光と青葉のランチタイム
昨日一日勝手にあちこち見たからか午前は割とあいつは静かにしていた。
いることを忘れてるくらいにあいつは静かだった。このまま一日のんびりといつも通り終わってくれればいいのだが、新歓準備が放課後にある手前難しいだろうということはわかっていた。
「なんかさ、光って地味じゃない?」
昼休み弁当を食べようとするとそう俺の机の前からひょっこりと顔を出し指摘してくる。あざといな
よく考えたら、青葉に負けず劣らずな美形なこの子と基本的に一緒にいる。
なのになぜかそこまでドキドキしないんだよなぁ。
やっぱり青葉一筋だと心で強く思わされる。
「いきなりなんだ、話しかけるなって言っただろ」
「いいじゃん、周り誰もいないし」
「……別に、俺は地味でいいんだよ、メインはあいつだから」
そうやって教室のドアから拐われる荒戸を指差す。
誰しもが華々しく高校生活を飾れるわけじゃないんだ。光があれば影もある。モブモブらしく地味ーでいいんだよ。それはそれで楽しいし。
メインがあいつなら俺は付け合わせのほうれん草くらいでいい
「またそうやって……」?
「光、昼食べない?」
すると幽霊ごしに二人、青葉と陸奥が弁当片手にやってきた。
「え? あ、あぁ、でもなんで」
「比山くん昨日からちょっと変だから、心配で」
そんな心配をしてくれるなんて……幽霊も悪くないと正直初めて思えた。
何かを肯定して、ケアしてくれる感じが本当に好きだ。
「はぁ中学時代のよしみくらいだよ。こんな優しさをかけてくれるのは」
俺はしみじみする。優しさがしみるよ。俺の変化に気付いてくれるなんて?
「そういえばさぁ、お好み焼きだっけうちはさ」
班分けの話だ。俺たちの班はお好み焼きの出店を出す。
「うん、準備始まるねー。私達初めてだから上手くできるか不安だよ」
「不安も何も、いいんだよあたし達は看板作ってお好み焼きのレシピ考えて焼くだけなんだから」
「でも失敗しないかなー」
「失敗することばっか考えたら、光みたいにネガティブになるよ」
にししと笑ってこちらを見る陸奥。
バカにしてるんだろうけどもう慣れてしまった
「なっ、俺はネガティブじゃないぞ。しっかり物事を考えてるだけだ」
「でも結局マイナスに考えてるでしょ?」
「いーや、今回は成功するね。だってまずいお好み焼きなんて考えられないしな。ほらポジティブ」
青葉が作らないのは残念だが、それでも美味く作れるだろ、お好み焼きなんてたこ焼きとかに比べたらわりかし簡単なメニューだ。
「まぁたしかに、でも光はどうせ生徒会に引っ張られるんでしょ?」
「荒戸も引っ張り出されなきゃ準備手伝えるって」
「大変だね。荒戸くんも」
学生っぽい、弁当を食べながらの何も意味がないような会話。
幽霊に日常を掠め取られたかと思ったがそんなことはなかった。
少し嬉しくなって心でガッツポーズをとってそう実感する。
「というか最近肩が凝るんだよね。私緊張で肩張ってるのかな」
「緊張しいだからね、青葉。普段からそんなんじゃ疲れちゃうよ」
「そうだよ、疲れてるんだ」
二つの意味でな。青葉の肩を触ってるその幽霊に憑かれてる。
そして緊張で疲れてる。
ちなみにその幽霊は青葉の肩を触りニヤニヤしながらこちらに向かって笑いかけてる。小声で「この子だよね?」とまたつぶやきながら。
子供のようでもう呆れてくる
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