五月二十日 彼女に会いにいく
五月二十日
「学校とは真逆なのに悪いな」
「いいよ」
光くんは最近学校に行く前、彼女に会いに行くため踏切に向かう。
もしかしたら怜ちゃんに会えるかもって思って私もついていく。
ちょっと前まで、怜ちゃんが消えちゃって、抜け殻みたいになったけどやっと少し吹っ切れたみたい。
「なぁ聞いてくれるか?」
踏切までの中、歩きながら話を始める。
あの出来事から何日か経った今なら彼女の話を話してくれた。
光くん曰く曖昧な彼女の話を面白おかしく、伝えてくれた。
「怜ちゃん、会ってみたかったな」
「怜も会いたかったと思うよ」
話を聞くだけでも怜ちゃんがすごい愉快な女の子だってことが伝わってきた。あの時、もっとお話しすればよかったな。
もっと早く教えてくれればいいのに。
「でもありがとう、教えてくれて」
そう話してるうちに、踏切についた。
事故が起きた現場だからか、この通学の時間でも人通りがほぼない。
踏切のそばには枯れそうな花が花瓶に挿されて供えられているだけだった。
「ここで死のうとした時、怜が急に話しかけてきたんだ」
「本当に……自殺とかダメだからね! あ、そうだ。光くん、これ」
カバンからとある手紙を取り出す
あるとき私は机の奥に小学校の頃好きだったカエルのキャラクターが描かれた手紙が入っていたことに気づいた。
私が小学校のとき流行った紙一枚で折って作る手紙。
その手紙には『青葉ちゃんと光へ 岩清水怜より』って書かれていた。
二人に宛てた手紙だから、光くんが吹っ切れた時に読もうと思ったんだ。
「なんだそれ……なにが書いてあるんだ?」
「机に入ってたの。今から読むね、えっと……」
青葉ちゃんへ、まず光が落ち込んでいたらごめんさい。それはあたしのせいだから謝ります。もし光があたしのことを引きずっていたら、きっと青葉ちゃんよりあたしのが好きだね。えへへ、あたしの勝ち。
「「え、なにこれ」」
私は光くんと声を合わせ一瞬見つめあう
焦った様子で手紙を見つめるとその後に(冗談)って書かれてた。
「ほんとにこれなんだ、あいつ性格悪いな」
ただ光くんはそんなの読む前に怜ちゃんの冗談だってわかってたみたい。
びっくりしながらとりあえず目で読み進めてみると、もっと話したかったってことや、光くんに関しての内容が書いてあった。
怜ちゃんはこの一ヶ月ずっと光くんのそばにいたから、アドバイスだって。怜ちゃんからのアドバイスでどれだけ光くんの中で怜ちゃんが大きな存在だったかっていうこともわかった。
「あ、こっからが比山くん宛てだ」
光へ この手紙を光が聞くなり見るなりしてるってことはやっぱりあたしはこの世にいないんだね。まぁもう五年前からいないんだけど。書き置きなんて映画みたいでしょ。
光が見せてくれたあの映画、面白かったよね。青葉ちゃんとも絶対見るんだよ。そうすればあたしのことを思い出してくれるでしょ。そうすればあたしはあなたの中で、青葉ちゃんの中で生きれるの。だから絶対見てあたしを思い出にして。そんでこれだけを言いたいから手紙を残しておいたんだだけど、あの映画の主人公みたいに後追い自殺とかは絶対にやめてよね!
主人公がいなくなったら物語は終わっちゃうんだよ。自覚してね。あたしの分も楽しく生きるんだよ。明日の文化祭が楽しみで眠れなかったから色々書いちゃった。あたしは楽しめるかな? そいじゃおやすみ、光。怜より
あ、そうだ! 青葉ちゃん、もし光をフってたらこれ光に内緒で捨ててね。よろしく。
「これで、手紙は終わりだよ。光くん」
そんな愛を感じる手紙を読み終わると光くんは踏切をずっと見つめて泣いていた。
「……こんな優しい青葉が彼女になってくれたのに.そんな選択肢あり得るかよ。バッドエンドはありえないんだろ……っ? それに怜、お前はいなくなったかもしれないけど俺と青葉の中でずっと生きてる」
涙まじりに、涙がこぼれないように上を向いて光くんは噛み締めていた。
「うん。そうだね」
「だから、俺はお前のいう通り楽しく、自分の人生の主人公になるよ。怜が上から見てても楽しめるような物語の主人公として俺は生きようと思う」
上を向いてそういう光くん、彼は必死に涙をこらえていた。
悲しく、寂しい気持ちはきっと光くんの方が大きいのに彼は前向きだ。
涙が出てくる。学校に行く前だって言うのに目が腫れちゃうよ
あぁ、怜ちゃんともっとお話しとかしてみたかったなぁ
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