第8話:薄っぺらい会議と魔法の原理


「で?どうする?」


 現在、俺とシルト達と貴族の5人で魔王との話し合いに向けての会議をしている。

 部屋はよく貴族が飯を食う様な長ーいテーブルが有り、天井には豪華なシャンデリアが飾られている。いかにも成金という感じだ。


「そうだね.....話す内容は大体この3つで良いかな。」


「そうだな。納得してくれるかはさて置き、コッチの事情は伝えられるし.....まぁ、ある程度は覚悟しないとだけど。」


「ここに居られれば何でも良いかな.....」


 貴族の奴は国からの命令で、ここで開拓をする事になったらしい。

 正直それだけだったら、ここに居られれば良いなとか言わないだろうし、何か思い事情がありそうだ......


「さて、話す内容は決まったし、役割を決めるか。責任者のお前が魔王と交渉するのは確定で良いな。」


「あ.......そうだ.....ね......」


 貴族の奴は、演説?の時とは何だったのかと思うほどビクビクしている。


「後、奴隷の受け取り役は.....お前らしかないな。」


「あぁ.....任せてくれ.....」

「もちろん.....」

「頑張るよ......」


 シルト達は不安そうな顔をしながらそう言った。


(まぁ不安だよな......)

「心配すんな。貴族の奴と俺でなんとかなるだろうから。」


「そこは確定させてくれ....」


「まぁ大丈夫大丈夫。」


「はぁ.....」(呆れ気味)


「そういえば.......」


「?」


「あの......万が一その場で襲い掛かって来た時.....僕も逃してくれないかな......」


 貴族の奴が申し訳なさそうにそう頼んできた。


「う〜ん.....ちょっと微妙だな......」


「ごめん.....やっぱり厚かましかったかな.....」 


「いや.....そういう事じゃないんだけが......説明するから聞くけど、まず魔法の原理って知ってる?」


「えっと.....確か体内の魔力を消費して無から有を作り出して.....えっと.....いきなり言われると難しいな......」


 悩む貴族を見て、俺はバッグからメモ帳を出し、それを読み上げる。


「魔法を使うには魔力っていう心臓のちょっと下らへんにある魔臓っていうところから作られる体内の凄いエネルギーを使う必要がある。魔力でまず魔法のイメージをして、それを魔力で実態化させる。この時、技名を叫ぶと、テンションが上がって想像と魔法の実態化がし易くなる。コツとして、次に魔法を飛ばすために実態化した魔法の魔力を消費しちゃうから、思い描いたダメージを出したいなら、思ってる1.5倍くらいの魔力を実態化した魔法にこめる必要ながある。次に、想像魔法を実態化出来たら次に魔法を対象に定めて飛ばす。アノより。」


「なんか覚えてたやつより長いな。あとアノ...って誰だ?」


「まぁ学校とかだと、魔力は魔法を実態化させるためだけじゃなくて、飛ばすためにも必要って、簡単に済まされるし、こんな詳しく覚えてても良いことなんてあんまりないからな。アノは俺の元パーティメンバー。」


「.....?まぁいいか。確かにそうだけど、この説明とアルロが微妙って事となんの関係が?」


「俺の戦闘見たらわかると思うんだが、俺の魔法は周囲の土をいい感じに操作したりするのに特化してるから、周りが無機物で囲まれてると全く役に立たないぞ。俺は。」


「普通に魔法使えば良く無いか?」


「できはするけど全く期待しないでくれ。


「う〜ん.....あらかじめ魔力を散らしておけば出来ないか?」


「う〜ん.....俺レベルになると別にあらかじめやる必要も無いけど......問題は高さと窓だな。結局魔力を色々するにも遮られてると出来ないからな。後高すぎると途中で魔力が切れるからな。」


「.......なるほど.......窓を動かせば良いなら僕にも出来るよ......」


「そうか、じゃあ後は運が大きいから、必要なのは神頼みだな。」


 そう言うと貴族が徐々に絶望した顔になっていく

 

「そんな絶望した顔しなくても......」


「哀れなり。」


「おい。アルロ。」


「それはさておき、とりあえず決められることは決まったか?どうせここで決めても意味薄いし。」


「そうだね..........では夕御飯にしようか。」


 何だろう......貴族の奴の切り替えが早いような......


 貴族の掛け声とともにドアが開き、メイドと執事達がゾロゾロと出て来て、テーブルに色々な料理を置いていく。料理はどれもなんかオシャレで食欲をそそられるうんちゃらかんちゃら


(なんだかな.....コイツ.....なんか違和感があるな.....何だろう......)




『客室』



 夕飯を食べ終えた俺は、貴族の従者に案内された部屋で今くつろいでいる。遅いし泊まっていった方が良いとのこと。


 中は凄いロイヤルな感じでベッドも大きく、貴族というより王様が使ってそうな部屋だ。


(はぁ、腹一杯だ。最近はゴブリン肉とか言う粗悪物しか食って無かったからな.....)


 そんな事を思いながら俺はベッドに入った。


(明日に備えて早く寝るか......)


「おやすみ〜」


 そう言い俺はまぶたを閉じて眠りにつく........








眠りにつく..........








 眠りに..........






(眠れねぇ...........)


 俺は全く眠れる気配が無い自分に嫌気がさす。


「はぁ......」


 将来の不安.....最近のグロイ現場......問題だらけ.....思い描いていた辺境開拓の現実........


 これでもかと襲いかかる現実の痛み。気付く違和感。俺の負担の大きさ......


「はぁ.....こんな事考えてたら頭イカレるわ!」


 そう思った俺は、外を目指し始めた。

 


『屋上』


(入り口閉まってたけど屋上はあるし、鍵もかけてない......ガバガバだな......もっと防犯面警戒しろよ.....ん?)


 誰かが柵に寄りかかってる?


「誰だ?」


 俺が声をかけると寄りかかってたやつが動き出す。


 見えたのはさっきまでは月の光で見にくかった赤髪。


「ってシルトか......どうした1人か?」


「ん?アルロか......少し緊張してな。」


「はぁ.....そういえばお前って何か宗教的な村とかで育った?」


「え....?別にそう言う訳じゃ無いけど....」


(少し困惑しているような声.....とっとと聞いた方が良いな。)


「お前......俺のこと差別してたりする?」



 

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