やっぱ生きていたい

@A-nennerube

第1話 生きる屍

「やっぱり学校もいかずにするゲームは最高だな」

俺は、いつも通り自堕落にゲームをしていた。

俺には夢もないし、生きがいもない。だから現実から逃げるためにゲームをする。親にはいつも怒られ、周りの人には軽蔑された。

でも、しかたないだろ。何もしたくないし、熱くなれないんだ。

「なんで生きてるんだろうな」

自嘲気味に出てきた言葉は、実に陳腐なものだった。ゲームのコントローラーを床に置き、ぼーっとした。

「実に生産性がなく無意味なやつね」

女の人のきれいな声が聞こえた。この家には、俺一人のはずだ。ゲームも一時停止している。周りを見ても誰もいない。

「誰だ。どこにいる」

当然の疑問を投げかけた。

「ここよ」

すると、何もない空中から白髪で青い目をした整った顔立ちをした少女が現れた。俺はすっかり驚いて腰を抜かしてしまった。こういう、シチュエーションは男なら誰でも憧れたことがあるだろう。だが、実際当事者になってみると浮かれてる暇はないみたいだ。開いた口が塞がらない俺を見ながら少女は言った。

「マヌケな顔ね。死ぬ前の顔がそれでいいの?」

死ぬ?どういうことだ。なぜ俺が死ぬ話になる。この少女は何なんだ。

「おれは  しぬのか?」

「そうね。残念ながら」

どこも残念そうな雰囲気ではないように見える顔で少女は言った。

「なぜ俺は死ぬんだ。病気か?事故か?」

「私が殺すから他殺になるわね」

なんて女だ全く。そんなことをしれっというな、しれっと。

「なんでだ。君みたいな少女に殺されるようなことはしてないぞ。」

「当然の質問ね。最低限の説明くらいは、してあげるからよく聞きなさい」

少女の説明によると昨今人類は増えすぎ、環境破壊を続けたため天界という場所での会議で俺みたいな消費ばかりして何も生み出さないような人間を殺すことになったみたいだ。簡単に言えばコスト削減みたいなものだ。そして、少女に見えるこの子は人間を殺すために人間界に送られる死神みたいなものらしい。

「なるほどな」

当然だと思った。もちろん天界とかその辺の説明はまだ信じきれていない。だけど、こんな俺には生きる資格がないとは常々思っていた。他人からは必要とされず、親には見放され、自分自身すら呆れ返っていた。

それに、こうなることをまるで望んでいたみたいに殺されることに対して抵抗も驚きもない自分がいた。

「わかった。」

「ほんとにわかってるの?」

「俺が殺されることだけな」

「そう。それだけわかれば十分よ」

そういうと少女はしばらく俺を見ていた。

「なんだ?顔になにかついてるのか?」

「以外に思ったのよ」

「なにがだ?」

「あんたみたいなやつは、喚き散らして命乞いをする思っていたわ。」

「そうか。それは期待に添えなくて悪いな。」

「別に何も期待してないわよ。それにそのほうが楽でいいわ」

「そうか。なら良かった」

「へんなやつね。あんたみたいのは初めてね」

「そうかい」

「にしても悲しいやつね。死ぬときに恐怖を感じないなんて」

そう言うと少女はほんの少し暗い顔をした。

「じゃあさっさと終わらせるわね」

「ああ、できるだけ楽にやってくれ」

「そこだけは任せなさい。一瞬で終わるわ」

そういうと少女はどこから出したかわからない鎌を持ち上げた。

そして振り下ろした。その光景はとてもゆっくりと流れた。振り下ろされる鎌を見ながら俺は自分の短く無意味な人生に別れを告げた。

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