頑張るんだよ

「ほら光こっちこっち! っつ!」


 こちらを見ながら俺にそう言っていたらまた人にぶつかった。あれこれデジャブ? とかなんとか思っていたがそんなことはなかった。


「あ、ごめんなさい! あたし見てなくて……っ!」

「い、いえこちらこそ急いで、あ、比山くん……っと」


 青葉が小麦粉の袋を持って俺の前に現れた。


 いざこざは解消されたんだがなーんか嫌な雰囲気だ。青葉の視線が右に左に動いているし怜は怜でなぜかテンションが落ちている。


「従姉妹の岩清水怜です」

「う、うん。熊野青葉、です」


「青葉ちゃんでいい?」

「うん、いいよ」


 少しだけ引きつった顔でお互い軽く話をする。

 青葉は俺の好きな人なわけだから、変に緊張するのも仕方ないか。


「あ、もう行かなきゃ、じゃあ比山くん私いくから」

「あ、持ってくぞ」


「いや、いいよ。楽しんで、それと、頑張るんだよ」


  青葉は俺に顔を近づけ耳打ちをすると、怜に気を使ってるのか青葉はすぐどこかへ行ってしまった。


 あと……頑張る? カプコンのことだろうけど何を頑張ればいいんだ。


 僕は君に想いを伝えるんだぞ。劇的にしろってことなのか?

 いや、でもカプコンは告白を受ける相手は何も知らないからそんなこともないのかな。わからん。


  このドギマギした気持ちというのは耳打ちをされたドキドキなのか、緊張のそれなのか、俺は噛み砕けないままでいた。

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