新歓準備 事務作業

 一日の授業が終わる。だがここで終わるわけではない。

 実際はここからが長い、新歓準備だ。


「じゃあこれ、よろしく」


 俺の担当は細かい事務作業。大道具とかそういうのだと少ない班でやるにはカプコンの打ち合わせとかで欠員になると困るかららしく、青葉が調整してくれた。


 事務作業ならまぁなんとかなるし家でもできるし問題ないらしい。


「頼むぜ光、俺は生徒会で忙しいから簡単な手伝いしかできないけどさ」


 ポンポンと俺の背中を叩いて荒戸はそう言う


「まぁこういう地味なのは慣れてるから、親近感湧くし」

「そういう自虐はいいって。頼むよ。生徒会にも呼ぶかもしんないしな」


「……てかお前は朝のあの子、大丈夫なのか?」


 どうなったのかはまだ聞いてなかった。結局謝れたのだろうか


「ま、まぁまたビンタはされたけど許してはくれたよ。ったく、偶然だし謝ってるのになー光もきをつけ……」


 荒戸の口が止まる。口が開いたまま俺の手元を見ている。


「ん? どうかしたのk……っ!?」



 も っ と 色 々 見 た い



 そう俺の事務整理のプリントに書かれていた。それを書いていたのはもちろんこの幽霊だ。


 まさかのダイイングメッセージを残しはじめた。いや死んでる最中に書いたわけじゃない、いや今が死んでる最中なのか? そんなことはどうでもいい、とりあえず今全身に流れる冷や汗を止めよう。


 こいつが俺以外に見えてない状態で俺のペンを握って資料にそう書いているところを見られたということは荒戸からしたら完全に心霊現象を目撃されているということになる。


「うわあああああ!」


 急いで俺はペンを奪い取る。


「今、そのペン勝手に動いて……」

「いや! 違うぞ、これはあの……マジック! そうマジックなんだよ!」


 いやそれはさすがに無理があるだろ。自分に総ツッコミながらも流れるように適当を吹きまくる。


「睡眠学習用のシャーペン。うん高かっただけあっていいなーこれは! あれ? もうバッテリー切れちゃったかな! あーもう動かねえわ」


 シャーペンを机に置き、幽霊にや・め・ろ! っとアイコンタクトをする


「……すげえなそれ!」


 馬鹿でよかった


「いやぁすごい便利な品物だ。通販のジョニーがマイケルに勧められてるだけあったよ。もうアメリカでは定番らしいぜ?」


「いいなー俺も欲しいわーどっかに売ってねーの?」

「いやー超少数しか日本じゃまだ売ってないんだよー」


 知っててやってんのかただのアホなのかしょうもなく食いついてくる荒戸、わからんけどこんなくだらない話は早く切り上げてこの駄々っ子をどうにかしなければ


 ぐいぐいと袖口を引っ張られる感覚を覚え机の方を見てると



 はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく



 もう怪奇現象だ。やめろという目配せが見えなかったのかと呆れていると荒戸の顔が真っ青になっている。


「おい……これなんだよ なんか怖くね? 怪現象じゃねえかこれ……」


 皆まで言わずとも俺も怖い


「てかバッテリー切れてたのにそのペンまた動いてたぞ……」

「うわぁ!? 本当になんだそれはここには幽霊がいるのかな? あ! そうだ俺は会長に呼び出されてたんだ! じゃあな荒戸!」


 めちゃくちゃな理屈を振りまいて呆然とする荒戸を前にすぐ校庭へ駆け出した。


  逃げるように一目散に駆けていく。

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