第7話 デートの予定

四月も終わりに近付き、そろそろ学生や社会人が待ちに待ったゴールデンウィークが近づいてくる。


学校での昼休み、爽汰から「ゴールデンウィークなんだし、柚木さんを誘って遊びに行ってきたら?」などと提案される。「そう言えば、柚木とは一緒に学校行くだけで休日に一緒に遊びに行くなんてことはしてなかったな」


「一緒にデートとか行きたいと思わないの?」

「そうだな、特にそんなことは考えてこなかったな」

「そうなんだ。藤也からデートに誘って上げれば柚木さんも喜ぶと思うよ」

「そういうもんかなー。正直、わからん」


塚本先生に頼まれた当初の目的は既に達成している。これ以上柚木と仲良くなってどうしようと言うんだ?友達以上の関係?ましてや恋人になりたいわけじゃないし、このままでいい気ももする。

(帰ったら柚木に、それとなく訊いてみるか...)


俺は、いったん自宅に帰り、支度して柚木宅を訪する。


「なあ、柚木、GWの休みにどこに行きたいか?」

夕食を食べた後に、リビングでコーヒーを飲みながら、柚木にそう、話題を振る。

せっかくの長期連休だ。爽汰に言われた通り柚木にそれとなく何処へ行きたいか訊いてみた。


「うーん。とくには考えていなかったなー。ゲームしてたまに、マンガを描こうかなと思っていたくらいかな」

「って、いつも通りの日常じゃん!例えば、俺と柚木が一緒に遊びに行くとかさ。というか一緒に遊びに行かないか?映画、とかさ...」

「いいけど別に藤也くんと一緒にデートに行きたいわけじゃないんだからねっ!」

「出たよ、ツンデレ...」

「つ、ツンデレ言うなー!」と柚木は、羞恥で顔をリンゴのように赤く染めてポカポカと叩いてくる。


「いてて」

本当は、全然痛くないけど反射的に言う。

「そうよ!マンガの取材を兼ねてのことなんだからね。勘違いしないでよね!」


「それはそうとどこか行きたいところはあるかはあるか?」


「えっ、どうしても一緒に行って欲しい。友達が居ないから遊びに付き合って欲しいと言うならなら一緒にに行ってもいいけど!」


「えっ?なんか言い回しが酷くない?そこは素直にデートに行きたいって言ってくれないかな」


「映画だけど何観るの?観たいのある?」


「そうだなーアクション映画かな。ちょうど今、洋画でアドベンチャーズが公開してるし」

あれは、確か、超人的能力を持ったヒーロー達が、集結して世界の危機に立ち向かうアクション映画だ。


実は、アクション映画を劇場で観ると映画の音がうるさくて好きじゃない。本当は、異世界ファンタジーのアニメ映画が観たいけど、柚木はきっと興味無いよな。


「柚木は、何が観たいんだ?」


「わたしはアニメ...ホラー映画が観たいな」

(本当はアニメ映画が観たいと思ってるけど、高校生にもなってアニメ映画が観たいとか子供っぽいと思われちゃう!ここは、大人のチョイスを選ばないと!)


「じゃあ、何が公開しているか調べてみるか」とノートPCを立ち上げて映画館の上映スケジュールを観ていく。


「何があるかなーああっ、これは!」と柚木は、何かお目当ての映画を見つけて声を上げる。


「やったー!怠惰な彼女のしつけ方が公開してるー」


「えっ?ホラー映画じゃなくていいのか?好きなんだろ?ほら、『呪念』とか公開しているぞ」


「あっ、いや...藤也くんが観たいかなと思ってさ」

(ホラー映画なんて、ホントは怖くて観れないし!どうにかしてホラーから流れを変えないと!)


「えっ?別に観たくないけど、これが観たいのか柚木?」


「え?こんなの観るの?正気って意味?わたしは藤也くんに合わせて上げてる!。あーでも、今公開している映画がどれもつまらなそうだなー。唯一観てもいいのがこのアニメ映画かな」


「そ、そうか?どれも面白そうなラインナップだけど、柚木って以外と辛口なんだな」


「えーと、それは......」

(もう!ホントに空気読んで!)


「まあ、、いいけど。」


ていうか絶対、本命はこのアニメ映画だろ。素直にこれが観たいっていえばいいのに面倒くさい奴。


「なあ、これ、完結編みたいだけどいきなりこんなの観ても大丈夫なのか?」


「へー。そうなんだー。あ、ネット配信で今、テレビシリーズが配信されているみたいだけど、映画の予習も兼ねて今、観てみない?」


「そうだな、いきなり完結編観ても内容が分からないしな。観ておくか」


「そうだね、藤也くんがどうしてもと言うなら一緒に観てあげてもいいけど-」


「えっ、俺は別に観なくても...」と言い掛けて、柚木が、不満げにジト目で睨んでくるから「じゃあ、観るか」と返答しておく。本当は、観たくてしょうが無いんだろ?


確かBDBOX持っていたよな。お前が隠れファンなのはもう、知っているんだよ。本当は布教したくてしょうがないんだろ?ホント素直じゃない奴。


こうして、アニメの上映会が始まったのだった。


ソファに二人して座り、リビングテーブルに置かれたノートPCでアニメを観ていく。


スートーリーは、よくあるボーイミーツガールのラブコメで、陰キャな主人公の佐藤さとう優太ゆうたははある日、クラスメイトの結城 ゆうき唯花 ゆいかの面倒見ることを担任の先生から頼まれる。そんな、いきなり任されても困りながらもそんな人見知りのコミュ障の唯花の学校での面倒をみることになる。


なんだか既視感のあるストーリーだなと思い見ているとあっ、俺と唯依みたいだなと腑に落ちる。

実は、唯花とはマンションの隣人同士で放課後は、自宅で二人でまったりと過ごすことになる。「わたし、実は家庭的なんだ学校でのお礼に好きな晩ご飯作ってあげるね」と晩飯をご馳走になる。慣れない一人暮らしに自炊を諦めていた優太はなんとも嬉しい施しに喜んで甘える。翌日、晩ご飯の残り物を弁当に詰めて貰い唯花から弁当までも作って貰い、食生活面で支えて貰う。そんな新婚夫婦みたいなイチャラブをしていく。いつしか二人は交際して高校生らしい健全なお付き合いをしていく。


寄り添うように身体が密着して、柚木の甘く、良い匂いが鼻腔をくすぐる。

なんだか、ドキドキしてきて、心臓が跳ねる。途中からアニメの内容なんて全然頭に入ってこなかった。


柚木はというとアニメに集中していてこっちのドキドキなんてお構いなしにリラックスしている。


なんだか負けた気分になり、ドキドキしてアニメを観て時間は過ぎていくのだった。


            ***

その日の夜、愛那まなに明日、柚木とデートに行くことを告げた。


「兄さん、柚木さんとデートに行くんだ!へ~え、遂に兄さんも童貞卒業かーおめでとう。楽しんで来てね」

愛那は、驚き、感慨深そうに言うと、それから一つ、アドバイスがあると言い、こう続ける。「いい、兄さん。明日のデートは待ち合わせ時間に絶対に遅れないようにね。あと、兄さんがデート代を全部出すんだよ今月の生活費を少し、削ってもいいから柚木さんにいい恰好を見せてあげて。あっ、お隣に行くだけだから遅れないか」


「わかった、ありがとう愛那」

そうするよ妹からのアドバイスを快く受け入れるのだった。

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