第14話 息抜きのカラオケ
「やあ、ギリギリだったね、藤也。昨日は、柚木さんと一緒に根を詰めすぎたのかな?」
「まあ、そんなところだな。」適当にはぐらかすと下條が、「で?本当のところはどうしたのよ」
「まあ、なんて言うか柚木が時間ギリギリまで寝ていたのが原因だな」
「あっ、酷い!何で言うの藤也くん!」と柚木は、顔を真っ赤にしてポカポカ叩いてくる。
「相変わらずポンコツですね。柚木さんは」と下條はクスリと笑う。
暫くすると、柚木の席の前に立花は、やって来て「柚木さん、あなた、テストを舐めてます?」
と呆れ顔で嘲笑交じりに言ってくる。
「立花。そんなこと言わないでくれよ、コイツはコイツで必死なんだよ。」
「いえ、言わせて貰います。そうでもしないとこのろくでなしは気付いてくれないので!」
強い語尾で言ってくる。きっと普段の堕落した柚木の態度に思うところがあったんだろう。
「あなた、このままだと、本当にEクラスに音落ちますよ?あなたさえ居なければ藤也さんを独り占めできる。そうも思いました。だけど、それじゃあ、私が面白くないのです!」
「立花、お前って...本当にいい奴だな!」
「う、うるさいですよ、藤也さん!中途半端な結果をお残すことだけは許さないですからね」それだけ言うと立花は自分の席に戻っていった。
ホームルームを告げる予鈴が鳴り担任の咲良先生が入ってくる。
「皆さん、覚悟はできていますか?筆記用具の準備は出来ていますか?泣いても笑っても中間テストが始まりますよ。さあ、至極の限りを尽くしてください!」そう言い、咲良先生は教室を出て行った。そして、一限目のテストが始まるのだった。
***
一日目のテストが終わった。今日のテスト科目は、数学・英語・原文だった。一日目が終わっただけでまだ、2日目の歴史と理科がが残っている。明日に備えての午前終了だった。この3教科が一番の山だったことからひと段落と行ったところだった。柚木は、「どうだったのだろうと隣の席を見ると、既に真っ白に燃え尽きた後だった。
「大丈夫か?柚木」とテストの調子を尋ねると「大丈夫に見える?」と覇気のない声で
言ってくるもんだから俺は、、「愚問だったな...」その一言で全てを察した。
「でも、まだ全ての教科が終わってないからどうかわからないぞ!元気出せよ」
「そうだ、これから気晴らしに皆でカラオケにでも行かないか?勉強ならその後でみっちりやるからさ!」
「いいね!カラオケ早速、皆を誘って行こうよ!」柚木はカラオケと聞くとぱぁっと明るさを取り戻してすっかり元気になってしまった。
「えっ、藤也、これからカラオケ行くのか?!僕も付き合うよ!」
「マジ!カラオケ行きたい!勉強は夜にするからおk!今は遊びたい気分なんだよねー」
と颯太と下條も乗り気で誘いに乗ってきてくれた。
「えっ!?藤也さん、これからカラオケに行かれるんですか?それも柚木さんも一緒に。ただでさえ危ない状況なのに
よく、遊んでいられますね。余程の余裕があるんですね。」
「えっ、気晴らしも大事だと思ってさ。立花も一緒にどうだ?」
わたしは、そんな余裕はないので帰って勉強します」
立花は、堅実的に断り、自宅勉強を選択する。何だか、俺たちがしようとしていることって
すごい背徳感があって俺たちは本当にこんなことをしていていいのか?!という気になってくる。
「気にすることはないよ藤也。真面目っ子は放っておいて、私たちだけでいこー!」
と下條が、背中を押してくれて俺たちは駅前のカラオケ店へと向かうのだった。
カラオケでは、各々が、テストから解放され、ここ最近の日々のストレスをを発散していった。唄って唄って唄って、熱唱して、曲の盛り上がり、ビブラートで嫌なことを吹き飛ばして、シャウトで、不安を払拭した。柚木も、マイクを手に取り、好きな曲を歌ってストレスを発散させていた。
「ねえ、藤也くんあれ、歌って。笑顔を持ってきてくれるやつ」
「ああ、バン○のラ○・メイカーか。柚木この曲好きだな」
昔流行ったロックバンドの名曲で今でも根強い人気を誇る毎曲だ。柚木宅で音楽プレイヤーで聴いていたところ柚木から、「何聴いてるの?」と尋ねられて、柚木にも片耳イヤホンで聴かせたところ気に入ったのだった。
「でも、メジャーデビューしてからも世間に知られる曲がごく一部なのが残念なんだよな。」
どれもいい曲なのに勿体無い限りだ。
「でも、わたし崖っぷちなのにカラオケなんてしていていいのかな?立花さんみたいに家で勉強していた方が良かったんじゃ...」
「いや、気晴らしも大事だろ。息抜きしないとそれこそパンクしてしまうぞ。ここ最近、お前、根詰め過ぎてたろ?」
「そ、それはそうだけど、でも...」
「何、心配しなくても、家に帰ったら今夜はみっちり勉強三昧だから覚悟しておけよ」
とわざと柚木を脅かすようなことを言うと、柚木は、「えー!嫌だー!」と柚木の声がカラオケルームに反響するのだった。
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