第9話 あの頃があったからこその。

なんにも時間的束縛のなかった時代があった。

敢えて自分で、そう過ごした。

行きたいときに行きたいところへ行っていた。

たとえば植物園。

たとえば賀茂川の畔。

植物園では広場があって樹々の蔭から開けた空を見る。

また賀茂川の畔では、黄金色に輝く空に暗く浮かぶ樹々。

素敵だった。

見入っていた。

なんも。

人的な、社会的な、何も。

取っ払ったところにいた時代だった。

ひとり。

行きたいところへ行き、時間を浪費して。

たっぷり遣った。

寂しいと感じる概念もなかった。

今となればの話をすれば、「そんなんでいいのか?」。

そんなの。

大丈夫。

よかったんだよ。

あの時代があったからこそ、今がある。

そう云える。

素敵な風景のなかにいた。

あの時代。

思い出や、記憶の景色。

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嘘っこ小説(詩) ぽふ、 @a-piece-of-harmony

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