翌朝、追求
ジリリリリリ。そう季節感皆無でがなり立てる目覚ましを俺は無意識のうちに止めるくらいに深く眠れた
「すぅーっ起きろおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
そうやって彼女が大声を出すまでは?
「ううわああああああ! あ、あ、あ、あ、え、あ、ええええっ!?」
「おはよう。よく寝れたかね?」
大きな声で叩き起こされた。その大声と同時にドンガラガッシャン! っとなにか大きなものが転げ落ちた音も聞こえてきた。
「あ。あのなぁ! もっと穏やかに声をかけらんないのか!?」
「もう! 急に寝ちゃうからさーびっくりだよ」
ふくれっ面で俺にそう言う。俺の言うことは完全に右から左みたいだ。
だから何も言わない代わりにその幽霊の軽く説教じみた幽霊のその一言を俺は寝ぼけ眼で軽くいなす。
起きるまでずっとここにいたのかもしれないと考えるとやっぱり俺って幽霊に取り憑かれているのか?
そんなことをずっと考えていた。
俺は制服とかの着替えを終えるまで彼女に部屋の外で待機してもらい下に降りる。一段一段階段を下りていくと目の前にはすごい剣幕で頬に絆創膏をした姉の明が立っていた。なんとなく怒ってる理由はわかる。
「やっときたか」
「え? いや、なんでしょうか。姉弟間でそんな決闘のようなセリフは」
「昨日から! ずっとあなたの部屋は! うるさい! 今日だってなに!?」
そう言いながら何度もその細い指先をこちらに突きつけ怒り散らかした
「あ、いやぁあれはその……」
この追求をどうかわしたものか、俺は寝起きの鈍い頭を一生懸命回す。
「あんたの絶叫ならまだわかるわ。昨日だってうるさかったし。でも今朝は女の人の悲鳴みたいな雄叫びみたいな。なにあれ!? あっ! あんたまさか!」
(あいつの声聞こえんのかよ……)
そう思っていると勝手に喋りだして勝手に誤解して理解を進めようとした姉に幾ら何でも俺は待ったをかける。
「いやちょっと待てって昨日はその……あれだ! もうすぐ夏だし! 一人で春のホラー大会してたんだよ。いやーあれは怖かった。なにせ女性が悲鳴みたいな雄叫びみたいな絶叫をしたんだからなぁ」
「まだ季節は春真っ盛りなんだけどあんたそれ本当に言ってるの? だいたいねぇ……」
「あぁもうわかったよ! DVDの管理には気をつけるから……明は早く大学行けばいいだろ」
「え!? あ、もうこんな時間! えっと、言ってきまーす!」
そう言いながらなにも持たずに玄関から出て行った。姉の明はそそっかしいけど姉で優秀でそれなりに優しくて俺に似ず美人で姉で俺の扱いがひどいこと以外には非の打ち所が
「あっとっと……っなに?」
戻ってきた明と目が合う。いや別になにも……
「あえて置いておいただけだから!」
非の打ち所があったかも、いやこれも天然という要素にカウントできるか。
あぁそんな色々なものを兼ね備えた属性のデパートだ。
カバンも持たずに大学に行こうとしたらしい。まぁもう少し天然で電車に乗ってから気づいた方が可愛げがあると思うのだが
「いやー賑やかな人だねー昨日壁どんどんしてたお姉さん?」
「まぁそんなとこだよ。俺に似てないだろ?」
「うん。全く似てないよ。君知ってた?」
「あほ、似てないことなんて知ってるに決まってんだろそんなん俺が一番」
そうだ。きっと俺の持つ予定だった属性を吸われたんだ。
そんな話をしてリビングで朝飯を食べる。親にもこの幽霊の朝の雄叫びについて聞かれたがとりあえず明の絶叫ってことにしておいた。
「そいじゃ、行ってくるからー!」
「はーい気をつけてね!」
母親がそう返すとなぜか幽霊まで
「それなら。あたしも行ってき……」
「ちょっとまて」
手のひらを彼女に見せ制止する
「なに? 早く出ないと遅刻するよ?」
「え〜いいじゃん! あたしほとんど高校行けなかったらさぁ。行きたいなー高校! ハイスクール!」
手をぷらぷらとさせて甘えてもダメだ。幽霊なんて人外連れて行ったら何をしでかすかわからん。嫌な予感しかしないんだ。
「ダメだ! なんか一悶着起きそうだし……」
「光、何喋ってんのー? 独り言もそのへんにしないと遅刻するわよー」
キッチンから母親の声がそう聞こえる。
「は〜い。わかったな。絶対に家から出るなよ。話は帰ってきてからだから」
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