体感する幼馴染
「しっかり休まなきゃ……あっ! そういえば先生に呼ばれてるんだった!」
「あ、本当に!? いってらっしゃい」
肩をぐるっと一回転させて可動域を確認すると、バンっと気づいたように立ち上がる青葉に陸奥は冷静にそう促す。
「いってきます! ごめんね」
なぜかこちらにまで謝る青葉にびっくりして目をそらす
「いいよ。早く行ってこいよ」
「うん!」
そう言いながら彼女は走り去った。
「ふぅ。そんで青葉がいなくなったから聞くけどさ。カプコンに出るって本当?」
「え!? あ、いや……」
いきなりどぎついこと言われて俺はビビり散らかす。かっこわるいが動揺で手が震えてしまった。
その反応は口にしてなくても「Yes」としか言ってるようなものだった
「え? 本当なの? うわ、まじか。光あんたやるね!」
「いや、違う! 俺がじゃなくて、会長が勝手に!」
「マジでチャレンジャーだね。見くびってた。光がそれを受け入れるとは」
顎に手を当てて首を少し振ると彼女のポニーテールはぶるんと揺れた。
勝手に話を進めるな。マジでどうしたらいいかわからないのに。
正直勢い任せすぎてどういう気持ちで当日を待てばいいかわからない。
ただ陸奥はそんなこと知らないと言った雰囲気でまたにししと笑う。
「いやまじで、なんとかして会長に……」
「まぁどっち主体でもいいけどさ。報われるといいね。あんだけ青葉のこと見てんだもん。青葉は気付いてないけど」
ポンポンとこちらの肩を叩く。
「いや一回バレたんだけどな」
「あれはノーカンだって、セクハラ受けてると思ってたんだからさ」
それもこれも会長が原因。トラブルメーカーのそばにいるとそいつまでトラブルメーカーになるのかと俺は少し荒戸を恨み心の中で荒戸を平手打ちした。きっと「なんで!?」っていうだろう。
お前が悪いんだぞ
「はぁ、俺はどうしたらいいんだ」
「ま、あたしは応援してるからさ、カプコン頑張ってね」
こちらの肩に手を置き、耳元でそう囁いた。ウィスパーボイスというのか、そういう妖艶な声にぞわりと鳥肌が立つ。
制汗剤のいい匂い、高く優しい甘い声、くしゃっとした笑顔、肩においた手の感触
味以外の部分で女子を体感させられ芯から震えそうになる
「にひひ、ときめいた? そいじゃあたしもちょっと出てくるよ」
そう言ってすぐさま立ち上がって歩いていった。
幼なじみとは思えない。恐ろしい魔性の女だ。魔女というのかなんというのか、幼なじみでないやつだったら勘違いされても仕方がない。
陸奥もとても可愛い。ただそれでもなお目の前の相手が青葉だったらと思ってしまうほど、青葉のことが好きだった。
「光の友達……すごいね」
「だろ?」
謎の自慢。そんなことをしている間に昼休みも終わりを告げた。
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