カプコンをやりたい理由
「はぁはぁ、お前な!」
昇降口で息を整えながら幽霊に説教を食らわせようとする。
「いやー君だけが気づくメッセージになると思ったんだけど」
「見られたら意味ないだろ! あいつからしたら立派な心霊現象だぞ!」
「心霊だから別に間違いじゃないけど、あっ! 準備やってるよ! 来て!」
「学校に心霊現象があることが間違いなんだよ……ってお前!」
そう言って昇降口で準備中の生徒会役員のもとへ彼女は行ってしまった。
彼女の移動範囲は俺に依存しているのに、なぜか俺が彼女に引っ張られるように追いかける。すると
「光くんじゃなーい! どうしたのー」
会長がこっちに走ってくる。 なんで俺にそんな構うのやら
「い、いや、なんか手伝うことあるかなーってカプコンあるみたいですし」
「お、カプコンやる気になったの?」
なってない。なってないのにやるって言ったから困ってるところ。
ただそんなことを言って聞くタイプの人じゃないから言わない
「……てか勝手に入れてそんなんありですか?」
「会長権限だもん」
歯を見せた笑顔で会長はVサインをつくる。
何もしなければ美人なのにやってることは暴君と変わらない気がする
「めちゃくちゃだ……てか、なんでカプコンやりたいんです?」
「今さらなによ」
会長は腕を組んで反論する。
「前荒戸に言われたと思いますけど絶対フラれたりして屍だらけになりますって、それとも成功する見込みがあって、それで恋人王国でも作ろうと?」
「あのね、そんな深い意味はないって」
チッチッチッと指を振り会長は続ける
「前言ったでしょ? うちの制服を着た男女がデートをするとこが見たいの」
「え、あれ、本気なんですか?」
にわかには信じがたい。そのためにわざわざ一から企画を練ったのか?
「だってカップルが見たいだけってこんな大きいことやるには理由が小さくないっすか?」
「小さいってなによ。別に物事をやる理由に大きいも小さいもないでしょう。何度も言ったけどあたしはうちの高校の生徒がデパートとかで制服デートしてるの見たいわけ」
自信満々に大きな胸を張って俺にそう言う会長に少し呆れてしまう
「え? デートってそんな安直な……」
「どこが安直よ。制服デートなんて青春の一ページにぴったりじゃない!」
会長は青春の思い出を刻むんじゃなくてその青春日記を盗み見る方が好きらしい。そう言ってる風に聞こえてまた呆れてくる。
「職権濫用だ……」
「いい方の職権濫用にするから問題なし」
いい方ってなんだ。荒戸、早く助けてくれ。
最近になって気づいたがこの会長は会話はできるが話が通じないかもしれない。
「ちょちょちょちょっと! 誰これこれ塗ったの! てか色違うし!」
そんな話をしていると別の生徒会役員が大きな声で何か言い始めた。
「あれ、どうかしたのかしら」
看板には赤羽学園と書かれている。多分文字は赤で塗るつもりだったんだろうけど、赤の字が青い。
「あーっ……なんか出たんじゃないですかね。おばけとか」
まぁ犯人はすぐわかった。その犯人はさっきまでどこかに行っていたがいつの間にか俺の後ろに戻ってきていた。
初めてでワクワクして自主的に手伝った幽霊が青く塗ってしまったんだ。
「やっちゃった」
ベロを出して誤魔化すようにそう笑う幽霊を、なんかもうペットくらいにしか思えなくなりつつある。
何をやらかしても怒る気にならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます