第8話 ゴールデンウィークデート



ゴールデンウィーク中の日曜日。俺たちのデートは俺がお隣の柚木の家に行くところから始まる。

デートというのは、待ち合わせ場所と時間を決めて、お互いが待ち合わせて、

「待った?」「いや、今来たとこ」などのデートのど定番トークをするところから始まるものだ。

だけど、互いがお隣さん同士の俺たちは、どちらかが相手の家を訪問することになるからそれはない。


今日は、俺が柚木の家に訪問する形を取っていた。インターホンを鳴らすも反応が無く、

悪いとは思っているけど仕方なく無断で部屋の中へと上がる。これが面識のあるお隣さんじゃなかったら確実に事案だろう。そんなことを思いながら柚木の私室を訪れ、中に入ると柚木はまだ、パジャマ姿で携帯ゲームに熱中していた。柚木は俺に気付くと、「なに勝手に乙女の部屋に入ってるの!」


「迎え来ただけだろ?今日が何の日か分かるだろ?ほら、ゲームしてないで。ほら、早く着替えて出掛けるぞ!」


「待って!このクエストが終わってからー!」

柚木は大人気の狩猟ハンティングアクションゲームをしていた。まったくしょうがない奴だ。


「ちょっと待っててね今、 ティガレウス を狩っちゃうから」


「いや、急げよ」

「前脚と尻尾を切断してさっさと狩っちゃうから!」

「今度、俺も手伝ってやるから、早くゲームしまえ」


「えーいいよー。だって、藤也くん下手じゃん!飛龍来てるのに薬草採取しててやられるし、正直、足手まとい。一人で狩った方がマシだよ」


「わかった。お前がそんな態度なら、もう討伐クエスト手伝ってやらないからな!」


「いいよー別にーオンライン集会所で仲間をつのるから」

カチカチカチ...柚木は俺に目もくれずにゲームをプレイしながら話す。

なんだとー!」

こんな待ち合わせがあってたまるか!俺が理想とする待ち合わせシチュエーションは、

『俺が先に到着。彼女が少し遅れて来て、『待った?』「いや、今来たとこだよ」と

本当は、長時間待ってたけど、それをなんとも苦に思わない素振りで言ってのけることこそ至高!


「はい、クエスト終了ー!ねえ、本当に行くの?藤也くんも一緒にゲームしない?」

「人混みの中に行くのイヤだよーどうせ配信するんだからー」と柚木はダダを言ってくる。

だけど、悲しいかな。これが、現実だ。元引きこもりの彼女を外に連れ出すのは容易なことじゃない。


「ゴチャゴチャ言ってないで早く行くぞー上映時間に遅れるぞ」

「仕方ない、女の子とお出掛けしたことのない童貞くんに付き合ってあげるか。ほら着替えるから出てってよ!」


こうして俺は、柚木の着替えを待って大型ショッピングモールに向けて出発した。


ショッピングモールIYONに着いた俺たちは、目当ての映画を観るために二階の映画館に向かう。

移動中、唯依は人混みに当てられたのか体調が悪そうにしていた。やっぱりいきなり外出はキツイか。

「ううっ、人がゴミのようで気持悪い...」

「せめて、人混みでとと言え」どこのム〇カだ。極度の人嫌い。これも元引きこもりの弊害か。

まあ、この人混みだ気分も悪くなるだろ俺も少し気分が悪い。

「上映時間までまだ時間があるけどカフェにでも入ってひと休みするか?」


「うん、そうする!わたし、タピオカミルクティーが飲みたい!」


「なんだ、元気じゃないか。まあいいや、俺も何か飲み物が飲みたいと思ってたところだし、どこか適当な店に入ろう」

タピオカ専門店TAPIONにてにて柚木はタピオカミルクティーを注文して、スクショを撮った後、ご満悦でタピる。

「うん、上手く撮れた。シンスタ映え間違いなし!」

「それ、面白いのか?」


正直、シンスタには興味がない。女子は皆好きだよなー。俺はツビッターだけで十分だ。

「どうだ、落ち着いたか?」大分、顔色が良くなってきた柚木を覗き込む。うん、大丈夫そうだな。


「うん、お陰でだいぶ楽になったよ」

俺はというと抹茶ラテタピオカを飲みながら一息付く。


「それは良かった。そろそろ映画に行くか?映画チケットを購入しないとマズいな、唯依、もう行くぞ」


「あっ、わたしトイレ」に行きたい...」と柚木はモジモジして言ってくる。


「わかった。もうすぐ映画が始まるから早く行って来いよ」と柚木を送り出してやる。



俺は、柚木がトイレから戻ってくるのを待っていたが、一向に戻ってくる気配がない。

これは可笑しいと思いはじめ、何かトラブルに巻き込まれたんじゃないかと心配になってくる。


居ても立ってもいられずに、女子トイレ前まで様子を見に行くと、そこに柚木は居た。

居たが、柚木の横には見知らぬ二人組の男が立っていた。すると話声が聞こえてくる。

「ねえ、いいでしょ、キミ。俺たちとお茶しようよ!今、一人だよね?」

「だから、困るんだけど。今、友達と来ているからー」執拗に絡んでくるチャラ男達から逃れようとするも終いには、「それじゃあ、友達も一緒にどう?大勢の方が面白いしさ。歓迎するよ!」

と断っても食い下がってくる。「そ、それは...」柚木は完全に困っている。俺は、すぐさま男と柚木の間に割って入る。「ごめん、柚木待った?さあ、行くぞ」と柚木の手を引いて行こうとする。


「おい、誰だお前は?今、その子と話してるんだけど邪魔しないでくれるか?」


だけど、チャラ男達は俺たちを見逃してくれなかった。しまったここは、どう切り抜けるべきか!?


「いや、俺は、コイツの彼氏だけど。それがなにか?」

「彼氏?お前なんかがか?」嘘くさいな」と疑ってかかる。クソ―どうすればいい?と頭を巡らせる。


「ハッタリで誤魔化すつもりだな。陰キャは引っ込んでろよ!とチャラ男達は威嚇してくる。


「さあ彼女、俺たちと行こうぜ!茶髪の男が柚木の手を取って行こうとしたその時、柚木が声を上げる。


「やめて!それ以上近づかないで!」もし近づいたら鳴らすからね。この変態!」と言い、柚木は、

バックの中から、防犯ブザーを取り出して紐に手を掛かる。「それ以上、付き纏うようなら鳴らすから!」


それを見たチャラ男達は、「わー待ってくれー、鳴らさないでくれ、俺たちは変態じゃない!」


そう言い残してチャラ男達は逃げて行ってしまった。なにこれ、デジャヴ?こんなやり取り前にも見た気がする。そうか、柚木との出会いがこんなだったっけ?


「逃げて行ったな。まあ、それが懸命だな」

もし、本当に柚木が防犯ブザーを鳴らしていたら警備員が駆けつけていたことだろう。そんなことになる前に身を引くのは当然だろうな。

「ざまぁ!こんなこともあろうかと持ってきておいてよかったよ」


「そうだな、事前準備のたまものだな」こうして俺たちは無事に映画を観に行くのだった。

***

俺たちは二階の映画館へとやってきて俺は、受付のお姉さんに「学生二枚」と言い映画チケットを二人分購入する。勿論、隣同士で。


「え?いいのわたしの分まで買って貰って」


「いいんだ。その代わり、学校は頑張って行けよ」

これで、学業へのやる気を出して貰えるのなら安いものだ。


「ありがとう!それじゃあ、ゴチになるよ!」


ポップコーンとジュースをペアセットで購入しようとすると柚木は「わたしコーラがいい!ポップコーンはうすしお味ね」とリクエストしてくる。


「これも奢り?」


「はいはい」


昨日愛那からデートのアドバイスを受けたいた通り、今日のデート代は全部、俺持ちだ。


学生には痛い出費だけど親からの生活費の中から幾らか持ってきたからイケるだろう。


俺たちは劇場へと入った。そして映画が始まる。


ストーリーはテレビシリーズからの続編でシリーズ完結編となる劇場版で、

二人の仲が急激に深まっていく中で、劇中で恋仲になった二人は、二人は同棲を始める。

だけど、そんな幸せ絶頂な中で二人の仲を引き裂く出来事が起こる。


唯花の母親の意向で唯花の転校の話が持ち上がり、二人が離ればなれになる危機が襲い掛かる。優太は胸を張って唯花の隣に立てる男を証明する為に奮闘する。母親の舞華さんから私が貴方を認めなければこの子隣に立つ資格はありません」と課題を出され、「これをクリアしなければ唯花は別れて貰います」と俺を試そうとしてくる。

優太は、この試練を乗り越えることが出来るのか?!


上映中、柚木はポップコーンを食べるのも忘れて映画に集中していた。俺は、そんな柚木を横目に映画を楽しむ。たまに、柚木と目が合い、気まずく微笑む。あっと言う間に映画は終わった。


「面白かったねー優太くんが舞華さんに認められて二人が見事結ばれて恋が報われてくれて本当に良かったー!」

「そうだな面白かったなー」映画館を出て隣設されているバーガーショップで昼食を食べ、映画の感想を話す。こういう風に映画後に感想を語り合えるのは嬉しい。話も弾んで、楽しい時間を過ごした。

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