第1話 おすそ分け

昨日は、柚木との出会いは最悪なものになってしまったけど、なんとか機嫌を直してもらおうと柚木の分の弁当も作り、昨日に引き続き、お隣の二〇八号室を訪れる。引きこもりの一人暮らしで食事に飢えていることだろうと思い作ってきた。


二度目ということですんなりと、インターホンを押すもてっきり「は~いいまいきまーす」と返事が来るかと思ったけど、扉を開けた柚木が、「藤也さんまた来たんですか?学校には行かないよ。帰ってくれない」と冷たく言われる。

「え?!弁当作ってきたけど要らないのか?」せっかく、作ってきたんだから、受け取ってもらいたい。そう思い、差し出すも、「い、いらない!」そう突っぱねて拒絶する柚木。「そ、そうか。わかった」

と絶望にくれる藤也はトボトボと二〇八号室を後にする。


それからとゆうもの二〇八号室の柚木の部屋は固く閉ざされた。何度か、面会したくて訪れるも、インターホンを鳴らして、俺だと分かると、柚木は、面会謝絶してしまう。こうして、柚木に弁当を渡せない日々が続いたある日の夕食、愛那が「お隣さんとの関係はどう?」と聞訊いてきた。彼女は俺の双子の妹の一人の愛那まな

お兄ちゃん想いの純真無垢の天使のような妹だ。「それが、この前から堅く扉を閉ざしてしまったんだ。もう俺にはどうしたらいいのか...」

「なあ、教えてくれよ愛那ぁ~」

「まったく、兄さんさんはほんと駄目ね。女の子の部屋に無理矢理入ろうとするなんて、デリカシーがないよ」

「じゃあ、どうすればいいんだよ......」

俺には検討が付かない。妹よどうすればいいと思う?俺は、もう、さすがにお手上げだ。


「お隣さんを学校に登校させないといけないんでしょ!」

「そうなんだよ。これじゃあ、振り出しに戻ったようなもんだ。なんとかして開かずの間を開けないと。どうしたものかなー」

「兄さん兄さんお隣さんとの繋がりとかはないの?共通の話題とかさ」

「何か、」柚木さんがして欲しいことでも訊いてみたら?」


「柚木とはこの前、初めて会ったばかりだから共通の話題なんてなー」

アイツがして欲しいことか。今度、訊いてみるか。

「それじゃあ知ろうよ。柚木さんのSNSでも覗いてその人のことを知ることから始めてみたら?」

そういえば、塚本先生が柚木が動画配信やってるから見るようにっていってたっけな。

愛那の提案に食事を終わらせて、自室のノートPCで柚木の動画配信のアカウント結月ゆいについて色々と調べてみた。


ITUBEの方でいくつか動画をアップしているようで、気になったのをいくつか視聴してみた。

ゲーム実況やお絵描き配信といった自分の好きなことを動画にしていて、動画の中の柚木は、

スゴク活き活きとしていた。俺と話す時とは正反対で、これが柚木の素の姿なんだな。

続いてミキペディアで結月ゆいと検索してみるとイタリアフィレンツェで活躍する画家の記事で『一五歳の鬼才天才画家現る!?』という記事を見つけた。

(アイツ、画家だったのか。イタリアでそんなに高いキャリアを築きあげたのになんでわざわざ日本に来たんだ?)と謎が深まるばかりだった。


ツビッターでも、イラスト用アカウントを持っていて適当に過去ツビートを流していくとそこに、気になるツビートがあった。

ツビートにはイラストと一緒に、「あの日の約束。今でも覚えている。ねえ、君は覚えてる?」

という投稿とそこに添えられたイラストが、俺が始めてWEB小説を書いて、子供の頃に仲良くなった女の子から書いて貰ったイラストだった。

確かに俺は六年前にある女の子と約束を交わした。大人になったら一緒に本を出そうと。約束した。まさか、柚木がその約束の女の子なのか?俺は、このツビートに返信するべきか?!


でも、もし彼女が約束の彼女なら、このツビートは、俺からの返信を待っていることになるよな。でも、もし違ったとしたら?目も当てられない痛い奴になってしまう。そんなリスクを冒して行うべきことか?そう思ったがとここでスルーするわけにはいかなかった。だって気になるし!


俺は、結月ゆいのツイートに返信に、「お待たせ。あの頃の夢は俺も今でも覚えているぞ。正直、柚木が約束の女の子と知って驚いてる。」とツビッターに返信を打ち込むが、そのまま返信はしない。よく考えてみる。


「いや、可笑しいだろこの文章!まるで、前から相手の事を知っている幼なじみ同士のやり取りじゃね?」俺と柚木は、こんなに親しげに話す間柄じゃないし!どうゆう風に書くべきかな。悩むところだ。

「ここは無難に、『大事な話があるから今度、会って話したい』と返信しておいた。


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