トリマー、こわい
六か月を過ぎたルビーは、もうお年頃(?)の女の子です。
というわけで、今度は初めてのトリミングに挑戦。
外出が苦手なルビーのために、公共の交通機関は使わず、なるべく短い外出時間で済むように家の近くのトリミングサロンを探してそこを予約しました。
まだ新しいそのサロンは、ペットショップも兼ねていて、とてもおしゃれできれいな内装。
トリミングサロン自体はペットショップの一画にあるのでそれほど広くないのですが、壁がすべてガラス張りになっていて、中の様子がよく見えます。そういう意味では安心してわんこを預けられます。
対応してくれたトリマーさんも、優しくて可愛い女性の方で、丁寧にトリミングの説明をしてくださいました。
まだ仔犬のルビーには、カットというよりは爪切りや肉球のお手入れなどをして欲しかったので、ケア中心の『シャンプーコース』をお願いしました。
お前、ワタシを捨てるのか、、、と言わんばかりのまんまるおめめでみつめてくるルビーをトリマーさんに預けると、お店の近くを散策して時間を潰し、一時間ほどで迎えに行きました。
するとそこには毛並みつやつやさらさらの見目麗しいヨークシャーテリアが一匹いるではありませんか!って、、、はい、親ばかです(笑
帰り際、仕上げに犬用のフレグランスをルビーのおしりのあたりにひと吹きかけてもらい、よい香りに包まれて機嫌よく帰路についた私たちでした。
仕上がりはいい感じだし、トリマーさんは優しいし、お店はきれいだし、大満足でまた一月後くらいに予約を、と思っていたのですが、しかしそのすぐ後で始まったのがコロナ禍です。
コロナが犬に感染するのかどうかわかりませんでしたが、不安だったためトリミングに行くのを控えておりました。
そして気が付くと、初回に行った時から一年ほどが経過。毎日ブラッシングはしていましたが、それでも毛が絡んでしまい、素人の手には負えない! 助けてトリマーさん!
あの優しいトリマーさんを思い出しながら、コロナが少し落ち着いてきたころを見計らってトリミングサロンに予約を入れました。
予約当日、ルビーを連れてサロンに行くと、対応に出てきたトリマーさんは、、、、前回とは違う方でした。
同じように若くて可愛い感じの女性でしたが、しかし、にこりともしません。
と、いうより、全力で不愛想です。
私は何も言っていないし、ルビーもバックの中でおとなしくしていて何も悪いことはしていません。
何なの、このトリマーさん。
なんで最初からこんなに不機嫌なの?
と、とにかく怖い。
わけがわからず、密かに怯えていると、
「一年間、他の店には行っていないんですか」
と冷たく聞かれました。
そこが引っかかっているのかと思いつつ、「はい」と答えると、
「状態がひどい場合はお受けできません」
「受けた場合も追加料金〇〇〇円いただきます」
と、まだルビーの状態を見ていない時点でいきなり否定的な言葉と料金の話。
確かに、一年もトリミングに行ってなかったのは飼い主としてダメだとは思うのですが、怠けていたわけじゃなくてコロナ禍という理由があったからです。
そもそもお客に対して、その態度はないんじゃない?
複雑な気持ちでいると、犬の状態を見ると言ってルビーを奥に連れて行きました。すぐにもどってくると怖い顔で、
「もつれや毛玉があるので、追加料金いただきますけどいいですか」
と、念押し。
一瞬、断って帰ろうかとも思ったのですが、理由はともかく一年間トリミングの連れて行かなかったことは事実。反省もあり、ルビーの負担も考え、そのトリマーさんにお願いすることにしました。
「時間かかりますよ」
と、やはり冷たく言い置いて、彼女は奥へと消えて行きました。
少し不安だったので、ガラス越しにルビーの様子を見ていると、監視されているとでも思ったのか、トリマーさんに睨まれました。
もう、本当に怖い。
まあ、それだけ仕事に真剣、ということなのかもしれませんが。
邪魔になってはいけないと思い、すごすごと店の外に出ました。
二時間ほど外で時間を潰しましたが、その間、色々考えてしまいました。
例えば、予約時にワクチンの予防接種の証明書を持参するように言われたけど、あの怖いトリマーさんは提示を求めなかったなあ、初回の優しいトリマーさんはちゃんと見てくれたし、トリミングの説明も丁寧だったのになあ、とか。
前回のトリマーさんはルビーを預けた時、『預り証』をくれたのに今回はくれなかったなあ、とか。
この差は何? と、なんだか嫌な気持ちになりながらサロンに戻ると、待っていたルビーはそれなりにきれいに仕上げられていました。
もつれた毛は切るという話だったので、どうなることかと思っていたのですが、仕上げを見て一安心でした。
お会計で追加料金もしっかり支払うと、その時になって、ようやくトリマーさん、初めて笑ってくれました。
その笑顔に少しだけ救われた気持ちになった飼い主なのでした……。
それから家族の意見もあって、トリミングサロンを変えようと家の近くを探したのですが、みつかりません。
結局、三回目も同じサロンに予約して行くことにしました。
トリマーさんは何人もいるはずなので、例の怖いトリマーさんに当らなければいいんだと、祈る思いで予約当日を迎えました。
ルビーを連れてサロンを訪れると、そこで対応してくれたトリマーさんは、、、はい、例の怖いトリマーさんでした。
しかし!
これが驚きなのですが、確かに同じトリマーさんなのに、すっごく愛想のいい素敵なトリマーさんに変身していたのです!
別人かと思ってしまうくらい、終始、にこにこしてよく喋ってくれます。
あんなにぶすっとしていたのに、この数か月で彼女に何があったんだろう?
よく見ると、前の時はばっちりメイクだったのに、今はナチュラルな感じです。
どういうこと? と、混乱しつつも、同時にほっとしました。
怖くなくて良かった。
とにかくそう思ったのです。
しかし、トリマーさん、その素敵な笑顔でさらりとこう言いました。
「まだ毛が絡まっているところがあるので、追加料金いただきます」
「今回は『まし』だったので、追加料金は〇〇〇円です」
ましって……。
はい、払います。
でももう怖いトリマーさんに変身しないでね。
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