第4話 付き合ってる?

柚木と一緒に2ーBの教室に入った俺は、ホームルーム前に教室で自分の席に着いたわたしは、女子生徒が話しかけられる。


「ねえ、柚木さんて藤也くんと仲いいの?朝に一緒に登校していたみたいだけど。どうなの?」

「別にそんな仲じゃないよ。ただ、家が近いから一緒に登校してるだけだよ」


見られてたんだ。参ったなーこれで通用してくれるといいんだけど。どうかな?



「そっかー、そうなんだー。でも、家が近いからって一緒に登校するかな?それって仲良しの証拠じゃないかな?」


「えっ?どうなのかな?」


ダメだった―!どうしよう!どうしたら誤解が解けるのー!?別に、藤也くんとはただの隣人の仲でただそれだけなのに。更生を手伝ってくれる仲だけど、それは言えなかった。



「いいなー、一緒に登校してくれる男の子がいて羨ましいなー」


「あっ、わたし吉田よしだ千穂ちほ。よろしくね、柚木さん」


「こちらこそ、よろしく」



「柚木さんの話、もっと聞かせてほしいなー」


吉田さんは目をキラキラさせて更に言葉を紡いでいく。こうなれば吉田さんが飽きるまで付き合うしかない!わたしが素っ気ない態度を取れば飽きて去ってくれるはずだ。




「ところで、柚木さんは、藤也くんと付き合ってるのかなー?」



えー!?まさか、そんなことを訊いてくるなんて...わたしは藤也くんとは。ー



「べ、別に付き合ってないよ!」

そんな付き合っているのかだって!?何を訊いてくるんだこの人は!そんな恋人だなんて。


「そうなんだーそれじゃあ、あたし狙っちゃおうかな~」

そう、冗談とも真剣とも取れることを言ってくる吉田さん。だって、藤也くんはー。


「だ、ダメだよ!」


あっ!しまった。言った傍から気付いた。こんな即、否定するなんて逆に怪しまれてたかな?


「ウッソー冗談だよ。ごめん、信じた?あまり、真剣に否定されるから脈ありかと思ったよ」



「なんだ~冗談か~驚かせないでよ」


って、なに安心してるのわたしは!別に藤也くんが取られないから安心しているとかそういうことじゃなくて、これは違うんだから!断じて藤也くんに好意を抱いているとかそういうことじゃない。



「あっもしかして藤也くんを取られてしまうんじゃないかと思った?取ったりしないから安心して」



「もー!別に、そんなことなにのにー!からかわないでよー」



「なんだ?何の話だ?」後ろから藤也くんがやってきて尋ねてくる。きっと自分の噂をされていると思ったのか少し、いぶかし気だ。



「ふ、藤也くん!?い、今の聞いてた?」


「いや、何も。何か言ってたのか?さては、俺の悪口だな。本人がいないとこで勘弁してくれよな」




「そっかー聞いてなっかんだ藤也くんのこと愚痴ってたから聞いてなくてよかったよ」



「そ、そうか...なら訊かないよというか、面と向かって愚痴ってたって言うか?」


「そうそう、気にしないで!今盛り上がっていたところなんだから」わたしは焦って言う。



「ああ、それなら気にしないけど」


「うん、そうして」藤也くんは納得したのか自分の席へと戻っていく。良かった誤魔化せた。


よかったー!聞かれてなくて。聞かれてたらどうしようかと思ったよ。



「いや、本当は聞こえていたんだけどな......」


そう、唯依に聞こえないように藤也は鼓動の高鳴りを感じて一人言るのだった。



午前中の授業中は暇でしょうがなかった。隣の席の柚木からノートの切れ端が畳まれて投げ込まれ開いてみると、『わたしが藤也くんから食生活の面倒を見られているのは皆には秘密だからね!」

と書いてあった。俺もノートの切れ端に『了解。柚木こそボロを出すなよ』と書いて隣の席へと

投げておいた。こんな女子とのやり取りもなんだか新鮮で楽しいと思った。そのまま教師にバレないように、『今晩のおかずは何がいい?』とか『明日はちゃんと起きろよ』とか人前では話せない秘密のやり取りをノートに書いてはちぎり、何度か交わしてその授業中は過ごした。授業内容なんてさっぱり入ってこなかった。


***



昼休みのこと。朝、仲良くなった吉田さんが柚木の机に近づいてきた。


「柚木さん、一緒にお昼を食べようよ!もしよかったら藤也くんも一緒にどうかな?」



「わたしはいいけど、藤也くんはどうする?柚木は俺に一緒に大丈夫か尋ねる。


「俺も大丈夫だぞ」


「それなら決まりだね!机を繋げて一緒に食べよう!よかった。賑やかになりそう」



「これで、吉田さんが藤也くんに余計なことをいわなければいいんだけど」



「はい、柚木」



「ん。ありがと、藤也くん」



柚木は、俺からからお弁当を受け取ると蓋を開けて中身を確認する。

「今日はなにかなー、あ!ハンバーグが入ってる」




「昨日の晩飯の残りを詰めただけだけどな。さて、俺も食べるか」



「あれ?」



「どうしたんだ?吉田さん」



「いや、どうして、柚木さんのお弁当と藤也くんのお弁当が一緒なのかなかなと思ってさ」




「ねえ、どうして?」


再び、詰め寄る吉田さん。何かスゴイ圧力を感じるここは誤魔化すか。



「いや、それは...なんと言うか」


「ねえ、なんで?柚木さん」



「そ、それは......」





「そもそも、なんで、藤也くんが柚木さんにお弁当を手渡すの?それって藤也くんから作ってもらってるってことだよね?もしかして二人はどうせー」



「わー!違うから!吉田さん、藤也くんとはそんな仲じゃなくてー!勘違いしないでよね」



「え?それじゃあ、二人はどうゆう関係なの?付き合ってもない。同棲もしてないのにお弁当は作ってもらうって、どんな仲?」



「そ、それは。ー」


「それはな、不登校の柚木の更生を俺に依頼されて、登校を促して外の世界へ連れ出したこと。


柚木の食生活の劣悪さに、食事の面倒をみてもらっていること。


マンガ家の夢を後押したこと友達となって学校生活を一緒に過ごすようにことになったこと。


「わかったわ、要するに柚木さんがダメ人間過ぎて藤也くんから面倒を見て貰っているということね」



「恥ずかしながらそ、そいうこと」




「でも、駄目人間って面と向かって言われるのってショックだなー。」


そうして、団欒とした和やかな時間は過ぎていき平和に休み時間が過ぎ去ると思われたけど、

休みを残り僅かにして、柚木の大切なものが崩れ去るその事件は起こった。

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