第15話 テストの結果は...

次の日も、中間テスト2日目となる、歴史と理科のテストが行われた。


無事、テストの全過程を終了して、安堵の表情を浮かべる者。世界の終わりを迎える者と

両極端な人が教室に溢れていた。隣の席の柚木を見れば、ああやっぱり世界が終わってる。

ここで、「大丈夫か?」なんて安易に声なんて掛けられないな。柚木は大丈夫じゃない。

ここは、そっとしておくのが優しさだなと思い、その日は何も言葉を交わさないで帰路に着いた。

Y放課後、柚木宅で、柚木は学校に居るとき同様に昏く沈んでいた。

俺は、何も言わずに、柚木にホットココアを作って持って行ってやる。


「あ、ありがとう、わたしダメかもしれないよ......」


「大丈夫。柚木は、よく頑張ったさ。もしだめだったとしてもEクラスから復帰するまで俺が面倒を見るから心配するな。」


「あ、ありがどうー」柚木は鼻水でぐじゅぐじゅになった鼻声で言うのだった。

「今夜は、柚木の好物を作ってやるから元気出せ。」


「わー、やったー!それなあら、エビフライとハンバーグとカレーライスがいいー!」


「お前は力士にでもなるつもりか!」

と素早く、却下されるのだった。

                  ***

その翌日、ホームルームで咲良先生が教室に入ってくるや、神妙な顔で「先日のテストの結果が出ました。これから発表します」と言い合格者発表を始めた。


青木あおき秀夫ひでおくんおめでとう。合格です」咲良先生は、名前と合否を告げて呼ばれた生徒はガッツポーズを取る。クラス一の秀才の黒縁眼鏡がトレードマークの青木くん。まあ、秀才だから当然と言っちゃあ当然だよね。

続いて、咲良先生は、生徒の名前と合否を告げていき、歓喜の声を上げる者。Eクラスいきが決定して泣き叫ぶ者と勝者と敗者に分かれていった。ここまできて痛感される。

この学校は、優等生と劣等生に分けられる学校だったのだ。そうして、下條が呼ばれ、涼風が呼ばれた。喜ばしいことに二人共合格していた。それからも生徒が呼ばれていきとうとう俺の番となった。「次、藤也瀬翔くん、おめでとう合格です」


良かった。下條も涼風も合格したからこれで皆して合格か!?

いや、最後に、柚木が残っていた。合格か、不合格か。どうか合格であってくれ!

「では、最後に、柚木唯依さん...」そこで咲良先生は言葉に詰まり、一呼吸置くと

こう続ける。「柚木さん、残念ですが、赤点、不合格です」

その瞬間、ガタンと、俺は大きな音を立てて椅子から立ち上がる。皆は驚いて俺に視線が集まる。

「先生、どうして!?」

「英語・原文・理科・歴史の4教科は赤点スレスレで乗り切ったけど、数学だけ

三八点で四十点の赤点ラインを超えられなかったことから柚木さんは、残念ながらEクラスへ降格となります」

「そんな...再テストや、補講などの何か救済措置は無いんですか?」

柚木は、あんなに必死に勉強していたのにたった二点足りないだけでEクラスへの降格となるのが納得がいかなかった。


「すみません、こればかりはどうにもならないんです.ごめんなさい...」咲良先生は、残念と言わんばかりに肩を落とす。そして、覇気の無い足取りで教室を後にするのだった。

俺は、「ごめん、ちょと急用を思い出した。ちょっと行ってくる!」俺は、席を立つ。

「このタイミングで!?」と柚木は驚いていたが、と俺は、職員室を目指して、教室を出る。


そして、俺は、職員室の戸を開け放つ、「失礼します。中間テストの結果について話に来ました」

「藤也くん、どうして...」咲良先生は困惑したようなそれでも、この事態を打開してくっるんじゃないか言うような期待しているような視線を送る。

「先生方、どうか聞いて下さいください、どうかBクラスの柚木唯依のEクラスへの降格を見直してください。」と俺は、表面上は落ち着き柚木と離れたくない一心でそう言い放ち頭を下げる。

柚木の名前が出たことで職員室がざわつく。緊張感が走るが、それでも俺は、懇願こんがんせずにはいられなかった。


咲良先生は、言葉を発さなかったが、その場にいた生活指導の教諭の塚本先生が口を開く。

「柚木くんが赤点を取ってしまったのか、柚木さんみたいな生徒が人材の墓場へ落ちるのは実に惜しいことだ。どうだろう?彼女は勉強こそできないが美術センスは折り紙付きだ。

特別な措置を取らせるのはっどうだろう?」

「何をおっしゃりたいですか?塚本先生?学校側の判断に茶々を入れるつもりですか?」

とAクラスの担任の秋山先生の邪魔が入る。この先生は、どうも堅実的でありながら自分が受け持つAクラス以外には関心が無いように思える。むしろ柚木のBクラス残留を邪魔しようともしているように感じる。と塚本先生はそんな秋山先生を無視して更にこう続ける。


「Bクラスは、才能の可能性を秘めた生徒たちを育てるクラスだろ?勉学だけでその生徒の能力を測るのは間違ってるとは思いませんか?」職員室内から「確かに...」などと声が聞こえてくる。

「それに柚木くんはもう既にイラストレーターとしてプロとして活動している。」

「だからなんだと言うんだ。勉学は勉学でしょう。」


「まあ、そう邪険にしないでほしい。そこで、柚木くんのBクラス残留の条件として、彼女のイラストレーターとしての活動で結果を出し続けて、我が校のP Rをしていくことで御校に貢献させるというのはどうだろうか」

「そ、そんなことを許したらテストを行う意味が無くなってくるではないですか!断じて許しませんぞ!」と秋山先生はムキになり頑なに柚木のBクラス残留を認めようとしない。

「良いんじゃないかい、その話。面白いじゃないか。」たまたま校長室から出てきていた校長が話にわって入る。

「ですが校長!良いのですかこんな異例の事態を容認してしまって!」

そもそも我が校のコンセプトは、勉学以外の才能も育むことだから学校理念に基づいてると言える。異論は無いね。」その一言でで、全ての流れが変わった。今まで、散々、渋っていた秋山先生が、「こ、校長がそう仰いますなら、仕方ないですな。今回だけは特別ですよ」と折れた。

「ありがとうございます!」

こうして、赤点は取りさえしたけど、塚本先生と校長の寛大なあ計らいで、柚木のBクラス残留を勝ち取って首の皮一枚で繋がったのだった。

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お隣のヒキニートの登校条件は放課後デートをすることでした 高月夢叶 @takatuki

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