行った。


(去ったよな?.......はぁ.....少し遅れてしまった......さっさと行こう.....)


 再び亜空間接続円を発生させ、ゴブリン達の巣へ移動する。




〈視点:アルロ〉



「はぁ.....」


 ゴブリンの壊滅した巣へ向かい始めてはや10分。

 良い感じに土をボートみたいにして、魔力で動かして高速移動している。

 魔力こそバカみたいに使うが、普通に歩いて半日以上かかる所を普通に行くわけがない当たり前だ。

 シルト達と一緒に居た時やらなかったのは、重くなって魔力の消費量バカ上げ俺枯渇で使い者にならなくなる。

 大体、魔法使い魔術師魔導士の魔法頼り3大職業(笑)が魔法が使えなくなったらお荷物にしかならない。

 まぁこの職業ってのも、街を守る結界維持みたいな魔法関係の仕事でも無い限りほぼ自称。

 ニートを24時間対応自宅警備隊、詐欺師を話術巧みなビジネスマン、エ口〇〇漁ってる変態を紳士と言い換えるくらいのこと。流石にキツい。


(そういえば.....シルトはさておき、残りの2人は何で冒険者になったんだ?いや、そもそも冒険者も世界中冒険してるわけじゃないし.....もしかして.....バカか?)


 と、そんなことを考えているうちに例の洞窟に着いた。


(さてと......嫌だな......帰りたい.......じゃあ何できたんだって話だけど.....)





『洞窟内』


〈視点チェンジ〉



「.......おかしい.......」


 洞窟内に入った途端、明らかな違和感を覚える。


 何も見えないくらいの真っ暗なのだ。


 魔物が居る洞窟は、魔力を使わない魔物から溢れ出る魔力によって、一定の明るさが保たれている。

 数によるが、そこに魔物が存在している限り、魔物の視認は可能なレベルになっている。

 これを理解した魔物は群れるが、それを利用して革や目玉などを素材として全滅させる事もある。


(ひとまず明るくしよう.....)


 辺りを明るくすると、違和感の正体に気づく。

 辺りを見渡してもゴブリンを確認出来ず、特有のキーキーした声も聞こえない。それどころか、辺りには腐敗した緑の肉塊が散らばっている。


(......魂も確認出来ない......やっぱり.......)


 死んでからかなりは時間が経っている.....思い当たる奴は.......


“洞窟組はゴブリンキングがいましたがなんとかなりました。”


(...........1人しかいないな......)


 あの時の“何とかなった”は逃げ切れた、じゃなくて殺した。が正しかったのか......


(洞窟に向かってきてるのが居たのは知っていた.......けど.....はぁ......過信.....大丈夫だと思ったんだけど........)

「うまくいかないな.........」


 無念と後悔が混ざった独り言を呟き、念の為奥の方に向かおうとした.......その時......


「あっれ?明るい?」


 暗い奥から、煽りを彷彿とさせる声が聞こえ、やがて声の主の姿がはっきりと見える。


 短髪判定ギリギリの黒髪に、目元には黒いクマ。使い古された事がわかるボロボロで汚れたローブ。それに、後ろには多くの武器が刺さっているゴーレムが居た。


「.......運が悪いのか.....運が良いのか.......」


「ん?」

(ん.........?なんで明るくなってんだ?というか何だこの少し黒ずんでる白髪?なんか前会った気がすんだよな......なんだ?コイツ?)


「突然だが質問。この洞窟にゴブリン達が居たと思うんだが、何か知ってるか?」


(明確な殺意を感じる.......なんか心当たりあ......る......もしかしてゴブリンの仲間か?一応キングの方は喋れたし......人型にはなれるか.......とりあえず......逃げるか.......俺に非がありそうな以上......)


 奴を中心に、魔力がじわじわと地面に広がっていくのを感じる。やっぱりこの姿の方が調子が良いな。


不苦告影炎鬼楽忌蘭フクツエイエン キラキラ

 

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