第6話 恋心

〈柚木視点〉

藤也くんは武田くんを殴ったことで一週間の自宅での謹慎きんしん処分となってしまいその間わたしは、藤也くん不在の中、一人で学校へ登校することとなった。


朝、一人で起きるのは辛いけど、なんとかして目覚めて学校へ行く支度をする。

昨日は起こしに来てくれた藤也くんは今日は居なくベットから起き上がるのは骨が折れた。


学校へ登校するとわたしのことを心配して、吉田さんが慰めに来てくれて心は落ち着いたけど、それでも心細い感じは払拭できなかった。やっぱりわたしには藤也くんが必要なんだと痛感させられた。


ホームルームが始まり、咲良先生は、藤也くんの欠席理由を一身上の都合で一週間の休みとなります」とだけ告げて連絡事項を終えていた。

わたしは知っている。その理由は、わたしの為に武田くんを殴っての謹慎処分だって。


午前中の授業中、いつものノートの切れ端でのメッセージ交換も、藤也くんをからかうことも出来ないで過ごす授業はとても退屈なものだった。もう暇すぎて草も枯れ果ててしまうほどだった。


昼休みのこと。吉田さんが一緒にご飯食べようと言ってきてくれた。いつもなら藤也くんと三人で食べるところを今日は二人だけのお昼で何か物足りなくて少し淋しい。


今日の、昼食は購買のパンにした。いつもなら藤也くんのお手製のお弁当なんだけど、謹慎中の藤也くんに図々しくお弁当を作ってとは言えなかった。だから今週一週間は我慢する。


「藤也くんのお休みって、やっぱり昨日の事件があったから?」

千穗ちゃんが、お弁当の玉子焼きを食べながら訊いてくる。


それは、武田くんを殴ったことを言っているんだと直ぐに理解した。

「そうなんだ。わたしのせいで...」

「そんな気負わないで、意外と元気にしているかもしれないよ。放課後に様子を見に行ってみたら?」


「うん、そうする」

そうだよね、藤也くんのことだ、一週間の自宅謹慎を長期休暇ととって休みを満喫してそう

ってゆうかそれはわたしの場合か!藤也くんはそんな自堕落な考え方はしないよね。


「ありがとう、千穗ちゃん、放課後に藤也くんのところにお見舞いに行ってみるよ」


そう言い、わたしも昼食のパンを食べることに集中した。


そして、昼休みが終わり、つまらない授業を受けて、待ちに待った放課後となった。

颯爽と帰り支度を終えて教室を出ようとする。そこで千穗ちゃんから「藤也くんとところへ行くんだね。いってらっしゃい。健闘を祈るよ」とグットラック!とサムズアップされた。

                 ***

わたしが、心配して放課後に藤也くんの家を訪れると妹ちゃんが出迎えてくれた。


「あ、もしかしてお隣の柚木さんですか?いつも兄がお世話になっています。わたしは妹の

愛那まなです。はじめまして」と礼儀正しく言ってくる。可愛い妹ちゃんだなと思う。


「兄さんなら今呼んでくるからリビングでくつろいでいてください」と愛那ちゃんが中へ通してくれておもてなしをしてくれて丁寧に接してくれる。


「愛那ちゃん、はじめまして。お気遣いなく」これが藤也くんの妹ちゃんかー可愛いな~


「知っていますよ、兄さんが最近元気よく学校に行くのは柚木さんのお陰だってこと」


「いや、そんなことは...」

むしろ、わたしの方が藤也くんに救って貰ったのお陰で楽しく学校に行けていると言えた。


「わたしの方こそ藤也くんのお陰で学校に行けているからね感謝するのはこっちの方だよ」


「今日は、わざわざ兄さんの様子を見に来たの?ありがとうございます!」


「そうだよ、落ち込んでいないか心配で様子はどんなかな?元気にしてるかな」


「その心配は無いですよ、兄さんったら『一週間の休みだー!』って浮かれて部屋に篭もって小説を書いているんですよ」


「そうなんだ。藤也くんらしいね」

「そうなんだ。反省の色なんて全然無いんだから!」そう言い愛那ちゃんは飽きれて頬を膨らませる。


「はは、それはどうなのかな。とのかく元気そうで良かった気落ちしてたら慰めてあげようと思ったけど、その必要は無さそうだね」


「そうですね、あまり甘やかさないで。兄さん呼んできましょうか?」


「いや、いいよ。小説の邪魔をしたくないし」そう言って愛那ちゃんの申し出を居て断る。


「そっか、わかりました」しばらく、愛那ちゃんと談笑していると奥の部屋から藤也くんが出て来た。


「ふー、コーヒーコーヒーっと...ん?」ふと藤也くんと目が合い、わたしはにこやかな笑顔を返す。

「なんで柚木がうちに?!」と驚いた様子を見せる藤也くん。


「お邪魔してるよ。具合はどう?」


「いや、病人じゃないし。柚木こそ学校はどうだったんだ?ちゃんと一人で行けたか?」


「まあ、なんとかね」


今日一日、一苦労だったけど、なんともなしにそう言っておく。


「ちゃんと学校にいったならよし!偉いぞ」と藤也くんから頭を撫でられる。


「んんっ...」

わたしは、されるがまま頭を撫でられる。不思議と嫌な気はしない気持ちよくて目を細めるが、

藤也くんは、調子に乗って撫で回す「もー!子供扱いしないで!」とジト目で睨まれる。

ホントに失礼しちゃう!こういうところどうにかしてもらいたいよ!ホント心臓に悪い。


別に嫌というわけじゃないんだけどこういういうところは素直になれないのだった。

             ***

それから謹慎の一週間は過ぎ去り、久しぶりの登校日のこと校舎に入ると嫌な視線に当てられて影で、暴行事件を起こした不良と噂が流されていた。流石にこれは堪える。


「なんだか、居心地悪いな。武田を殴ったのは事実だけど、あれは、アイツが悪いし」


「大丈夫。わたしだけは味方だよ」と柚木はフォローしてくる。


「あ、きたきた!藤也くーん。この前は大変だったね、一週間の自宅謹慎だなんて。わたし、藤也くんの分の授業ノートとっておいたから後で見せてあげるねっ!」


「ああ、サンキュー」

吉田はタタタタっと小走りで行ってしまった。

「どうしたんだ?吉田の奴、妙に上機嫌だったぞ」


「さあ、知らない!」唯依はツンと一蹴する。

「えっ?なに?冷たい!」

まるで、吉田に焼きもちを焼いているみたいだ。もしかしてこれは、少し悪の方がモテるというあれか ?分からん。俺は、頭を悩ませるのだった。

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